入ってきた

公開日: 怖い話

玄関

数日前、普段通りリビングでテレビを見ていた夜、突然玄関のチャイムが何度も激しく連打されました。このけたたましい音にイラッとしながら玄関に向かいました。

我が家の玄関扉はすりガラス製で、外にいる人の大まかな形はわかるはずです。しかし、その時はいつもと違って、どんな人影も見えませんでした。

「おかしいな」と思いつつも、扉を開けるとそこには誰もおらず、庭や通りも人影はなく静まり返っていました。

子供のいたずらだろうかと特に気にせずリビングに戻ろうとしたその時、母が居間の入口で不機嫌そうに私を睨んでいました。

「あんた、さっき玄関開けちゃったでしょう?」と母に言われ、戸惑いながらも「開けたけど?」と返答すると、母は更に呆れたようにそっぽを向きました。

その後、テレビの続きに目を向けたものの、頭の片隅には母の言葉が引っかかっていました。

やがて夕食の時間が近づき、キッチンで料理をしている母から美味しそうな匂いがしてきました。親子丼だろうと勝手に想像しながら、冷蔵庫から緑茶を取り出し飲もうとしたその時、母が何かをブツブツと言っているのが耳に入りました。

はっきりとは聞き取れませんでしたが、「あんたが開けたから入ってきた」というようなことを言っているようでした。

夕食を食べ、その日は何もなく過ごしましたが、翌朝、目覚めが異常に悪く息苦しさを感じました。隣で寝ているはずの弟が、私の腹を圧迫していることが原因でした。

弟にその理由を問いただすと、彼は「お前が何かを家に入れたせいで、一晩中それが私の部屋にいた」と言い出しました。

それは全くの意味不明で、私は混乱しました。さらに母は「あんたが開けたからそれが入ってきた。困るんだよ」と非難しました。

その後も家の中には不可解な現象が続き、私は精神的に追い詰められるようになりました。

結局、その事件が原因で私は家を出ることを決意しました。家族にとっても、私にとっても、居場所ではなくなってしまったからです。

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