チクリ

公開日: 不思議な体験 | 怖い話

4f2c58c2963d8bbefa941ba55f8e4e82

大学に通うために上京してすぐのことです。

高田馬場から徒歩15分ほどにある家賃3万円の風呂なしアパートに下宿を始めました。

6畳でトイレ、キッチン付きだったので、その当時としては割りと安かったと思います。

家具も家電製品もなく、布団とダンボール詰めの衣類だけの何にもない部屋で、最初の一月は自炊をして我慢していました。

入居翌日、暇を持て余し部屋をうろうろ歩き回っていると、足裏に “チクリ” と痛みを感じました。木の棘か畳のささくれでもあるのかと確認してみましたが、特に何もありません。

数日後、部屋の中を移動している時、また足裏に “チクリ” と痛みがありました。

今度は正確な場所が特定できたので、畳に顔を近づけてじっくり調べましたが、残念ながら何も見つけられませんでした。

その後も何度もその “チクリ” にやられました。

部屋の中央から少しずれた位置にそのポイントはあり、いつもは気をつけているのですが、たまに踏んでしまうのです。

ある日、慣れない大学生活にストレスが溜まり、いらいらしている時に、また “チクリ” ポイントを踏んづけてしまいました。

やり場のない怒りが湧き起こり、足を大きく上げると、そこを「ドスン」と思いっきり踏みつけました。

すると、踏みつけた足に激痛が走り、足の甲がみるみるうちに血に溢れました。痛みが凄くてしばらくは動けませんでした。ようやく足を上げると、どうやら足の裏から甲まで貫いて何かが刺さったようです。

ただ、肝心の刺さったものが見当たりません。足の中に入り込んでいるようでもありません。

片足で跳ねながら、なんとか近所の病院まで行って治療してもらいました。やはり何か鋭利なものが足裏から足の甲まで貫通していました。

医者に何度も怪我の理由を聞かれましたが、私も答えようがなく、相当不審がられました。

その後、その “チクリ” ポイントには「トラノオ」という観葉植物を置いて、絶対に踏まないように気をつけていました。遊びに来た友人は皆んな邪魔がっていましたが。

2年後、契約の更新時期に引っ越すことにしたのですが、ふと気になって畳をひっくり返して例のポイントを確かめてみました。

畳の下は板張りになっているのですが、例の位置に掘り込みがしてあって、出刃包丁を 4分の1くらいのサイズにした、ミニチュア包丁がぴったりとはめ込んでありました。

サイズは小さいのですが、造りは丁寧なもので、高級なものに見えます。

その刃は錆びたように赤茶けていて、生臭い臭いがしました。

関連記事

おじいさん

深夜の訪問者と、残されたメッセージ

会社の同僚が亡くなってから、およそ一年が経ちました。 同僚と言っても、彼は五十歳を過ぎた大先輩でした。 昨年三月、小さな胃癌が見つかり、「早めに取ってしまおう」ということ…

抽象画

神谷のおばさん

俺が中学生の時、『神谷のおばさん』という有名人がいた。 同級生神谷君の母親なので『神谷のおばさん』な訳だが、近所はもちろん同じ中学の奴まで、殆ど神谷のおばさんを知っているほど有名…

自動ドアが認識しない人間

大学二年の夏休みに入る少し前からだったかな…。 コンビニやらスーパーやらの入り口、とにかく全ての自動ドアが俺に反応しなくなった事があった。 それまでは普通に入ることの出来て…

死者と会う方法

日本で2003年に『黄泉がえり』という映画が放映された。これは死者が蘇るというタイトル通りの話ではあるのだが、イギリスには実際に死んだ者と会える方法があるという都市伝説が存在する。 …

版画(フリー素材)

婆ちゃんの戦時中の話

昔、婆ちゃんから聞いた戦時中の話を一つ。 第二次世界大戦中、うちの婆ちゃん(サノ)が10歳の頃の話です。 ※ 婆ちゃんはお姉さんと避難のために親元を離れ、田舎の遠い親戚の家に…

神奈川県某駅の駅ビル

小学校入るくらいまでの体験。 神奈川県某駅の駅ビルで、階段やエスカレータなど使わずに、3Fから4Fにワープした。駅との連絡口が3Fで、決まったルートを歩くと4Fに着いてる。 …

子供にしか見えない

その友人親子は夕方に近くの公園まで散歩をするのが日課でした。 友人の仕事の関係上、いつも日暮れ前には帰宅していましたので、夕食ができるまでの間に4歳になる息子と毎日遊んであげてい…

幸福の妖精

リクルートスーツを見る季節になると、毎年思い出すお話。 俺は就職活動してた。バブル崩壊後の冷や水ぶっかけられた氷河期世代あたりだと思ってくれ。俺は理系で一応研究職希望だったけど、…

猫

猫の最後のお別れ

20年前のある夏の夜のことです。私たち兄弟が夏休みを利用して祖父母の家に泊まりに行っていたときの話です。我が家にはとても可愛がられていた猫が一匹いましたが、その日は夜遅くまで帰って来…

クレーマーの家系

田舎に伝わる、ある家系の噂

これは、あるクレーマーの家系にまつわる、恐ろしくも哀しい話である。 私が働いている店舗によく来るクレーマーがいるのだが、その人物について町中に広まっている噂を耳にしたとき、あま…