ト・コ・ヨ・ワ・タ・リ

公開日: 怖い話

廃屋(フリー写真)

家の近所に『青柳タンス』という廃屋があった。

別にタンス屋だった訳ではなく、ただの民家だったのだが、壁面にそういう看板が掛けてあった。

そこには電話番号も書いてあり、その番号に掛けると霊界に繋がるという噂があった。

ある日、番号をメモして電話を掛けてみた。携帯も無い時代。

電話を掛けてみると呼び出し音が鳴るが、いくら待っても誰も出ない。

友達数人と面白がって何度か電話を掛けていたが、ある日一人が

「多分、実際に青柳タンスに掛かっていると思う。みんなで青柳タンスに行って、その時一人が電話を掛けてみよう」

という話になった。

そこで俺一人が家に残って電話を掛けることになった。

みんなが青柳タンスに着くぐらいの頃に電話してみると、いつも通りの呼び出し音が鳴った後、ガチャリと音がして電話が通じた。

友達が電話を取ったと思い、

「そっちの様子はどう?」

と聞いてみたが返事が無い。

代わりに、低い男の人とおばあさんの声が混ざったような声で

「ト・コ・ヨ・ワ・タ・リ」

という返事が来て電話が切れた。

恐くて恐くてみんなが帰って来るのを待ったが、結局その日は帰って来なかった。

後日、心配になりみんなの家に電話を掛けてもらうと、

「結局、電話が掛かって来なかったので、つまらなくなってみんな自分の家に戻った」

と言う。

何も言わずに家に帰ってしまうなんて変に思ったが、その日以来、みんなの様子が少し変わってしまい、俺たちは何となく疎遠になってしまった。

十数年後、同窓会でその数人の話を聞いたが、みんな学生時代に健康を害し、病気で死んでしまったらしい。

関連記事

田んぼ

田んぼの案山子の秘密

私は田舎に住んでいて、学校への通学路は常に田んぼの脇道を歩いていた。 ある日、帰宅中に田んぼの中にピンク色の割烹着を着た姿が見えた。 「田植えをしているのか」と思ったが、…

夜明けを待つ山

ヤマノケ — 山で出会ったもの

一週間前のことだ。娘を連れてドライブに出かけた。特別な目的もないまま、なんとなく山道を進み、途中のドライブインで食事をとった。 そこで、ちょっとした悪ふざけのつもりで、舗装され…

呪いの人形

最初は、ほんの冗談だった。 うちのクラスには、一人どうしようもない馬鹿がいる。 野口と言う奴だけど、みんなはノロ、ノロと呼んでいた。 なんでも信用するので、からかって…

和室(フリー写真)

連鎖と数珠

一年経ってようやく冷静に思い出すことができるようになった出来事がある。 去年のちょうど今頃の話だ。 その日は金曜日で、俺は会社の同僚数人と何軒かの店をハシゴして、すっかり良…

赤ちゃんの手

隠された真実

私の母方の祖母は若い頃、産婆として働いていました。彼女は常に「どんな子も小さい時は、まるで天使のようにかわいいもんだ」と言って、その職業の喜びを語ってくれました。祖母は、新生児の無邪…

悪夢

寺生まれのTさん

俺は久々に嫌な夢を見た。 ノコギリを持った男が俺の部屋に立っている。 俺は恐怖のあまり動くことが出来ず、ただその男を眺めている。 すると男は突然、ノコギリで家の柱を…

繰り返し見る夢

夢に関する不思議な話を。 同じ家や場所を繰り返し夢に見ることはあるだろうか。 別に続きものという訳ではなく、ホラーであったり日常的であったりと、関連性は無いけど舞台がいつも…

神社の鳥居(フリー写真)

隠しごと

人混みに紛れて妙なものが見えることに気付いたのは、去年の暮れからだ。 顔を両手で覆っている人間である。ちょうど赤ん坊をあやす時の格好だ。 駅の雑踏のように絶えず人が動いて…

空き家(フリー写真)

両目を閉じたまま

小学低学年の頃、両親の用事のため、俺は知り合いのおばちゃん家に一晩預けられた。 そこの家は柴犬を飼っていて、俺は一日目の暇潰しにその犬を連れて散歩に出かけた。 土地感のな…

ロシアの軍艦(フリー素材)

ロシアの軍事教練所

バルチック爺さんが日露戦争中に見聞した話です。 彼はその後、関西の都市部で衛星看護兵の訓練に携わりました。 そこで知り合った医務教官から聞いた話だという事です。 その…