イタチの仕業

Mustela_nivalis_-British_Wildlife_Centre-4

祖母の葬式の晩の事。

田舎の古い屋敷で壁3面ガラス張りの小さな和室に1人だった。長い廊下の突き当たりの座敷には祖母が安置されていた。

裏の山には江戸時代からの一族の墓が並び、近くの公園には「城主ですがここで虐殺してごめんなさい、かわりにお社を立てます、許してください」みたいな木札が立っていた。

窓にカーテンもないので、山の上からのサーチライトの光が部屋の壁にあたって不安な影を踊らせていた。

そのとき廊下からひきずるような足音が聞こえてきた。

親戚や客は屋敷の表側の座敷にいるはずなのに、誰か間違えて入ってきたのか。しだいにその足音に合わせてふすまがブワンブワンと波打ちだした。ガラスもビリビリ共振して、部屋全体が揺れて舟の上みたいな感じだった。足音は部屋の前まできたが、また行きつ戻りつしながら消えるまでずいぶん時間がかかった。

とても襖をあける勇気はなかった。

表屋敷にいた家族親戚に話すと、裏にいった人はだれもいなかった。ただこの家には昔から野生のイタチが住んでいて、夜に歩き回る、大きな低い声でうなる、稀に人間を傷つける事もあるので、襖などは不意に開けてはいけないとの事。

どう考えてもイタチの仕業じゃないと思うんだ。

関連記事

山

山に住む神様

学生時代、週末に一人でキャンプを楽しむことがありました。 金曜日から日曜日にかけて、山や野原で寝泊まりするだけの単純なキャンプです。友達のいない私は、寂しさを自然の中に紛れ込ま…

シドニー

前世の地

去年、オーストラリアのケアンズ郊外をレンタカーで走っていた際、奇妙なデジャヴを感じました。『ここ、来たことがあるような…』と思いながら、海岸へと続く道を曲がりました。独特のロータリー…

もどれと言った女性

もどれ

それは、まだ母が幼かった頃のことです。 当時、母は家族とともに、ある団地に暮らしていました。 その団地で体験した、今も語り継がれる奇妙な出来事があります。 ※ …

夜の繁華街

時空を越えた入れ替わり

最近、ふと思い出した話がある。 霊媒体質の人には、まれに意識が入れ替わることがあるらしい。 だがこれは、ただの憑依ではなく、「意識がタイムスリップして入れ替わった」としか…

線路(フリー素材)

北陸の無人駅

昔、北陸の某所に出張に行った時の事。 ビジネスホテルを予約して、そのホテルを基点にお得意様を回る事にした。 最後の所で少し飲んで、その後ホテルに戻る事にした。 ※ ホテ…

川辺の蛍(フリー素材)

我が家に伝わる名字の由来

オカルトかどうか分からないけど、自分の名字の由来の話。 田舎の方に行くと、地域に同じ苗字の家が密集している集落はよくあると思う。 俺の住んでいた地域も2、3種類の名字が大半…

運が良いね

今から話すお話は3年前、僕がまだ高校2年生だった時の話です。 その頃、僕はとあるコンビニでバイトをしていました。そのバイト先には同い年の女の子と、50過ぎくらいの店長、あと4人程…

商店街

異界の午後

これは私が8歳の頃に体験した不思議な話です。 私の家は商店街の魚屋で、年中無休で営業していました。 ある日、目覚めると家には誰もいませんでした。店も開いており、通常ならば…

駅

時間の狭間で

この出来事は小学校に入学する前のことです。その日、私は母に連れられ、遠縁の親戚を訪ねるために駅に来ていました。初めて見る色とりどりの電車に目を奪われ、気がつけば、人波に流され、母の手…

時空

時空トンネル

数年前、子供の頃に不思議だった出来事が繋がった話です。 5才くらいの記憶で、その頃はよく畑仕事に兄と付いて行っていたんです。 畑から数十メートル離れた場所に、大きな岩が何個…