銭湯の鏡
貧乏なアパート暮らしの女です。
風呂が無いので銭湯に行ってる。
いつもの銭湯が休みだったから、ちょっと遠くの銭湯に行った。
浴室には数人のオバちゃんがいて、楽しそうに談笑していた。
洗髪してると視線を感じるので顔を上げたら、自分の前の鏡に知らないお婆さんの横顔が映っていた。
横目で、こっちを見ていた(洗髪台の正面が鏡になっているので、普通なら自分の正面顔が映るはず)。
死ぬほどビックリした。ビックリし過ぎると悲鳴も出せないと初めて知った。
思わず後ろを振り向いたら、誰もいなかった。
というか、浴室には誰もいなかった。
さっきまで喋りまくってたオバちゃんたちは、みんな更衣室に移動していた。
もう一度鏡を見たらちゃんと自分の顔が映ったけど、絶対に見間違えなんかじゃないよ。
体格もポーズも違うし。白髪だったし。目が合ったし。
慌てて私も浴室から出た。
洗えたのは頭だけで体は洗えなかったけど、それどころじゃない。
怖いよ。あのお婆さん誰?
もう二度と、あの銭湯には行かない。