ショートカット

Warp

小学校の頃の体験です。

私が通っていた校舎は4階建てでした。

校舎の両端にそれぞれ階段があって、東階段と西階段と呼ばれていました。

東階段部分の校舎は3階までしかなく、4階部は西階段からのみ行ける構造でした。

低学年の私の教室は東階段の脇でしたので、4階の音楽室に移動するのが面倒臭くて本当に嫌いでした。

その日も、音楽の授業のために4階まで行こうとしていました。

東階段を3階まで上ってから、3階の廊下を西階段まで歩き、4階に行くつもりでした。

ところが、いざ東階段を3階まで登ってみると、もう一つ上に行く階段があるんです。

東階段部分には4階部分は存在せず、いつもは階段なんてないのですが、不思議に思いつつも上って行くと、自分が西階段部分の4階にいることに気づきました。まさにワープでした。

そのときの私は不思議というより「こんなショートカットできるんだ、ラッキー!」という感情を持ったのを今でも覚えています。

ここまでだと、勘違いで落ち着きそうな話です。

でも、その後も私は音楽の授業の前には「今日はショートカット使えるかな」と祈るような気持ちで東階段を上がるようになりました。

そして、大体3回に1回は東階段から西階段にワープしていました。

今でこそありえない話と思いますが、当時の自分は出来て当然と思ってたんです。

小学校の中学年になって東階段の2階近くに教室が移動してからは、ショートカットの必要もなくなったので起こらなくなりましたが、あの体験は本当にワープしていたのか、自分の心がそう見せていたのか…。

今でもたまに思い出します。

関連記事

鬼が舞う神社

叔父の話を一つ語らせてもらいます。 幼少の頃の叔父は、手のつけられない程の悪餓鬼だったそうです。 疎開先の田舎でも、畑の作物は盗み食いする、馬に乗ろうとして逃がすなど、子供…

天井裏

不可解な手紙

去年の暮れ、私が勤める編集プロダクションに一通の手紙が届きました。私宛ての名指しの手紙で、エッセイの添削と執筆指導を求める内容でした。 初めての事態に不信感を抱きながらも、返信…

宇宙は数字でできている(長編)

不思議な体験をした。 簡単に説明すれば、幽体離脱をして宇宙を覗いたら、螺旋状に永遠に伸びる、うねうねとした膨大なカラフルな数字から成る道を高速スピードで飛んでいた。 あまり…

雪に覆われた山(フリー写真)

雪を踏む足音

初雪の山は登ってはいけない。 そういう話を仲間内でよく聞いていたが、単に滑りやすくなるからだろうと軽く捉えていた知り合いは、命の危険に晒された。 彼は登山歴3年くらいの経験…

さっきの子

今年の夏休み、大学の友達と3人で四国へ旅行に行った時の話。 ナビも付いていないオンボロ車で、山中で迷ってしまい、どうにか国道に出る道を探し回っていた。 辺りも薄暗くなってき…

教室(フリー素材)

消えた同級生

小学2年生の時の話。 俺はその日、学校帰りに同じクラスのS君と遊んでいた。 そのS君とは特別仲が良い訳ではなかったけど、何回かは彼の家にも遊びに行ったし、俺の家に招いたこと…

抽象的(フリー素材)

親父の予言

数年前、親父が死んだ。食道静脈瘤破裂で血を吐いて。 最後の数日は血を止めるため、チューブ付きのゴム風船を鼻から食道まで通して膨らませていた。 親父は意識が朦朧としていたが、…

公園(フリー素材)

謎のおじいちゃん

今になっても一体何だったのか解らない謎な体験です。 小学5年生の時でした。日曜の夕方、通っていた小学校の校庭の砂場で弟と遊んでいました。 段々と辺りが暗くなってきて、そろそ…

帰り道

足が欲しい

大学時代、一つ上の先輩から聞いた話。 小学4年生の頃、学校からの帰り道にいつも脇道から出てくる中年の男性がいた。 しかも常に彼女がその脇道を通りかかる時に出てきて、ぼんやり…

手を繋ぐ親子(フリー写真)

おとうさん、こっち!

お隣に、両者とも全盲のご夫婦が住んでいらっしゃいます。 この話は、ご主人から茶飲み話に伺ったものです。 ※ ご主人は16歳の時に、自転車事故で失明されたそうです。 当然…