
2001年12月23日、午前0時を過ぎた頃のことです。
グリーンランドのトゥーレ空軍基地にある管制本部は、突如として一機の未確認飛行物体が接近していることに気付きました。
その情報を捉えたレーダー管制官は、緊張した声で叫びます。
「未確認機接近! 緊急配備願います!」
当時の現地は、極限とも言える天候に見舞われていました。
視界は雪でほぼ閉ざされ、気温はマイナス52度。
瞬間最大風速は56キロに達し、外部での活動は危険を伴う状態でした。
それでも一時間ほどは、スクリーン上にその機体の存在が確認されていたのです。
しかし突然、何の前触れもなくその飛行機はレーダーから姿を消しました。
※
吹雪がようやく弱まったのは、夜明け前のことでした。
それを待ち、基地は捜索隊を編成。
悪天候の中、隊員たちは凍てつく氷原へと足を踏み出しました。
出発からおよそ二時間後、彼らは問題の未確認機を発見します。
場所はトゥーレ空軍基地から直線距離でおよそ12海里(約22キロメートル)離れた氷河の上でした。
そこには、胴体着陸をした一機の爆撃機が静かに佇んでいたのです。
※
その機体は、かつてアメリカ空軍が運用していた「ボーイングB-50D スーパーフォートレス爆撃機」。
機体番号「キングバード50」。
驚くべきことに、この爆撃機は記録上、53年前――つまり1948年に出撃したまま、行方不明となっていたものでした。
乗組員は全員死亡していました。
けれど、彼らの遺体は朽ち果てておらず、まるで時間が止まっていたかのように、当時の軍服と装備のまま、整然と機内に残されていたのです。
しかも機内に設置されていた時計は、到着予定時刻をわずか2時間過ぎていたのみ。
53年という年月を無視するかのように、まるで「予定より少し遅れて着いただけ」とでも言いたげな静けさが、その氷原にはありました。
※
この事件は、公式には「旧式軍用機の奇跡的発見」として報じられました。
しかし、なぜ機体が53年の歳月を超えて飛行し続け、何事もなかったかのように着陸できたのか。
その真相は、今もなお闇の中にあります。
ただ一つだけ確かなことがあります。
それは、時空の歪みが現実に存在し、我々の常識を超えた世界が確かにこの地球上に広がっているのかもしれない、ということです。