赤い吉祥寺

バス

私が小学6年生の時、吉祥寺にある塾に通っていました。隣の区からバスで通うのですが、ある日の出来事です。

バスに乗った私の目の前に、ピシッとしたスーツにハットを被ったスラリとした老人が立っていました。私は席を譲り、「どうぞ」と声をかけました。彼は感謝の笑みを返し、そこから会話が始まりました。彼は「君は優しいねー」と話し、私もその言葉に応じて話を続けました。

間もなく、終点の吉祥寺駅に着くころ、「マジシャンですか?」と私が尋ねると、老人は笑いながら「でもね、これならできるぞ」と答え、指を立てました。私がバスを降りると、突然赤い光が目に飛び込んできて、周囲の景色が全く異なるものに変わりました。誰もいない町、走る車もなく、乗ってきたバスも消えていました。世界は赤い色に染まっており、非現実的な光景が広がっていました。

恐怖で走り出した私は、吉祥寺駅前通りで誰もいないことに気づき、泣き崩れてしまいました。その時、再びその老人が現れ、「戻して!早く戻して!」と叫ぶ私に「ごめんね」と謝り、私の頭を撫でながら、「怖がるとは思わなかったよ。ごめんね」と何度も謝りました。

突然、周囲の喧騒が戻り、私は普通の風景の中で横断歩道にしゃがんでいました。周りには人だかりができており、私は変な目で見られていましたが、あの老人の姿はどこにもありませんでした。

この体験は今でも私の心に深く刻まれており、あの老人が一体何者だったのか、今でも時々考えることがあります。

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