ファミレスのバイト

49210166cb94548ef0b77bc504e02a88

ファミレスでの俺のシフトは、普段は週3日で17時~22時と日曜の昼間。

肝試し帰りの客の一人が、憑いて来た霊らしきものを勝手に店に置いて行った後での出来事。

マネージャーがゲスト用の女子トイレに近づきたがらなくなった

従業員はゲストルームが汚れていないか、必ずチェックしてからでないと休憩に入れない。

その他にローテーションでトイレ掃除をしなければならないんだけど、マネージャーが女子トイレに長く居られない、出来れば近寄りたくないなどと言うようになった。

女の人が女子トイレの個室の上から時々顔を覗かせているが、首から下が見えないと言う。

お客から女子トイレの掃除用具入れが勝手に開くから危ないとクレームも来たりしていた。

マネージャーは霊感があるとは聞いてたが、とにかく女子トイレに怯えていた。

店が潰れる一月程前だが、子供が「トイレに行きたくない」と騒いだことがあった。

その時は俺も居たんだけど、お母さんが困っていたのでパートの従業員に「どうしてトイレ嫌なの?」とその子に聞いてもらったら、「トイレの上のほうに怖い女の人がいる」と言って泣き出した。

隣の男子トイレにすら近寄りたがらず、従業員用トイレも拒否したので、お母さんは近くのコンビニまで連れて行った。

マネージャーは「あの子にも見えちゃったんだね」と言っていた。

店長が裏の事務所個室で発注と精算の作業をしていた時

その個室には小窓が付いており、そこから調理場が見える。

更衣室、または洗い場や従業員用のトイレに行く場合、従業員たちはその小窓の前を横切ることになる。お客さんは基本入れない。

店長曰く、長いボサ髪の見慣れない女性がスッ…と横切って行ったので、作業を止めて調理場に出て「いま誰が出勤してきたのか」と尋ねたが「誰も通っていない」と言われる。

泥棒や不審者だと困るので、念のため更衣室やトイレをノックし中を確認したが、誰も居なかったのだと。

気のせいだったのかと思い個室に戻ろうとしたら、今度は裏口(食材等の搬入口)のドアのチャイムが「ビビー」と鳴る。

裏口は防犯のため二重扉になっていて、外側のドアは鍵を持っていない者は開けられない。

内側のドアは、チャイムを鳴らして中からドアを開けてもらわないと入れない。

それに配送の来る時間帯でもなかった。

店長は強盗などを想像し、キッチンの肉叩きを構えてドアを開けたそうだ。

しかし、やはり誰も居なかったのだと言う。

それどころか、ドアを開けてチャイムを確認しているその瞬間にもまた「ビビー」っと鳴らされたらしい。

もちろんそこに人など居ない。

誰かが小窓を横切る…誰もいないのにチャイムが鳴る…。

気味悪がった店長は「気のせいだ」「チャイムの故障」と言いながら手首にお守りの数珠を付けるようになった。

これらは一度ではなく、後々マネージャーや他従業員も経験したようだが、俺はお目にかかれていない。

店の入り口扉の付近で待機していた時

繁忙時間以外は結構暇なもので、することがなければお客にいつ呼ばれても良いように、また来客をすぐに出迎えられるよう、店員は見渡せる場所で待機することがある。

そのスペースが玄関付近だったんだけど、俺ともう一人のバイトの女の子はそこで待機しながら軽く世間話してたんだ。何気なく扉の外を見ながらね。

すると女の子が扉の向こうを見ながら「あ、お客さんだ」と言っておもむろにメニューを持ち構えた。

「入ってこないのかな? あれ? 行っちゃったね」

俺はどこにその客がいるのか分からず、女の子が独り言を言っているようにしか見えなかったので、「どこにお客さんいるの?」と尋ねたが、「いま扉の向こうに立って覗き込んでたでしょう!」と。

扉の向こうは俺も間違いなく見ていたが、人など立っていなかったし、誰も覗き込んでもいなかった。

そう伝えたら「嘘でしょ? ほんとに? 女の人だよ? 怖がらせようとしてる?」と言う。

女の子は俺が変なこと言っていると店長やマネージャーに言いに行ったりしたが、そんなこと言われても、誰も居なかったもんは居なかったんだ。

店長が「俺そういうの苦手だからやめてくれよー」と俺に言いにきた瞬間、店長の数珠が弾け飛んだ。

店長は顔面蒼白。数珠の玉を集めるのが大変だった。

フロア清掃の業者が入る時のこと

数ヶ月に一度の深夜帯、フロア清掃のために専門業者が入る。

その日は日付が変わる前に店を閉店させ、深夜シフトの従業員が立ち会うんだけど、閉店させてから業者が来るまで従業員はキッチンの清掃をするんだって。

誰も居ないはずのフロアから「すいませーん」とはっきり女性の低い声で呼ばれ、入り口の鍵をかけ忘れ間違ってお客が入店してしまったと思い、その人は慌てて出て行ったが誰も居ない。

不思議がっているとまた女性の低い声で、今度はキッチンのほうから「おぉぉぃ」と声がしたそうだ。

怖くて業者が来るまで有線を大音量にしてキッチンに引っ込むと、キッチンの横を誰かが横切ったりしてパニックになり、思わず店長に電話したのだと言っていた。

店長は凄く怒っていたよ。夜中というのもあるし、電話で報告された時に数珠が「バチン!」と切れてチビリそうだったんだと。

客からのクレーム

ランチタイム、柄の悪そうな男性客が突然「おい、あのホエド女追い払え」とクレームを入れてきた。

対応したパートの女性は何のことか解らず、どちらの女性かと尋ねたそうだが、「さっきから店の周りをうろついて窓から覗いている。飯が不味くなる。さっきは向こうの席の客を窓から覗き込んでいた」と言う。

その時、他の客からそんなクレームも無くて、外をうろついて堂々と覗き込んでる女性がいたら従業員も気が付くはずだ。

パートさんは訳が解らず、ホエドの意味も解らないし、ちょっとおかしい人なのかと対応に困ったそうだ。

だが、窓から覗く不審者騒動は別の日の深夜帯、別の客でも起きた。

女性客が悲鳴を上げたので駆けつけると、女性たちは「今女の人が窓に顔をくっつけて覗き込んでいた」「窓の下のほうに隠れたので立ち上がって覗き返したが誰もいなかった」と騒いでいる。

外に出て確認すると、そこにはみっしりと植木が植えられていて、人が踏み込んだ形跡もなかったそうだ。

頻度が増す

早朝にマネージャーがモーニングの準備をしていたところ、ドアベルが鳴った。

いらっしゃいませと出迎えに出たが、入り口に客は立っておらず、キッチンの方へ女性が入って行くのが見えた。

モーニングのシフトで入っているFさんが出勤したのだろうと思いモーニングの準備を続けたが、その際既に寒気が止まらなかったそうだ。

しばらくすると「おはようございまーす」とFさんが出勤してきたので、マネージャーはさっきの人影がFさんでない何かだと理解したそうだ。

その日はFさんとマネージャーが突然吐いて体調を崩したり、誰も居ないのに洗い場の食洗棚に並べた皿が棚ごと落下したり、バイトの女の子が「キッチンの方(従業員入り口)にお客さんが入っていったけどいいの?」と客に言われたりと、不可解な事が重なって起きた。

ただでさえ変なことが起こるようになっていたので、体調を崩したマネージャーは真剣に「Fさんを連れて御祓いに行き、御札も貰ってくる」と店長に相談したと言う。

夕方出勤した俺がその話を店長から聞いている最中、また店長の数珠がバチンと切れる。

バイトの他の子まで具合が悪くなりその日は帰って行ったので、店長と俺で夕方以降の繁忙時間の接客を乗り切った。

後日、マネージャーが本当に貰ってきた御札が事務所に置かれていたよ。

でも効果なかったんだろうな。その後も不可解な現象は収まらず、「まただよ…」と報告されていた。

これ程だったのに俺は置いて行かれた女をこの目で確かめることはできなかったわ。

見えないもんは見えないし、感じもしないんだよ。

関連記事

ビル(フリー写真)

曰くのある場所

得意先が移転し、お祝いを兼ねて訪れた。 そこは1階が店舗で2階が事務所。 取り敢えず事務所で話を聞くからと、店舗の奥の給湯室から伸びる階段で2階に上がる。 しかしこ…

カフェ(フリー写真)

死相の本

『死相の本』というものをご存知ですか? 自分は一度、見たことがあります。 広辞苑ぐらいの厚さで、果てしなく色々な方の生前の顔と死後の顔が並んでいるだけの本。 右ペー…

ピチガイオカン

自分の記憶と兄から聞いた話、それに友達からの情報、それらを元にした話なので、完全に真実の話とも言えないかもしれませんが、結構怖いと思った話なので書き込ませていただきます。 始まり…

悪魔の書

中学生の頃、俺は横浜に住んでたんだけど、親父が教会の神父やってたの。 神父にしては結構ざっくばらんな性格で、結構人気もあったんだ。 まあ、俺なんて信心深い方じゃないし、一家…

ドルイド信仰

ドルイドとは、ケルト人社会における祭司のこと。「Daru-vid: オーク(ブナ科の植物)の賢者」の意味。 ドルイドの宗教上の特徴の一つは、森や木々との関係である。 ドルイ…

火傷の治療

昭和の初め頃、夕張のボタ山でのお話。 開拓民として本州から渡って来ていた炭鉱夫Aさんは、爆発事故に見舞われた。一命はとりとめたものの、全身火傷の重体だった。 昔の事とて、ろ…

神秘的な森

角田の森

あれは小学6年の夏休みの事でした。 友人のHとTが角田の森で遊んでいた時、Hが奥の廃屋へ行ってみようと言い出したそうです。 当時、私達は角田の森でよく遊んでいました。 …

鮒おじさん

小学校4年生の夏休みの事で、今でもよく覚えている。 川と古墳の堀を繋いでいる細い用水路があって、そこで一人で鮒釣りをしてたんだ。 15時頃から始めたんだけど、いつになく沢山…

てめぇじゃねぇ!

ある夜のことでした。 会社員のAさんは残業で遅くなったのでタクシーを拾いました。 タクシーの中では、運転手さんと色々な話で盛り上がっていました。 そして、タクシーは山…

死者からの着信

実際の体験談を書きます。友人(H)が自殺をした時の話。 Hとは高校時代からの仲で、凄く良い奴だった。 明るくて楽しい事も言えて、女子には人気が無かったが、男子には絶大なる人…