下心

DSCF3619

これは7年ぐらい前の話です。

高校卒業後、就職して初めての一人暮らし。

実家から徒歩30分程度の所で、まったく土地勘がない場所じゃなかった。

一人暮らしを始めて3ヶ月ぐらいした時、会社から家への帰り道、毎日夕方6時頃いつも通る公園の横を歩いてると、何気にふと公園と道路の溝に目がいって見てみると赤いサイフが落ちてたのよ。

『ん?』っと思ってサイフを拾ってみると重い!

カード類が5~6枚入っていて、千円札が2枚ぐらいと、後は小銭がギッシリだった。

直感で女性のサイフって分かった。

一瞬ネコババしようと思ったけど、当時、俺には女友達がまったくいなかったので『これをキッカケに女友達が出来るかも!?』って思って近くの交番に届けた。

警察官から色々聞かれて、紛失届みたいな書類に記入したりしていたので、1時間ぐらいかかったかな。

警察「その書類はそちらで保管しててください。落とし主が現れた場合に必要な書類なので。では、落とし主が現れたらこちらから連絡しますので」

俺「はい」

『どんな人かなあ~』なんて想像しながら家路についた。

時計を見ると夜の9時。『風呂でも入って寝るか…』と思っていた時、

「ピンポーン・ピンポーン・ピンポーン」

『おいおい3回も押すなよ…』

こんな時間に誰だと思って玄関を開けると、そこには冬場なのに赤い超ミニスカでキャミソールの美人が!

俺「…どちら様で?」

女「…すいません、サイフを落とした者なんですけど…」

俺「あっ!はいはいはいはい♪」

おいおい…いきなりかよ!しかも美人!

女「あの…紛失届の書類を貰いに着ました」

俺「あっはいはい♪ちょっと待っててください!」

急いで紛失届書を取りに部屋に戻って玄関に行こうとしたら、真後ろに女が立ってた!

『え!? まさか…ヤレル?』

なんて思っていたら、女が顔をツゥーーーっと近づけてきて、

「やさしいんですね」

と言ってニヤァ~って笑った。

笑った口には歯が一本もなく不気味だった。

一瞬、不気味さと恐怖で意識を失いそうになった…。

俺「と…当然ですよ…」

女は顔を近づけたままニヤァ~っと笑っている。

震える声で、

俺「あの…もう夜も遅いですし…」

なおも女は顔を近づけて

女「親切な人っているんですねぇ(ニヤァ~)」

そう言って女は帰って行った…。

その日は怖くて実家に帰って寝た。

一人でいるのが怖かった。

それから3日後ぐらいにふと警察の人が言ってた言葉を思い出した。

「落とし主が現れたら連絡しますので」

そういえば警察から一度も連絡がなかった。

怖いけど気になったので会社の帰りに、サイフを届けた交番に行ってみた。

すると同じ警察官で俺の事を憶えていたらしく、

警察「まだ落とし主現れてないんだよね」

『…え? サイフを届けた日に家に来たんだけど?』

なんて言えなかった。

おかしい…警察に行かないで何で俺の家が判ったんだ?

後をつけられた? それしか考えられない。

考えれば考えるほど怖いので忘れる事にした。

それからちょうど1年後、恐怖を忘れかけていた頃、いつものように帰り道の公園を歩いていると、電信柱に人影が。

赤いミニスカにキャミソール姿の女がいた。

紛れもなくあの女が…。

サイフを拾った場所を電信柱の影からジーーーーっと見ていた。

それ以来、その公園を通る事はなかった。

今でも赤いミニスカを見るとあの時の恐怖を思い出す。

関連記事

河原

河原のおじさん

この話は、私の父から聞いたものです。 父が子供の頃、学校から帰るとすぐに川へサワガニ捕りに行っていたそうです。 ある夏の日も、一人で川へ出かけ、むしむしとした暑さの中でサ…

電話ボックス(フリー写真)

電話ボックス

もう十年近く前。そうだな、まだ街のあちこちに電話ボックスがあった頃の話だ。 ある三連休の前の金曜日。俺は大学の仲間としたたかに飲んだ。 深夜1時前、仕上げに屋台のラーメンを…

介護の闇

家には痴呆になった祖母がいる。 父方の祖母だが、痴呆になる前も後も母とは仲が良く、まめに面倒を見ている。 これは年末の深夜の話。 祖母の部屋から、何やらぼそぼそと呟く…

子供の寝顔(フリー写真)

した

親父から昔、何度か聞かされた話。 俺が2、3歳の頃、一緒に住んでいた曾祖母が亡くなった。 その頃はまだ、人が死ぬということもよく解っていなかったと思う。 ※ その3日後…

結婚指輪(フリー写真)

ムサカリ

俺は今は大きなデザイン事務所に勤めているのだけど、専門学校を出て暫くは、学校から勧められた冠婚葬祭会社で写真加工のバイトをしていた。 葬式の場合は遺影用としてスナップから顔をスキ…

プール

臨時の用務員

小学校の時、用務員さんが急病で一度だけ代理の人が来た。 あまり長くは居なかったけど、まあ普通のおじさん。 ただ妙だったのは、すべての女子に「ヨリコちゃん」と話しかける。 …

ビーチ(フリー写真)

楽しそうな笑み

奄美のとある海岸でビデオ撮影をした時の話。 俺の家族は、全員が思い出に残るようにと、ビデオカメラをスタンドに固定して撮るんだよ。 その日もそうしたまま、兄弟で海に入り遊んで…

キャンプ(フリー写真)

もし、旅かな?

学生だった頃、週末に一人キャンプに興じていた時期があった。 金曜日から日曜日にかけてどこかの野山に寝泊りする、というだけの面白味も何もないキャンプ。 友達のいない俺は、寂…

インコ(フリー写真)

インコの証言

これはテレビ番組『探偵!ナイトスクープ』で取り上げられた実際のエピソードです。 依頼内容は、保護した迷いインコの飼い主を見つけて欲しいというものでした。 そのインコは「ピ…

変な長靴

俺は大学生時代、田舎寄りの場所にアパートを借りて一人暮らしをしていた。 大学が地方で、更に学校自体が山の中にあるような所だから交通の便は悪くて、毎日自転車で20分くらいかけて山を…