次の人へ
転職先のデスクの引き出しに残っていた一枚の付箋。「次の人へ」と書かれたその下には、五つの項目があった。最初は引き継ぎメモだと思っていたが、項目は次々と現実になっ…
転職先のデスクの引き出しに残っていた一枚の付箋。「次の人へ」と書かれたその下には、五つの項目があった。最初は引き継ぎメモだと思っていたが、項目は次々と現実になっ…
仕事の疲れで訪れた山間の温泉旅館。女将はチェックインで「お帰りなさいませ」と言い、引き出しには私の好みを記したメモが。翌朝、女将が言った「夜のお散歩が恒例でいら…
新潟の雪深い集落には、隣り合う家の押入れの奥に板戸を切っておく決まりがありました。戸は二度叩き、返事があってから開ける。誕生日の写真に写り込んだ青白い女の顔を拝…
十条の斜面に建つ柊荘には、どの部屋にも床から三尺の高さに小さな穴がありました。覗くといつも真っ赤です。壁紙だと思っていたその赤の正体に気づく怖い話です。建物はも…
秦野の丘の分譲地で、私はあの家の二階の電気を一度も点けませんでした。八月の蒸し暑い夜、階下で玄関の鍵が回る音がします。忍び足で階段をのぼってくる気配から、私は屋…
商店街の奥の椅子に座る年寄りは、通る人を見て食べ物の名を一言だけ呟きました。直前に食べたものを当てているのだと思っていた私は、呟かれた人の記録を追ううちに、この…
紀伊の山奥の集落へ向かう昼のバス。子どもがぐずったので途中の停留所で降り、定食屋に入った十分後、テレビはそのバスの事故を報じました。妻がこぼした一言の本当の意味…
昭和六十年の夏、川原に建つ見世物小屋で木戸番をしました。祖父に言われたのは、釣りを先に渡せという一言だけです。幕の内から響く拍手、濡れる地面、減っていく矢印、十…
町に出回った一枚のチラシが、パンは危険な食べ物だという奇妙な統計を並べていた。母が、隣人が、商店街が少しずつ変わっていく。数字の正体に気づいたとき、本当の目的が…
終電を逃して乗った深夜の特急に、灰色のコートを着た痩せた男が乗ってきました。年齢当ての男は、乗客の歳を次々と言い当てていきます。けれど奥の席にいた女性の誕生日を…
母の四十九日を終え、五年ぶりに実家へ帰りました。書斎の机の引き出しにあったのは、去年私が贈ったカレンダーを切り刻んだ日付の紙片です。十三枚のうち、一枚だけが上下…
念願の新居で開いた引っ越し祝い。撮った記念写真の押し入れの隙間から、青白い顔の見知らぬ女が私たちを覗いていました。怯えて訪ねた霊能者は「これは心霊写真ではない」…