出ると噂されているホテル

公開日: 心霊体験 | 本当にあった怖い話

IMG_9382k5d

仕事で地方へ行く用事が出来て、時間の関係で前の晩に新幹線に乗り一泊することになった。

それで、同僚と話している時に予約したホテルの名前を言ったら、

「お前知ってる? そのホテルってさあ…」

とか話し出した。そいつはその手の話が大好きで、俺すっげえ臆病だから絶対聞きたくなくて、

「バカやめろよ、言うなよ!」

と慌てて遮り、その時は聞かずに済んだんだけど、そいつのせいでホテルに着いた後も妙に気味が悪かった。

どうせ一泊しかしないんだから、さっさと寝ちまおうと思い布団に入ったんだけど、そういう時って一回でも怖いと思ったら終わりなんだよね。

寝るのも起きるのも身動きするのも嫌で、もう朝になるのを待つしかない。

そして布団の中で色々考えた。何故かその時は死ぬのが異様に恐かった。

ずっと死ぬことばかりを考えていて、『いやだ、怖い、死にたくねえ、でもいつか死ぬ。誰か助けて』と頭の中で繰り返していた。

もう本気で寝るのを諦め、どこかの飲み屋にでも行って時間を潰そうかと思い始めた時、

「ドンドンドンドン!!」

と部屋のドアが叩かれているんだよ。心臓停まんなかったのが不思議なくらいビビった。

「ドンドンドンドン!!」

幽霊? 火事? 知り合い? 何か事故でもあったのか。とりあえず電気を点けたが、ドアを開けるのは恐く、

「なんですかー?」

と答えてみたら、叩く音はピタッと止んだ。そのまましばらく身構えていたけど何も言ってこない。もう寝ていられる状態じゃない。

しばらくしたら、また

「ドンドンドンドン!!」

とドアを叩く音がした。

「なんかあったんですかー!?」

でも返事は無い。本当に緊急ならホテルの人間が何か言ってくる筈だ。鍵も開けられるだろうし、部屋の電話も携帯電話もある。

それなら大した用事じゃないのか? でもさっきからの妙な気分は引きずっていて、とにかく怖い。

「ドンドンドンドン!!」

フロントに電話をしようと思ったが、そういう他人とのコンタクトが凄く不安な状態だった。

言っても通じなかったらどうしよう。というより、何か変なのが電話に出たらどうしよう。

そんな事を考えていると、

「ガチャガチャガチャ!!」

ノブ回してるよ。入って来る気だよ。どうしよう。どうしよう。ビビりまくっていたがベッドの上から動けず、とにかく早く朝になれと思った。

「ドンドンドンドン!!」

「ガチャガチャガチャ!!」

イタズラか? 近くの部屋に頭のおかしいやつが泊まってんのか?

早くこの時間が終わることだけを祈っていると、段々空が白くなり、ドアを叩く音の間隔が長くなってとうとう止んだ。

仕事で朝が早いのが救いだった。フロントに電話をしてチェックアウトしたいと言い、後は普通。仕事して家に帰った。

それで、前にホテルの話をしかけた同僚を掴まえて、

「あそこ何かあったの?」

と聞いてみたら、数年前に火事があって、大した火ではなかったんだけど一人亡くなって、それから出るとか出ないとか。まあ、そういう話だった。

「ドア叩くんだろ?」

「何で知ってんの? もしかしてお前、何かあった?」

「うん」

「へー。何号室?」

同僚の話を聞くと、俺が泊まっていた部屋に居た人が火事で亡くなったらしい。

その人はどうやら逃げ遅れたらしく、パニックになっていたのかドアが壊れていたのかは分からないけど、部屋の鍵が開けられなくなったそうだ。

「やっぱ幽霊だったんだな。開けなくて良かった」

と言った俺に同僚は、

「なんで? そいつ部屋の中から外に出たくてドア叩いてたんだろ?」

関連記事

立ち入り禁止の波止場

友達の怖い話。 仮にK君としよう。彼は沖縄出身で、若い頃は結構やんちゃなやつ。 「本当におばけなんかいるのか? じゃあ、試してみよう」なんて言うやつだった。 例えば夜…

てめぇじゃねぇ!

ある夜のことでした。 会社員のAさんは残業で遅くなったのでタクシーを拾いました。 タクシーの中では、運転手さんと色々な話で盛り上がっていました。 そして、タクシーは山…

優しい抽象的模様(フリー素材)

兵隊さんとの思い出

子どもの頃、いつも知らない人が私を見ていた。 その人はヘルメットを被っていて、襟足には布がひらひらしており、緑色の作業服のような格好。足には包帯が巻かれていた。 小学生にな…

クレーマーの家系

うちの店によく来るクレーマーの家系が洒落怖だった。 ・学生時代のある日、父親が何の前触れもなく発狂し母親を刺し殺す ・その後、父親はムショ入り前に「自分の車で」頭を轢き潰し…

自転車置き場(フリー写真)

幽霊を持って帰る

私の叔母が、大型ショッピングモールで清掃のパートをしていた時の話。 オープン当時から一年ほど経ってはいたものの、建物も設備もまだまだ綺麗で、田舎の割に繁盛していた。 しかし…

カオル

バイト先の会社の寮で、幽霊騒ぎがあった。 俺は入社して1年も経たないのでよく知らなかったが、以前から気味の悪い事が起こっていたらしい。 寮に入っている社員のTさんの部屋が、…

逆拍手の女性

逆拍手の女性にまつわる都市伝説

1999年、ある悲報が全国を駆け巡りました。 女性3人組ユニット『カントリー娘。』のメンバー、柳原尋美(やなぎはら・ひろみ)さんが、デビュー目前にして突然この世を去ったのです。…

ゲームセンター(フリー写真)

早く閉まるゲーセン

もう3年以上前になるかしら。 当時行き付けだったゲーセンは、何故だか知らないが必ず22時に閉店していた。 元々寂れたゲーセンではなかったし、大学の近くだったのもあってか、…

小さな手

学校に付き物の怪談ですが、表に出ない怪談もあるのです。 わたしが転勤した学校での話です。 美術を教えているわたしは、作家活動として自ら油絵も描いていました。 住まいは…

不気味なタクシー運転手

Fさん(女性・29歳)が深夜勤務の帰り、タクシーを拾った。 ドアが開き、Fさんはタクシーに乗り込んだが、その運転手は何も言わず、ただ黙ってFさんの顔をじっと見ていた。 ちょ…