ホテルの開かずの間
これは私の父が体験した話です。
父は仕事で少し遠い所まで出張し、経費削減のため同僚と一緒に安いホテルに泊まりました。
父には霊感があるのですが、当初はそのホテルから何も感じられませんでした。
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布団に入ってどのくらい時間が過ぎたでしょうか。
どこからかシャワーのような音が聞こえ、更に父は息苦しさを感じて目を開きました。
自分の傍らに男の子が居ました。青白い色をしていたそうです。
更に父の頭の上から女が覗き込んでいました。
父が恐怖で凍り付いていると、その親子のような二人が話し始めました。
「ねぇ、この人気付いたみたいだよ」
「チッ…」
そう言うとスッと消えて行ったそうです。
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隣室には同僚が寝ていたのですが、同僚もシャワーのような音を聞き、更に何者かに激しく部屋をノックされていたらしいです。
翌日、ホテルを出発する時に気付いた事がありました。
父が泊まった部屋と同僚が泊まった部屋。その間のスペースが、もう一つ部屋が無いとおかしいほど開いていました。
父は外から自分の泊まった部屋を見たそうです。その隣には不自然なスペースは無く、ちゃんと窓が付いていました。
つまりあの不自然なスペースには、ドアを塞がれた開かずの間があったようです…。
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余談ですが、父は出張の度にそのような体験をするため出張嫌いです。
更に父があのホテルで見たものは、映画の『呪怨』に出て来る親子によく似ていると言っていました。
この体験がトラウマになったのか、父はその映画を観ようとはしません。