見知らぬ街で目覚めた日

街並み

2001年の秋、私は風邪を引いて寒気を感じていました。症状を抑えるため、大久保にある病院に行くことにしました。西武新宿線の車内でつり革につかまり、頭痛がひどくなってきたため、目を閉じて耐えていました。

その瞬間から記憶が途絶え、気がついた時は夕方で、周囲は見知らぬ景色でした。身に覚えのない服を着ており、染めた覚えのない茶髪になっていました。

慌てて近くのラーメン屋に駆け込み、現在地を尋ねました。答えは「大阪市福島駅近く」とのことで、時計を見ると、なんと1年近くが経過していました。

手元にあったケータイは機種が変わっており、アドレス帳には「ま」とか「ひ」といった一文字の名前が記された電話番号が10件程度登録されていましたが、親しい人や実家の番号は一つもありませんでした。見知らぬ番号が不気味で耐えられず、ケータイを川に捨てました。

すぐに警察を通じて実家に連絡しました。実家の人々も私が失踪していたことにパニックを感じていました。実は、私には捜索願が出されていたのです。

家に帰ってから、私は月に一度、精神病院に通うことになりました。元の会社には戻れなかったため、現在は派遣で働いています。この不思議で恐ろしい経験は、今でも私の心に深い影を落としています。

関連記事

10の14乗分の1

人間って、壁をすり抜けたりする事ができるの知ってました? 10の14乗分の1くらいの確率で。 細胞を形成している素粒子に透過性があるかららしい。たまたまこないだテレビで見て…

紅葉(フリー素材)

幻の宴

旅行先で急に予定が変更になり、日本海沿いのとある歴史の古い町に一泊することになった。その時に体験した話。 ※ 日が暮れてから最初に目に入った旅館に入ったんだけど、シーズンオフのせい…

都市(フリー写真)

見知らぬ町

俺が高校生の時に出会った時空のおっさんの話。 その日は友達と遊んでから帰って来て、自分の部屋(一戸建ての3階)で寛いでいた。 ベットに寝転び、伸びをしながらリラックスしてい…

晴明神社(フリー素材)

晴明神社

京都にある晴明神社に行った時の事。 安部の晴明は今でこそ有名で、観光客も沢山居るらしいが、十年近く前のその頃は一般的にはあまり知られておらず、神社も全然人気が無かった。 私…

声のない街

声のない街

二、三年前。私がまだ建設業の見習いだった頃、真夏のある日に体験した不思議な出来事です。 その年の夏は特に暑く、現場はビルの改修作業でてんてこ舞い。私は先輩や上司に指示されるまま…

山道

途切れさせてはいけない

俺の嫁が学生の頃の話。 オカルト研究サークルに入っていた嫁の友達K子が、心霊スポットについての噂を仕入れて来た。 東北地方某県の山中に、周囲を注連縄で囲われている廃神社があ…

田舎の風景(フリー写真)

ヒノジイ

私は小学校に通う前、田舎の祖父母の家に住んでいました。 同い年の子供どころか、祖父母以外に人を滅多に見なかったので、暇で仕方がありませんでした。 ※ ある日、敷地内…

友子が二人

一人で繁華街を歩いていると、ガラス張りのカフェ店内の窓際席に一人でいる友子を見つけた。 友子の携帯に電話して驚かせようとしたが、友子は電話に気付かない。 じっと座り、目を左…

古書店の本棚(フリー写真)

客寄せ仔猫

伯父の高校時代に、伯父が好きだった娘がいた。 高校卒業後は、偶に同窓会で顔を合わせる程度の付き合いだった。 しかし数年経って、その娘が親の勧める縁談を受けて結婚し、夫の仕…

山

山の神社と巫女の幽霊

これは5年前の話です。当時の私は浮浪者で、東京の中央公園での縄張り争いに敗れ、各地を転々とした後、近畿地方の山中の神社の廃墟に住むようになりました。 麓へ下り、何でも屋として里…