首が無い警官
公開日: 死ぬ程洒落にならない怖い話
私はある離島の駐在所に勤務しております。
この駐在所に来る前は、派出所に勤務しておりました。
田舎に住む事になりましたが、私は不運だったと思っていません。
職住接近だし、三直交代の不規則な生活をしなくて済むと考えたからです。
しかし、この駐在所には問題がありました。
首が無い警官の幽霊が出るのです。
私も最初は驚きました。
でもその幽霊は、それほど危険な存在に思えません。
私には無関心のようですし…。
だから私は、段々と幽霊が現れる生活に慣れて行ったのです。
しかし、私は幽霊の正体が気になっていました。
それで私は寄り合いの度に、それとなく駐在所の幽霊について聞き出そうとしたのです。
ところが住民達はいつも「気にしない方がいいよ」と話をはぐらかし、私に何も教えてくれません。
その度に私は、よほど言いたくない事なのかも…と思い、何も聞けませんでした。
住民との関係を悪くしたくありませんでしたから…。
※
そんなある日、私はその幽霊についつい話しかけてしまったのです。
「あんた、いい男だね」と。
別にこの言葉に深い意味はありません。
ただ、いつも現れる幽霊とコミュニケーションを取ろうとし、ちょっとおだてただけです。
しかし私の言葉を聞き、彼は恐ろしい見幕でにじり寄って来ました。
「俺の顔が見えるのか」と…。
あんなに恐ろしい威圧感を受けたのは初めてです。
私は恐ろしさのあまり、すぐにその場から逃げ出しました。
※
そして村長の家へ行き、その出来事を話したのです。
その時の村長は険しい表情を浮かべ、頑なに口をつぐんでいました。
それでも私は、駐在所の幽霊について強い口調で尋ねたのです。
すると村長は、古ぼけた封筒を私に手渡しながらこう言いました。
「この封筒の中を見たら、あんたは間違いなく死ぬ。その覚悟があるんなら、見てみなさい」
私が封筒を手に取り、中を確認しようとしたその時です。
突然に玄関のドアを誰かが叩く音がしました。
私と村長が玄関まで行くと、ドア開かれておりましたが誰も居ません。
もしかしたらあの幽霊なのか? あの幽霊が居る気配がするし…でも、どこにも姿が見えないな。
私がそう思いながら、恐る恐る辺りを見回していた時です。
突如、私の背中に悪寒が走ったかと思うと、そのまま私は気を失ってしまいました。
※
それからどのくらいの時間が経ったのでしょうか。
意識が戻った時は、何と私の体が金縛り状態になっていたのです。
そして「見たな、見たな…」と、あの幽霊が私に呟き続けていました。
それで驚いた私は、思わず心の中で叫んだのです。
『一体お前は、何をしたいんだ!俺をどうする気だ!』
その時、幽霊はこう答えました。
「一人になりたい。幸せに辿り着くまで、考え続けたいんだ」
彼はそう言い残し、自分の家へ帰ったようでした。あの駐在所に…。
※
その後、私は別の建物を駐在所代わりにしていました。
そんな私に村長は、駐在所の幽霊についてこう教えてくれました。
「あのお巡りさんは、駐在所で火の不始末から、火事を起こしたんじゃ。
火はすぐに消えたが、お巡りさんは大火傷をした。
それ以来あのお巡りさんは、人を避けるようになってな。
火傷のせいで、えらく人相が悪くなったから、しょうがないじゃろう。
だが島のみんなは、そんな駐在さんはいらんと怒ってな。
駐在さんは、みんなの冷たい仕打ちのせいか、自殺したんじゃ。
駐在さんの奥さんも、その後、ここを去って行った。
あの封筒にはな、駐在さんの顔写真が入っているんじゃよ。
もうこれ以上は、何も知らん方がいい」
私は今でも、彼が早く幸せに辿り着くよう祈っています。