入れ替わった鬼
あまりにも不思議で、背筋が寒くなった話。
当時、中学3年生だった私。師匠というあだ名の女の子と仲が良くて、よく一緒に騒いでいた。
あれは確か冬の雨の日のことだった。
その日、あたしたちはノリで鬼ごっこを始めた。
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初めにうちの校舎の説明をしておくと、四角い建物の真ん中が空洞になっていて、上から見ると
『回』
この字のような形になっている。
それで、各階に東階段と西階段がある。
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まあ、そんなこんなで鬼ごっこを始めた訳だ。最初の鬼は師匠。
「いい? 追っ掛けるよ!」
そう言って師匠が追い掛けて来た時、かなりの距離が開いていた。
ほぼその距離を保ったまま、2階を何度もぐるぐる周った。
流石に疲れて来た私は、一気に階段を昇り、4階の自分たちのクラスに駆け込んでしまおうと考えた。
急に曲がって階段を駆け昇り始める私。
ここからがおかしいんだけど…。
3階に差し掛かる頃に振り向くと、師匠が私のすぐ後ろに迫っている。
しかも、何か下を向いて頭から突っ込んで来るような走り方。
顔がよく見えず、今まではギャーギャー叫びながら走っていたのに、何も喋らない。
あたしは何か恐くなって、そのまま4階に駆け昇った。
そして師匠が真後ろに付いて来ているのを確認してから、廊下を曲がって教室に駆け込んだ。
教室に駆け込んだあたしの目に入って来たのは…。
一番前の席に座っている師匠。
「は!?」
後ろを振り向くと、今まで追い掛けて来ていたはずの師匠が居ない。
「ちょっと師匠!どうやったの!? すぐそこまで追い掛けて来てたじゃん!」
あたしはパニックになりながら問い詰めた。
すると、ポカンとした師匠は信じられない話をし始めた…。
それによると、師匠はあたしが階段を昇り始めた時点で追い掛けるのを諦め、反対側の階段から教室に戻っていたんだってさ。
あたしは一体、誰に追い掛けられていたんだろう。
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補足
その階段を昇っている間中、やけに暗くて、変に静かだったのを覚えている。
そして階段がとても長く感じられて…。
それからは恐くて鬼ごっこはしていません。