なんで逃げちゃったの

公開日: 心霊体験 | 怖い話

e0331722_2341693

これは数年前に友人(仮にAとします)から聞いた話です。

その当時Aは高校2年生。そしてそれは夏休みの出来事だった。

夜22時頃にAの携帯が突然鳴った。Aの近所に住む中学校からの友人(以降B)からだ。

Aはこんな夜中に何だろうと思い電話を取ってみると「今から川原で花火やりに行かへん?」

Bは普段から何かとAを誘ってちょくちょく遊んでいる仲だったため、いつものノリでその誘いに乗って22時半にいつもの川原で落ち合うことにした。

Aの住んでいる町はコンビニも一軒しか無い程の田舎だ。落ち合う場所となっている川原も山道を少し進んだ奥にある地元の人間しか知らないような場所だった。

そしてしばらくするとAは川原に着いた。既にBは花火を開け待っていた。

Bの持ってきた花火は少なく、すぐに使い切ってしまった。もうやることも無くなったが、まだ帰る気の無さそうなBは「せっかく川に来たんやし、泳ぐか」と言ってトランクス姿になって川に飛び込んだ。

Bは初めから泳ぐつもりだったらしく、バスタオルを2枚用意してきていた。

地元の人間にとっては、人っ気の無い川原で泳ぐ時は見られる事も無いので水着など要らず、タオル一枚あれば十分だそうだ。

Aも夜に川で泳ぐのは初めてで、調子に乗って泳ぎ出した。川の中は昼間と違って真っ暗で、まるで墨の中を泳いでいるような感じだった。そのため、Aは早々に川から上がろうとした。

その時…。

突然Aの足が何かに引っ張られた。AはBの仕業だと思った。しかし、もがきながらも川原を見てみるとBが既に川から上がり立っているではないか。

じゃあ足を引っ張っているのは…。

一瞬背筋がゾクっとし、月明かりのよってかろうじて見える足回りを確認した。

……何もいない……。

そして引っ張られている感じは収まった。Aはすぐさま川原に上がり、Bにすぐにここを去ろうと告げようとした。

しかし、Aは自分の目を疑った。Bの顔の後ろに鬼の形相をした顔が浮かんで見えた。

「早く逃げろ!!」

Aは突然の事にあっけにとられているBの手を引っ張りながらその場所を去った。逃げる最中にBに簡単にそのことを告げた。

するとBがもうすぐ山道を抜けるというところで突然叫び出した。

「おいっ、なんだあれ!?」

A達が走っていく方向に黒い塊が動いていた。大きさは大体1メートル弱で、人間とも動物とも言えないような物体があった。

そしてその物体はナメクジのように這うようにして動き、A達の行く手を阻むような感じだった。

Bは驚き、来た道を戻っていった。そしてAもそれに続こうと思ったが出来なかった。Bが走っていた道を見てみると、木の間に無数に伸びる手が手招きをしていた。

その光景は異様で、月明かりが無く前方の黒い物体の姿は見えないのに、無数に広がる手だけは発光体の様にうっすら見ることが出来た。

AはすぐさまBを呼び戻そうとしたものの、Bには手が見えていないらしくそのまま暗闇に消えていった。

Aは迷った後に、黒い物体の方に走って行った。眼を瞑り、時々半眼を開けながら黒い物体にぶつからないようにその場を走り抜けた。

山の麓まで出ることができ、少し安心して後ろを振り返った。

すると先程の物体が追いかけてきているではないか。ナメクジなんて動きでは無い、まるで地面を滑るようにしてAに迫っていた。

山の麓まで出たおかげで、月明かりがその物体を微かに照らし出した。しかしそれでも、その物体は見えない。

周りの草や木なんかはそれなりに見えるのに関わらず、その物体だけはどうしても見えなかった。まるで暗闇が地面を這っているように見えたと言う。

「うわあぁぁぁぁ!!!!!!」

Aは一心不乱に駆け出した。

5分程したであろうか、Aは近所の小学校まで逃げることができた。Aは逃げる時にとっさに掴んだ自分のバックからTシャツを出し身に着けた。

しかし、さすがに深夜の小学校にトランクスとTシャツ姿でいるとこを見つかったら問答無用に捕まると思い、Aはその後は見つからないように帰路に着いた。

途中、後ろから何か追いかけられているような気はしたものの、敢えて振り返らず小走りで十分程で家に着いた。

Aはそのままお風呂に入り、逃げるように布団に入ると眠りに付いてしまった。

そして翌日、Aは目を覚ますとすぐにBのことが気に掛かり電話を入れた。

「なんだよ、こんな朝っぱらから…」

Bは何事も無かったのかのように話していた。Aは不思議ながらもあの後の経緯を尋ねた。

「は? 何言ってんの? 昨日ずっと家にいたし。まずお前に電話なんてかけてないし」

予想外の返答が帰ってきた。Aは必死に昨日の出来事を説明した。

「どうせ夢の中のことだろ? お前寝ぼけすぎ」

Bの返答に苛立ったものの、同時に安心感も出てきた。そしてそのまま電話を切り、何気なく着信履歴を確かめていた。どうせ残って無いだろと思ったのもつかの間…。

あった!

確かに昨日の夜22時にBから着信がある。Aはとっさにバックを確かめた。昨日のままだ。これは変だと思い、昼になるとBの家に行った。

Bはやはり何も無かったかの様な対応で、おばさんに聞いてもBはその時間にしっかり家に居たと言う…。

Bはその川原に確認に行こうと言い出したが、Aはとてもそんな気にはなれず遊ぶこともなく家へ帰った。

そして夜が来て、Aがもう昨日の事は忘れようとテレビを見ていた頃である。突然Aの携帯が鳴った。Bからである。

何か思い出したのかな、と思いその電話を取ってみると、

「なんで昨日は逃げちゃったの……」

それは明らかにBの声では無かった。Aは一気に寒気に襲われ、そのまま急いで電話を切った。再びAの携帯が鳴る。予想通りBから‥‥いや、謎の者からだ。

Aはすぐに電源を切った。しかし、それでもしつこく着信音のみが鳴り響いたと言う…。

その後は何もないらしい。しかしその川の下流では毎年数人は溺れて犠牲になっていることは紛れもない事実である。

その原因がただ川に溺れてしまっただけなのかどうかは分からないが…。

関連記事

ビーチ(フリー写真)

楽しそうな笑み

奄美のとある海岸でビデオ撮影をした時の話。 俺の家族は、全員が思い出に残るようにと、ビデオカメラをスタンドに固定して撮るんだよ。 その日もそうしたまま、兄弟で海に入り遊んで…

和室(フリー写真)

連鎖と数珠

一年経ってようやく冷静に思い出すことができるようになった出来事がある。 去年のちょうど今頃の話だ。 その日は金曜日で、俺は会社の同僚数人と何軒かの店をハシゴして、すっかり良…

オフィスビルの窓(フリー写真)

落ちるおじさん

先日、大学の同期の友人と久々に食事した時の話。 友人は大阪に出て技術職、私は地元で病院に就職しましたが、勤めている病院は古く、度重なる増改築で構造はぐちゃぐちゃ。 偶に立…

33年間

1783年(天明3年)、浅間山は大噴火した。 噴煙は、上空1万メートルにまで達し、その時に流れ出た溶岩流は、付近の村々をあっというまに覆い尽くし、約1200人もの命が失われた。 …

海沿いの崖(フリー写真)

無数の手

昔、趣味で釣りによく行っていた時の話。 海釣りと言っても沖の方に出るのではなく、磯や岩場で釣る方だ。 その日も朝早くから支度をして車で出掛けた。 今回選んだ場所は、…

未来の夫

ある少女が、将来の結婚相手が分かると言う占いを実践してみることにした。 その占いとは、真夜中の0時、口に剃刀を咥え、水を張った洗面器の中を覗き込むと、そこに結婚相手の顔が映るとい…

マンション(フリー写真)

夢の中の会話

私は十年近く前、誘拐されたことがあります。 私を誘拐し拉致したのは同じマンションに住む女の人で、私は風呂場に閉じ込められました。 縛られたりはしなかったのですが「逃げたら…

磨りガラス(フリー素材)

ガラス戸の向こう

この事件が起きるまで、俺は心霊現象肯定派だった。でも今は肯定も否定もしない。 今から十二年前、俺は仕事の都合で部屋を引っ越すことになった。 その部屋は会社が用意したもので、…

抽象画

神谷のおばさん

俺が中学生の時、『神谷のおばさん』という有名人がいた。 同級生神谷君の母親なので『神谷のおばさん』な訳だが、近所はもちろん同じ中学の奴まで、殆ど神谷のおばさんを知っているほど有名…

叔母のCTスキャン

俺の叔母は脳腫瘍をこじらせて鬼籍に入った。 無論悲しかったが、それ以上に恐ろしい死に方だったのだと、今にしてみれば思う。 入院してから早いうちに脳腫瘍だという診断は受けてい…