潮止め様の膳が濡れる朝
嫁いだ干拓地の家には、海に向いた雨戸を一枚だけ閉めない決まりがあった。義母は膳を数えるとき、私の顔を見ない。塩の皿は朝ごとに湿り、腕時計には覚えのない四千歩が残…
怖いだけじゃない心霊体験もある——亡くなった家族からのメッセージ、不思議な助け、再会のような感覚。心霊ちょっと良い話は、怖さの中に温かさが宿るジャンルです。怖いだけでは終わらない、亡き人の想いが残る話を200話以上収録しています。
嫁いだ干拓地の家には、海に向いた雨戸を一枚だけ閉めない決まりがあった。義母は膳を数えるとき、私の顔を見ない。塩の皿は朝ごとに湿り、腕時計には覚えのない四千歩が残…
亡くなった祖父が夢の水族館へ連れて行く夜。証明写真に並んだ見覚えのない二人。崖でナイフを押さえた手。怖さより温かさが残る心霊ちょっと良い話を14本選び、夢・かた…
去年の10月、飼ってもいない犬の首輪が、鍵をかけた部屋の玄関に置かれていた。前の晩まで、それは車で1時間半離れた祖母の家の納戸にあったはずだ。名前を彫る板には何…
築43年の団地に着任した41歳の管理員が、空き住戸の名札を作り替えたとき、古い紙の裏に赤い鉛筆で書かれた数字を見つけた。名札の裏の数字は住民ごとに違い、数字の大…
売りに出る前の空き家で寸法を測っていると、廊下の長さと各部屋の内寸が、どうしても畳一枚半ぶん合わなかった。畳の上を白く細いものが這い、私の問いかけに頷くように曲…
異世界の駅で出会ったのは、もういないはずの親方だった。昭和の終わりの冬、雪深い山あいの無人駅で最終の汽車を逃した若き建築職人が、時刻表にない真夜中の一両汽車に乗…
霧に閉ざされた夜の磯で帰り道を失った私を導いてくれた、白い犬の不思議な話。濡れていない毛、聞こえない足音、砂に残らない足跡。そして十年前の時化の晩、主人を救って…
七十を過ぎて郷土史を学びはじめた私が、市民講座の見学で訪ねた山あいの冬季分校。止まったはずの柱時計が時を刻み、撮った写真の中でだけ机がひとつ増えていた。校舎の中…
雪深い町で運転代行を三十年続けてきた私が、ある二月の底冷えする夜に乗せた、古めかしい白髪の老人。久しく動かぬはずの古い車、峠の奥にともる門灯、握らされた古い紙幣…
梅雨入り前の北陸へ一人旅に出た若い看護師が、霧に包まれた古道で出会った、もう何十年も前に火事で焼け落ちたはずの茶店と着物姿の老婆。一夜のタイムスリップとも思える…
夏祭りの帰り道、田んぼの畦道で見知らぬ若い女性に「脇道に入ってはいけません」と声をかけられた小学五年生の私。翌朝、その脇道で別の少年が事故に。あの女性は誰だった…
地方の老舗書店で働いて三十年。閉店間際にかかってきた予約電話の主は、亡くなったはずの少女と同じ名字だった。本屋の取り置きをめぐる、ほんのり怖い不思議な話の体験談…
北海道の山で遭難し、意識を失いかけた夜、誰かの手が体をさすっていた。後日、救助隊から聞いた話と、雪板に残されたものの意味が、今も忘れられない。不思議な体験談。…
出張帰りに最終新幹線を逃し、群馬のローカル駅で夜を明かそうとした夜、行き先表示に『終点』とだけ書かれたバスがやって来た。乗り込んだ私が降りた先は、亡くなったはず…
地域誌のカメラマンが取材で訪れた廃館前夜の映画館で、最後列に座る着物の老婦人を目撃する。客が全員帰ったはずの劇場で、床に落ちていた古い半券に書かれた映画のタイト…
十歳の夏、瀬戸内の小さな島で毎朝会った水色のワンピースの女の子。別れ際の言葉の意味を、二十年近く経って祖母の葬儀の夜にようやく知る、海辺の心霊ちょっと良い話。…
一人旅で訪れた秩父の山奥の温泉宿。深夜の露天風呂に浸かっていると、穏やかな老人が先客としていた。翌朝、女将に話すと不思議な答えが返ってきた。…
父が亡くなって三年。漁師を継いだ私は、ある秋の夕方、防波堤で父に似た声を聞いた。「明日は出るな」——天気予報は晴れだったのに。…
深夜に見知らぬ老婆から電話がかかってきた。相手は俺のフルネームも母の旧姓も知っていた。そして「あなたのお兄さんに頼まれた」と言った。…
亡くなった祖母の家で見つけた、曾孫のために縫いかけの甚平。遺品整理のたびに進む縫い目と、漂う金木犀の香り。祖母が遺したものとは。…
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