亡くなったはずの役者さん

paralleee

私は昔、ある役者さんの熱狂的なファンでした。

その役者さんが出ている作品を全て見る事は勿論、雑誌を買い集めたりと、私の生活は彼と共にありました。

しかし役者さんは、ある日病気のために休養。

復帰を望んで待っていましたが、そのまま病気で亡くなってしまいました…。

彼の死を知った私は何も出来なくなり、とうとう半ば鬱の様な状態になってしまい…。

不安定に陥ると外でも家でも泣き崩れ、本当に今思うと愚かですが「役者さんが死んだのはお前らのせいだ」と、事務所に中傷の電話やファックスを何度も送るなどしていました。

次第に私は『なんとかして役者さんを蘇らせる事は出来ないだろうか』と、オカルトに嵌まり始めます。

悪魔だの精霊だの、交霊術やお寺参りだの、色々な事を試したのですが上手くいかず。

ある日ブチギレた私は、『もう絶対に死んでやる』と、半ば自棄で住んでいるマンションの屋上へ上がりました。

その夜は大きな青白い満月が浮かんでいるとても美しい星空で、少し頭が冷えた私は泣きじゃくり「返して!私が死んだら代わりに役者さんを返して!!うわあああ~ん!!!」と叫ぶもどうしようもなく。

結局、私はマンションの柵を越えて、そのまま頭から飛び降りてしまいました。

…というここまでの記憶はあるのですが、飛び降りたその瞬間に私は目覚め、気が付くと家のベッドに居ました。

妙に鮮明な夢だったなあと思いながらテレビを点けると『いいとも』がやっており、ああもうこんな時間だと思っていると、奇妙な事に気づきます。…日付がおかしい。

私が飛び降りたのは確かに11月14日だったのですが、今の日付も11月14日。

次第に夢のような感覚から覚めてきた私は、色々おかしい事に気付きます。

もしあれが夢だとしても、他の昨日の記憶が私には全く無く、床に就いた記憶も無い。

そしてもう一つ。今まで自分がやってきた事を思い出して酷い不快感に陥った事。

それから私は今まで役者さんに捧げていた情熱もすっかり失せて、役者さんに関する DVDや雑誌、グッズを全て売り払いました。

あれだけ愛していた役者さんでしたが今は全く興味が無く、あの頃の私は黒歴史です…。

それからしばらくは心を病む事も無く健やかに暮らしていたのですが、テレビを見ていた時、あの役者さんが普通にトーク番組で質問に答えていました…。

何がどうなっているんだと混乱しつつインターネットで調べてみると、病気の事などは一切書いておらず、普通に御存命中のようで、私はモニターの前で狼狽してしまいました。

あれから結構な頻度で役者さんをバラエティ系の番組等で見るようになったのですが、役者さんはそういった事で表に出るのは嫌いな人だったはずなのです…。

ところが、そういった私の手に入れた情報の記述はネット上から無くなってしまい、食い入るように見ていた 2chの『ご冥福をお祈りします』という役者さんスレの沢山の書き込みも見当たらない。

全部夢なんだと納得してしまえば良いのだし、実際1年経った今となっては夢のような記憶となりつつあるのですが、やはりどうにも納得いかない事が多く、たまに恥ずかしい黒歴史もあって一人モヤモヤしています…。

関連記事

夜道(フリー写真)

不可解な車の傷

飲み会で後輩から変な話を聞いた。 車の話をしていたのだが、最近、車に不可解な傷がついたとか。 バイト帰りの深夜、他に走る車もない道路で信号待ちをしていたところ、突如後ろか…

不思議な森(フリー写真)

異界への石碑と未知の世界

私の名前はリョウです。 私が高校時代に経験した、忘れられない恐ろしい体験を話します。 当時高校生だった頃、私たちはよく学校の裏山で遊んでいました。 その山は古い神社…

工場

不可解な扉の向こう

幼い頃の私には忘れられない体験があります。それは幼稚園の頃、よく遊びに行っていた祖父の家で起きた出来事です。祖父の家は関東のどこか、田舎でも都会でもない中途半端な場所にありました。そ…

お葬式

数年前、深夜の0時頃に、その頃付き合ってたSから電話が掛かってきた。 切羽詰まったような声と口調で、話の内容がいまいち理解出来ない。 外にいるみたいなので、取り敢えず家まで…

インフルエンザウィルス(フリー素材)

高熱とアリス症候群

去年の年末、俺がインフルエンザで倒れていた時の話。 42度という人生最高の体温で、意識もあるのか無いのか分からない状態で俺は寝ていたのだが、尿意に襲われてふらふらと立ち上がった。…

庭の地面

記憶に刻まれた「一度目の死」

物心がついた頃から、私はこう語っていた。 「僕は一回、死んだんだ」 幼い子どもの妄言と思われるかもしれないが、私は本気だった。というより、その“死んだ記憶”は今でも鮮明に…

ビルの隙間

去年の夏休みの事。 夜中にコンビニへ行き、いつも通る道を歩いていると、ビルとビルの間に1メートルくらいの隙間があるのを発見した。 俺は『こんな所に隙間あったっけ?』と思った…

田舎の風景(フリー写真)

ダッガコドン

去年、私は仕事で失敗が続いていた。 厄年は来年なのに何故だろうかと調べた末、前厄という存在を始めて知った。 すぐに会社に三連休を貰い、遠い田舎の実家まで帰省をすることに。 …

きらきらさん

差し障りがあるといけないので、時と場所は伏せて書きます。 そこの施設内で、度々動物の惨殺死体が発見されるのです。 そこにいた子供に聞くと「きらきらさんがやった」と言います。 「きらき…

マンション(フリー写真)

夢の中の会話

私は十年近く前、誘拐されたことがあります。 私を誘拐し拉致したのは同じマンションに住む女の人で、私は風呂場に閉じ込められました。 縛られたりはしなかったのですが「逃げたら…