夏休みの訪問

公開日: 心霊体験 | 怖い話

田舎

中学1年の夏、私の祖母の兄、泰造さんが亡くなりました。私はほとんど面識がなかったものの、夏休みということで両親と一緒に葬式に参列するため、初めて泰造さんの屋敷を訪れました。

その屋敷は、某県の山奥に位置し、広大な自然に囲まれた田舎の風景が広がる場所でした。敷地内には鶏小屋があり、数多くの鶏が飼育されていました。泰造さんの娘であるおばさんが、子供たちに売り物にならない小さな卵をくれたため、大人たちが集まるまで、私は他の子供たちとその卵を使っておままごとを楽しみました。

葬式が始まると、私は足の痺れを感じながらも、あまり知らない泰造さんの遺影を見つめました。葬式が無事に終わると、親戚たちが集まって泰造さんの思い出話に花を咲かせ、私はおじさんたちにビールを注ぎながら夕暮れ時を迎えました。

ふとした瞬間、私は尿意を感じて一人で便所へ向かいました。その便所は少し変わった造りで、一つ目の扉を開けると男性用の小便器があり、更に扉がありました。その扉を開けると、暗いぼっとん便所がありました。電気は最初の個室にしかなく、私は扉を開けたまま用を足しました。

用を足した後、ふと後ろを振り返ると、ひとつ目の個室の裸電球の下に、白い服を着た、黒い長髪の女性の後ろ姿がありました。恐怖で体が痺れるほどの恐怖を感じました。しばらくの間、その場に立ち尽くしていましたが、女性が髪を束ねている紐に手をかけ始めたその瞬間、父が現れました。女性は振り返り、私はその場で気を失いました。

目を覚ました時、私は布団の中にいました。両親が心配そうに私を見ていました。「変な女がいたんだよ!怖かった…」と話すと、両親はうなずきました。その後、おばさんが古びたノートを持ってきてくれました。それは泰造さんの覚え書きで、その中には私が見た女性のことが「後女」として記されていました。それを読んでいると、泰造さんがこの女性を恐れていたことが明らかになりました。

今もあの日のことを思い出すと、背筋が凍るような恐怖を感じます。私はあの女性の真の姿を見たのでしょうか。それともただの幻だったのでしょうか。それは今でもわかりません。

関連記事

介護の闇

家には痴呆になった祖母がいる。 父方の祖母だが、痴呆になる前も後も母とは仲が良く、まめに面倒を見ている。 これは年末の深夜の話。 祖母の部屋から、何やらぼそぼそと呟く…

公園の違和感

夜遅くの帰り道、公園の横を通った。遠くから歩きながら公園の方を見ると、なんか違和感がある。 近づいていくと、違和感の正体が分かった。電信柱の長さが違う。一方の電信柱の上に、髪が長…

押し入れ(フリー写真)

白く小さな手

中学校の時、先生に聞いた話です。 幼い二人の姉妹が家で留守番をしていました。両親は夜にならないと帰って来ません。 暇を持て余していた姉は、家でかくれんぼをする事を思い付きま…

石段(フリー写真)

朽ち果てた神社の夢

二十年前から現在まで続く話。 俺は当時大学生で、夏休みに車で田舎の実家に帰省していた。 その時は、普段帰省時に通っている道とは別の道を通って行った。 見渡す限りの山や…

赤ちゃんの手

隠された真実

私の母方の祖母は若い頃、産婆として働いていました。彼女は常に「どんな子も小さい時は、まるで天使のようにかわいいもんだ」と言って、その職業の喜びを語ってくれました。祖母は、新生児の無邪…

自衛隊駐屯地の恐怖体験

私が新隊員教育でとある駐屯地にいた時の話です。ありがちな話かもしれませんが、どうかご容赦下さい。 自衛隊には営内点検と言うものがあります。部屋の使用状況(物品の有無、整理整頓、清…

夜のキャンプ

バックミラーの男

私の妹が体験した話を書かせていただきます。 以前、海へキャンプへ行った時のことです。 そこは自然のビーチで、近くには御手洗い等がなく、御手洗いに行きたい時は、少し離れた港…

機関車(フリー写真)

電車の幽霊

埼玉の三郷に操車場跡という所があります。地図にも載っています。 心霊スポットとしては途中のお化けトンネル(化けトン)が有名ですが、体験したのはその近くの建物です。 操車場は…

死を恐れる男

ある村に、死を異常に恐れる男がいた。 特に男が恐れていたのは「自分が埋葬された後に、棺の中で息を吹き返してしまうのでは?」というものであった。 その男が病気の床にあるとき、…

襖

忘れられた息子

新婚時代、夫のお祖母さんの妹宅を訪れた際、その古い大邸宅には異常なほど大きなテレビの音量が響いていました。耳の遠い高齢者の家と思っていましたが、それは単なる始まりに過ぎませんでした。…