会いに来た子供

公開日: 怖い話

baby_silhouette_by_jaxnash-d45rtp3

彼は大学生時代にバンドを組んでいた。

担当がボーカルだったということもあり、女の子からも相当モテていた。

放って置いてもモテるものだから、かなり奔放に遊んでいたのだという。

ある日、付き合っている彼女から突然切り出された。

「子供が出来た」と。

若さゆえ未熟な彼は「育てられないから堕ろしてくれ」と平然と言った。

そのまま彼女と別れて数ヶ月が経ったが、その後どうなったのかも全く気にしていなかった。

そんなある日、いつものようにバイトから深夜に帰宅し、炬燵に入ってコンビニで買ってきた弁当を食べていた。

すると炬燵の中から「みゃうー」と猫の鳴き声がする。彼は猫を飼っていた。

猫が炬燵に入り込んでいることはよくあるので、気にせずに食事を続けた。

すると猫が炬燵の中で、もがきながら彼の足の上をよじ登ってくる。気にせずにいた。

「みゃうー」

猫が鳴く。

あれ?

ふと気になった。

何だか少し雰囲気が違う。

「みゃうー」

また、鳴く。

よく聞くとやはり違う。

「あうー」

ん? 猫ではない?

彼は炬燵の中に手を突っ込み、猫を触ってみた。ヌメっとした感触があった。濡れている。

炬燵から手を出してみると、彼の手は血で真っ赤だった。

驚いて炬燵をはねあげると、血だらけの赤ん坊が黒目だけの目でこっちを見ていたのだ。

彼はそのまま気を失った。

気がつくと朝になっていた。見ると、弁当が手つかずで残っている。

きっと疲れていたから寝てしまい、夢でもみていたのだろう、彼はそう解釈した。

顔を洗おうと洗面所に向かう。しかし、鏡に映った自分を見て愕然となった。

彼が着ていたトレーナーや顔中に、小さな血の手形がべっとりと付いていたのだ。

関連記事

ハコマワシ

封じられた愛情 ― 赤い糸に縛られた夜

赤いマフラーと届いた呪い 半年ほど前、私は人生で初めて、“本気で気味が悪い”体験をした。 それは幽霊でも怪異でもない。けれど、心の底から震えるような恐怖だった。 中…

樹木(フリー写真)

顔の群れ

私が以前住んでいた家の真横に、樹齢何十年という程の大きな樹がありました。 我が家の裏に住む住人の所有物であったのですが、我が家はその木のお陰で大変迷惑を被っていたのです。 …

玄関

入ってきた

数日前、普段通りリビングでテレビを見ていた夜、突然玄関のチャイムが何度も激しく連打されました。このけたたましい音にイラッとしながら玄関に向かいました。 我が家の玄関扉はすりガラ…

アパート(フリー写真)

花魁の絵

大学時代の友人の話。 彼は大学に合格した後、上京して一人暮らしをするために、近くに良い物件はないかと探していました。 ところが条件が良い物件はどこも契約済みで、大学よりか…

笈神様(おいがみさま)

その日の夜、私は久し振りに母に添い寝してもらいました。母に「あらあら…もう一人で寝られるんじゃなかったの」と言われながらも、恐怖に打ち勝つ事は出来ず、そのまま朝を迎える事となりました。…

ダム

迷い込んだ農家

以前付き合っていた霊感の強い女性から聞いた話。 「これまで色んな霊体験してきて、洒落にならんくらい怖い目にあったことってないの?」と尋ねたら教えてくれた。 俺が聞き伝えでこ…

白い顔の女

大学時代の友人、藤本の話をします。藤本は入学当初から賑やかで遊び好きな男でした。 その藤本が2年の春から大学の近くにアパートを借りて、一人暮しを始める事になったのです。 晴…

アイドル

封印された収録テープ

今から約20年前、私はあるテレビ番組制作会社でアシスタントディレクターとして働いていました。 当時担当していたのは、女性アイドルと霊能力者が全国の心霊スポットを訪れ、現地を検証…

古民家(フリー写真)

木彫りの仏様

母方の祖母が倒れたという電話があり、家族で帰省した時の話です。 祖母は倒れた日の数日後、うちに遊びに来る予定でした(遠方に住んでいるため滅多に来ません)。 その遊びに来るこ…

異世界

記憶が違う男

毎年、夏になると、地元に帰省して高校時代の仲間5人で集まっている。 今年も例年どおり集まったのだが、ひとつだけ、どうにも説明のつかない出来事があった。 誰かに聞いてもらい…