山の女の子
昔、私が小学3年生のとき、毎年夏になると両親は私を祖母の家に連れて行っていました。その町は都心から離れたベッドタウンで、まだ発展途上の田舎でした。周囲は広い田んぼや畑、雑木林が広がっており、隣の家までは数十メートルもの間隔がありました。
私には同年代の友人がおらず、訪れるたびに自然の中を一人で駆け回るのが日常でした。小学校に入学する前の夏、いつものように遊んでいた私は、新たな冒険として普段は避けていた山へと足を踏み入れました。祖母や両親からは山は危険だから近づかないよう言われていましたが、その日の退屈がそれを上回りました。
山の中はひんやりとして薄暗く、少し恐ろしい雰囲気が漂っていました。私がさらに深く入っていこうとしたその時、突然声がしました。
「一人で行っちゃだめだよ」
振り返ると、着物を着た同年代の女の子が立っていました。彼女はなぜか私に親しげに話しかけ、
「山の中は一人で行っちゃ駄目だよ。帰らなきゃ」と忠告しました。
私は彼女の警告を無視して進もうとしましたが、彼女に手を掴まれました。彼女の手は冷たく、私はその場で止められました。
「……なら、私が遊んであげるから。ね? 山に行っちゃ駄目」と彼女は提案しました。退屈を感じていた私は彼女の提案を受け入れ、その夏の間、毎日彼女と遊びました。
彼女との遊びは山の近くで、主に鬼ごっこや木登りでした。彼女はときどきお手玉やまりを持ってきて、それで遊びました。私は彼女がどこの子なのか尋ねましたが、彼女は決して自分の名前や家については教えてくれませんでした。
あの夏が終わり、私は彼女との別れを惜しんでいましたが、彼女は「もう遊べなくなるかもしれない」と言いました。理由を尋ねても、「わからないけど」としか答えてくれませんでした。最後の日、彼女は私に再び会えることを約束しましたが、その後彼女と会うことはありませんでした。
数年後、祖母の家に近い山が開発された時、小さな古びた社が見つかりました。その社は彼女と遊んだ場所の近くにありました。私はその女の子が実は何者だったのか、今でも不思議に思っています。彼女のことを夢に見ることがあり、そのたびに懐かしい気持ちになります。