寺生まれのTさん

公開日: 心霊体験 | 怖い話

悪夢

俺は久々に嫌な夢を見た。

ノコギリを持った男が俺の部屋に立っている。

俺は恐怖のあまり動くことが出来ず、ただその男を眺めている。

すると男は突然、ノコギリで家の柱を切り出した。

思わず「やめろ!」と叫ぶ俺。

するとゆっくりこちらを振り返る男。

その顔は、見るも無残に潰されて顔中に釘が打ち付けてある。

「お前もこうなりたいのか? お前もこうなりたいのか?

してやろうか? してやろうか?」

ゆっくり俺に近付く男。

俺は金縛りに遭ったかのように動けず、そして男のノコギリが俺の顔に…。

そこで目が覚めた。

嫌な夢だ。後味が悪い。

俺は水を飲もうと立ち上がった。

俺の目に飛び込んで来たのは、無残にも傷つけられた家の柱だった。

俺は恐怖で腰を抜かしてしまった。

あの男は現実に居る。

そして次は本当に俺の顔が刻まれてしまうのではないかと怯えた。

その日のバイトで、俺は寺生まれで霊感の強いTさんにその夢を相談してみた。

しかしTさんは「所詮、夢だろ?」と冷たい対応。

これでは引き下がれないので必死に「何とかしてください!」と頼み込むと、

「それじゃあ、俺の作った御守りをやるからそれを枕元に置いて寝ろ、そうすりゃ大丈夫だ」

と、御守りを渡してくれた。

次の日、不安ながらも朝の早かった俺は床に就いた。

そこでまた夢を見た。

「つづき、つづき、つづき!つづき!つづき!つづき!」

またあの男だ!

俺は夢の中でTさんの御守りを探した。

しかしどこにも見当たらない。

「これ? これ? これ?」

何と御守りを男が持っている。もうおしまいだ。

だが次の瞬間、御守りが眩い光に包まれ、どこからともなくTさんの声が。

「破ぁ!!」

御守りは光と共に飛び散り、男の半身を吹き飛ばした。

「あああああああああ」

半身でのたうつ男を尻目に、俺は夢から目覚めた。

枕元にあったはずの御守りは、どこを探しても見つからなかった。

その話をTさんに話すと、

「半身を吹き飛ばした? やれやれ、威力は親父の作った奴の半分か…」

と呟くTさん。

寺生まれは凄い。

俺は感動を覚えずには居られなかった。

関連記事

平和祈念像(フリー写真)

戦時中に子供が描いた絵

幼い頃、親の都合でドイツに移住した経験があります。 自然な流れで特別支援学級に入り、徐々にドイツ語を身に付けていきました。 同じクラスには、同様の環境にいたアラブ系の子が…

空き家(フリー写真)

両目を閉じたまま

小学低学年の頃、両親の用事のため、俺は知り合いのおばちゃん家に一晩預けられた。 そこの家は柴犬を飼っていて、俺は一日目の暇潰しにその犬を連れて散歩に出かけた。 土地感のな…

肋骨を掴む手

最寄の駅からおいらの会社まで自転車で通っていたことがある。 その日は仕事が結構早めに終わり、少しずつ暗くなる路地裏を自転車で家路を急いでいた。 蒼い宵闇が降りてくる。境界線…

古い住宅(フリー写真)

きてください

私は編集者をしており、主にイベントや食べ物屋さんなどの紹介記事を書いています。 こちらから掲載をお願いする事もあれば、読者からの情報を参考にしたり、その他お店からハガキやFAX、…

工事現場(フリー写真)

マンホールの男

昔、警備会社の夜勤をやっていた時の話。 多くは国道の道路工事の現場で、車通りの多い道で騒がしい音の中働いていた。 ある日、珍しく裏道の仕事が回って来た。 その細い裏道…

海(フリー写真)

海に棲む霊

これは私の友人に起きた実際の体験談です。 お盆には海に入ってはいけないと、古くから伝えられていますよね。 それは、イラ(クラゲ)が出てしまうからという物理的な事だけではない…

立ち入り禁止の波止場

友達の怖い話。 仮にK君としよう。彼は沖縄出身で、若い頃は結構やんちゃなやつ。 「本当におばけなんかいるのか? じゃあ、試してみよう」なんて言うやつだった。 例えば夜…

冬の村(フリー素材)

奇妙な風習

これは私の父から聞いた話です。 父の実家は山間の小さな村で、そこには変わった習慣があったのだそうです。 それは、毎年冬になる前に行われる妙な習慣でした。 その頃になる…

DJ(フリー写真)

ライブ会場の心霊写真

俺が高校の時の話です。 友人にDJをやっている奴がいたので、仲間でライブを観に行ったんです。 着いた時には狭い会場に客が一杯で、ずっと後ろだったのですが、友人の計らいで2階…

キャンプファイアー(フリー写真)

火の番

友人が何人かの仲間とキャンプに出掛けた時のことだ。 夜も更けて他の者は寝入ってしまい、火の側に居るのは彼一人だった。 欠伸を噛み殺しながら、 『そろそろ火の始末をして…