順番待ち
公開日: 死ぬ程洒落にならない怖い話
この間、東京に用事があって行ったんだよ。
片田舎からの上京なので朝一の高速バスに乗って、朝9時頃に新宿駅に着いた。
その途中にトイレ休憩もあったんだけど、眠くてずっと寝ていたのよ。
そしたら新宿駅に着いた頃にはウ○コ出たさが最高潮になってしまった。
俺は尻を締めながらバスを降り、新宿駅でトイレを探したんだけど、なかなか見つからないのな、あそこ。
ようやく「TOILET→」みたいな表示を見つけて『やった』と思ったがまだそこには無く、「↑TOILET」「←TOILET」といった風に迷路みたく歩かされたんだ。
さすが新宿駅だけあって、朝9時で店もあまりやっていないのに物凄い人混みで、真っ直ぐ歩けない程だった。
でもその表示の通りに歩いて行ったら、いつの間にか壁と壁の隙間のような狭い通路に案内され、人も誰も居なくなった。
※
その頃には俺の肛門は限界寸前だったが、細い曲がり角を曲がった所でようやくトイレを見つけた。
『よし間に合った!』と思ったが、トイレの入り口の前で一人待っている人が居る。
『うわー、こんな奥まった所のトイレなのに順番待ちかよ。さすが新宿駅だな』なんて思っていたら、その待っている人が「あ、お先にどうぞ」と通してくれた。
『え? なんで?』と思いつつ肛門爆発寸前だったので「あ、すいません」と言い猛ダッシュで個室へ。
洋式の便器に座ると同時にウンコ放出。ふう、何とか間に合ったか…と冷静になったところで『あれ?』と思った。
「お先にどうぞ」と言ったさっきの人は、個室が空いているのに一体何を待っていたんだ?
しかも個室は俺が今入っているのを含めて二つどちらも空いていたのに、あいつは何を待っていたんだ?
次の瞬間、閉じたドアと壁の3ミリくらいの隙間から刃物がスッと差し込まれた。
寿司屋が使うような柳刃包丁がスッと差し込まれたかと思うと、隙間を上下に思い切りガチャガチャし始めた。
閉まっている鍵の部分に当たってもおかまいなしで、ガシャガシャグサグサ刺しまくってくる。
俺はあまりのことに震え上がり、便座の上で膝を抱えてじっとするしかなかった。
その内、包丁は反対側の隙間、下の床とドアの隙間からも差し込まれて上下左右に暴れ回ったが、ギリギリ俺の体には当たらずに済んだ。
暫くすると包丁は引っ込んで物音一つしなくなったのだが、俺は恐ろしくてそのまま便座の上で5分くらい固まっていた。
※
その後、思い切って俺はドアを勢い良く蹴って開けたのだが、もうそこには誰にも居なかった。
『絶対さっきのあいつだ』と思って警察に通報したのだが、状況証拠も何も無く被害も無いので、そのまま有耶無耶になってしまった。
やっぱり東京って怖いわ。