姉の霊

公開日: 心霊体験 | 怖い話

暗い部屋(フリー写真)

それは私がまだ中学生の時でした。

当時美術部だった私は、写生会に行った時に、顧問の若い女の先生と話をしていました。

その頃は霊が見えなかった私は、他人の心霊体験に興味津々でした。

だからその時も、いつもと変わらぬ感覚で私は先生に聞いたのです。

「先生は心霊体験したことないん?」

すると先生は所謂『視える人』らしく、少し考えてから私に話をしてくれました。

もう6年前からですが、先生の家に一人の幽霊が居るのです。

初めてその霊に会った時は、さほど気にしなかったそうです。

普段から視えるので『あ、いるな』程度。

中学生くらいの女の子で、ワンピースを履いていて、廊下の奥の方でうつむいて立っていました。

同じ日に、座敷で座っているのと、階段の踊り場の所で座ってじっと下を見ているのを目撃しました。

先生も流石に何度も見るので多少怖くなり、母親に容姿などを話してみたそうです。

すると、母は意外な顔をしてこう言いました。

「それ、この家を建てた時の設計士さんの娘さんだ。

設計中に事故で亡くなって、亡くなるちょっと前に建設中のこの家を見に来たから」

それから先生は、少女の霊を時々見るそうです。

その設計士さんに言おうと思ったらしいのですが、なかなか連絡が取れないのだそうです。

私はその話を聞いて心臓が止まりそうになりました。

怖かった訳でもないんです。

ただ、直感で思いました。

その少女は6年前、交通事故で亡くなった姉だと。

その連絡が取れない設計士は5年前に自殺した父だと。

私は何より姉が成仏していないことがショックでした。

早く迎えに行ってあげなければいけないと思いました。

先生に事情を説明し、私は翌日すぐに先生の家に行きました。

母親はついて行こうとしたのですが、どうしても断れない仕事があり、私に全てを託して見送りました。

家に着くと、先生が迎えてくれました。

先生がよく姉の霊を見るという座敷に通されました。

日があまり当たらなくて、薄暗い部屋でした。

こんな寂しい所に姉は一人でずっと居たのかと思うと、気付かなかった自分にとても腹が立ちました。

先生は私を一人にしてくれました。

私は必死に姉に語りかけました。

「長い間一人ぼっちにしてごめんね。

気が付かなくてごめんね。

もう迎えに来たよ。一人ぼっちじゃないよ。

さあ、私と帰ろう。家へ帰ろう」

途中から私は泣いていました。

姉は私をどう思っているのだろうか。

優しかった姉に何とひどい仕打ちをしてしまったのかと。

暫く泣いていると、誰かが私の肩を優しく叩きました。

振り返ると、全く知らない恐ろしい顔をした少女が立っていました。

少女はニンマリ笑って呟きました。

「連れてってくれるの?」

まだ少女が私の後ろに居ることより、本当の姉が成仏したかどうかが心配です。

関連記事

考古学の本質

自分は某都内の大学で古代史を専攻している者です。 専攻は古代史ですが、考古学も学んでいるので発掘調査にも参加しています。 発掘調査なんてものは場合によっては墓荒らしと大差な…

葬列

ある日、AさんがBさんの家で飲み会をし帰りがすっかり遅くなってしまいました。 夜道を歩いていると向こうから何やら行列が見えます。その行列の人たちは喪服を着ており葬式だということが…

白い女の話

自分は小中高と、全寮制の学校に通っていた。 凄いど田舎で、そこそこ古い学校。文字通り山の中にある。 狸もよく見かけたし、雉もいた。 裏庭に生徒が何人か集まり、許可を取…

繰り返す家族

小三のある男の子が体験した話だ。 男の子はその日、学校が終わって一旦帰宅してから、仲の良い友達と一緒に近くの公園で遊ぶことにした。 夕方になるまでかくれんぼをしていたら、珍…

妖怪カラコロ

専門学生の頃に深夜専門でコンビニのアルバイトをしていた時の話。 ある日の午前1時頃に駐車場の掃除をしていると、道路を挟んだ向こう側の方から何か乾いた物を引き摺るような、 「…

遺言ビデオ

別れのメッセージ

会社の同僚であるKが亡くなった。 彼はフリークライミングを趣味とし、非常に熱心に取り組んでいた。休日があれば、どこかの山か崖へと向かう日々で、私とも親しい関係にあり、彼の家族と…

駅(フリー写真)

ホームの下の窪み

京王線は現在、全駅禁煙になっていますが、まだ禁煙になっていなかった頃の話です。 当時、府中駅の近くで働いていて、残業やら何やらで終電に乗る事になったんですよ。 喫煙場所でタ…

夜道

夜道での不吉な遭遇

中学生だった私は、ある晩、塾を終えて家路についていました。星空を眺めながら、のんびりと自転車を漕いでいたのです。 時刻は22時を過ぎており、家ももうすぐというときでした。 …

ある蕎麦屋の話

JRがまだ国鉄と呼ばれていた頃の話。 地元の駅に蕎麦屋が一軒あった。いわゆる駅そば。 チェーン店ではなく、駅の外のあるお蕎麦屋さんが契約していた店舗で、『旨い、安い、でも種…

鳥居(フリー素材)

カキタ様

俺が田舎に転校していた頃の話。 俺の家庭は当時ごたごたしていてさ。それが理由で学校とか行きづらくなっちゃって。 友達は「気にすんなよ、一緒に遊ぼうぜ」と言ってくれるんだけど…