視える子

公開日: ほんのり怖い話

公園(フリー素材)

7歳の長男の話です。

長男は所謂『視える子』らしいのですが、彼から聞き出す話のことごとくが、一般的な霊感体験談からズレていて興味深いのです。

長い髪の女や不思議な子どもなどは一切見えない癖に、

「空中浮遊する目玉の親父まがいのもの」

「鬼火を引き連れて行進する骸骨」

「後ろ手に縛られてうなだれる鬼」

などは、思い出したように見てくれます。

お前は鬼太郎か。

私としては、ぶっちゃけ長男の作り話でも構わないのです。面白ければ。

これは親バカというものなんでしょうかね。

今回の話は、先日一緒にシャワーを浴びながら聞き出したものです。

お盆が近かったので、

「亡くなった父が帰って来るのは見えないもんかね」

と話を振ったら、

「おじーちゃんは見えないけど、一年くらい前に変なことあった。

おとーちゃんに話したっけ?

おばけじゃないけど変なの見たよ」

と語ってくれました。

以下、長男の語ったお話。

お母ちゃんと公園に行ったら、ぼくよりちょっと背が高いお兄ちゃんがいたんだけど、変だったの。

ぼくは背がちっちゃいから、その子もあんまり大きい子じゃなかったと思う。小学二年生くらいかなあ。

その横におじいさんが立ってた。ジャージみたいな黒い服を着た、ひげのおじいさん。

首がすごく曲がってたの。顔が胸の前に垂れ下がるくらい。

それで、お兄ちゃんと背の高さがまったく同じ。

ぴたっとくっついて立ってたから分かったんだけど、おんなじ背の高さだった。

うん、おばけじゃないよ。だってぼくが何回もちらちら見たのに、ずっとはっきり見えてたもん。話もしてたし。

そうだよ、お兄ちゃんに話しかけてたの。

えーっとね、たぶん怒られてた。おじいさんが怒ってたの。

でもお兄ちゃんは、おじいさんとちがう方を向いて、はははって笑ってた。

ぼくだけじゃないと思うよ、おじいさんに気付いてたのは。

みんなわざと見てなかっただけ。おじいさんを見ないように、ちがう方向を向いてたの。

ちがうよ、みんな知ってたもん。

だって、公園にいっぱいいっぱい人がいたのに、お兄ちゃんのまわりだけ人がいなかったもん。

みんな知ってたんだよ。

あのおじいさんは人間じゃないって。

関連記事

柿の木(フリー写真)

招かれざる客

いきなりだが、俺には全く霊感が無い。 その俺が先日仕事で、地元では結構有名らしい幽霊屋敷へ行くことになった。 俺はその地域には疎いので全く知らなかったのだが、 『以前…

女性のシルエット(フリー素材)

赤の他人

俺は物心付いた時から片親で、父親の詳細は判らないままだった。 俺は幼少期に母親から虐待を受けていて、いつも夕方の17時から夜の21時まで家の前でしゃがみ込み、母親が風呂に入って寝…

蛍(フリー写真)

お面

大学生時代のバイト先だったバーのお客さんの話です。 Kさんはその店に割とよく来るお客さんで、当時20代後半の会社員。僕と同じ茨城出身の人でした。 ちょうど今頃の季節で『蛍…

綺麗に揃えられる靴

小学校の頃、近所にお化け屋敷と言われている家があった。 まあ、実際は屋敷という程でもない少し大きめな日本家屋なんだが、小学生の言うことだしな。 その日は両親共に帰宅が遅くな…

カブト虫

夜、友人4人と車で山道走ってたら、1人が急に「虫がいた。停めて。カブト虫探す」 って言って時速30kmで走ってる車から飛び降りて、ゲラゲラ笑いながら山の中に消えていった。 実家に…

ザキか?

ザキか? ザキなのか? 実話です。小学生の時、友達の先輩に、ザキを使える人がいたらしいです。 本人も怖くて封印しているそうなんですが、その友達が夕方先輩の家に遊びに行った時…

海(フリー写真)

漁師に伝わるまじない

にわかに信じられない話だが、うちのお袋がお袋の祖父に聞いた話。 母方のばあちゃんの実家は、漁師の網元だったらしい。 お袋の祖父(以降祖父)が、よくお袋にしていた話だ。 …

神社の思い出

小学生の時、家の近くの神社でよく遊んでた。 ある日、いつも通り友達みんなで走り回ったりして遊んでいると、知らない子が混ざってた。 混ざってたというか、子供の頃は誰彼かまわず…

箪笥(フリー写真)

形見の箪笥

高校時代の英語教師に聞いた話。 解り易い授業と淡々としたユーモアが売りで、あまり生徒と馴れ合う事は無いけれど、なかなか人気のある先生でした。 ※ 昔、奥さんが死んだ時(話の枕…

隣の女子大生

貧相なアパートに暮らす彼の唯一の楽しみは、隣に住む美女と語らうひとときだった。 ただ、一つだけ腑に落ちない点が…。 当時、彼の住むアパートは、築30年の6畳一間で、おんぼろ…