巨頭オ

hakone01

男はふとある村の事を思い出した。

数年前、一人で旅行した時に立ち寄った小さな旅館のある村。

心のこもったもてなしが印象的で、なぜか急に行きたくなった。男は連休に一人で車を走らせた。

記憶力には自信がある方なので、道は覚えている。

村に近付くと、場所を示す看板があるはずなのだが、その看板を見つけたとき「あれ」と思った。「この先Xkm」となっていたと思うのだが、その看板が

「巨頭オ」

になっていた。

外国人が殴り書きしたような文字だった。嫌な予感がしたが引き返すことはしなかった。

車で入ってみると村は廃村になっており、建物にも草が巻きついていた。おかしいなと思いながら車を降りようとする男。

そのとき20メートルくらい先の廃屋の影から、頭がやたら大きい人間が姿を現した。

ハンドルを握ったまま、あっけに取られた。

その異形は、両手をピッタリと足につけ、巨大な頭をぐらぐらと左右に振りながら、車の方に向かってくる。それもたくさん!

車から降りなくて良かった。男は恐ろしい勢いで車をバックさせ、とんでもない勢いで国道まで飛ばした。

帰って地図を見ても、数年前に行った村と、その日行った場所は間違っていなかった。

だが、男はもう二度と行こうとは思わない。

関連記事

民家

きょうこさん

以前付き合っていた霊感の強い女性から聞いた話です。「これまで色んな霊体験してきて、洒落にならんくらい怖い目にあったことってないの?」と尋ねたら、彼女は深刻な表情で教えてくれました。 …

抽象的模様(フリー素材)

融合体

以前、井戸の底のミニハウスと、学生時代の女友達Bに棲みついているモノの話を書いた者です。 ……8月に物凄いことがあったので、以下にまとめました。フェイク込みなので辻褄が怪しいとこ…

娘が連れて行かれそうになった話

俺の田舎には土地神様が居るらしい。 その土地神様が俺の娘を連れて行くかもしれないとの事。 正直、今もどうして良いのか分からない。 聞いた時は吹き出した。でも、親父の反…

気持ちの悪いスナック

7年くらい前にタクシーの運転手さんに聞いた話です。 当時、六本木にある会社に勤めていましたが、結構夜遅くなることが多かったんですね。 当然終電はなく、タクシーで帰ることにな…

家(フリー素材)

予兆

会社からの帰宅途中に新しい家があり、その家のベランダを見たら女性が体育座りをしている。 それだけだったら変じゃないけどさ。 よく見たら家族で体育座りをしているんだよね。 …

都会の景色(フリー写真)

報道されない事件

新聞にも載らなかった話。 とあるマンション(市内では自殺の名所で知られている)で女性の死体が見つかりました。 仰向けに寝かされた状態。年齢は20代後半くらい。革のミニスカ-…

首長リーマン

終電の一つ前の電車に乗っていた時の事。 電車内には俺と、酒を飲んでいる汚いおっさんが一人。 電車の中で酒飲むなよと思ったけど、臭いも届かないし、まあ良いかという感じで携帯を…

鎌爺

小学生の頃、田舎に住んでいた時の話。 その村には鎌爺という有名な爺さんがいた。その爺さんは身内の人が面倒を見ているらしいが痴呆症らしく、いつも同じ道端に座っていてボーとしている人…

マネキン工場

幼い日、何てことなく通り過ぎた出来事。その記憶。 後になって当時の印象とはまた違う別の意味に気付き、ぞっとする。 そんなことがしばしばある。 例えば。 小学生の…

ウェンディゴ憑き

ウェンディゴは、カナダ南部からアメリカ北端のインディアンたちに伝わる精霊の呼び名。地方によって多くの呼び名がある。 若しくは、北アメリカのオジブワ族やアルゴンキン語族系インディア…