繋ぎ目

Parallel_Postulate

中学生の頃の夏の話。

そろそろ夏休みという時期の朝、食事を終えてやっとこ登校しようと、玄関に向かったんだ。

スニーカーのつま先を土間でとんとんと調整しながら引き戸の玄関をガラガラって開けたら、そこが玄関だった。

玄関から出たはずなのに、目の前には土間があり、さっきまで自分がいた玄関がそこにある。

不思議に思いながらも、遅刻するから急ごうとそのまま後ろを振り向いたら、そこも玄関。うちの玄関と玄関が引き戸一枚で繋がってる状態。

そんな訳が解らない状態に不安になって、2つの土間を行き来しながらどうしたらいいか考え、とりあえず玄関をいったん閉めてみたんだ。

それでもう1回玄関を開けたら、そこは普通に外だったんだけどさ。

でも多分、俺は逆の玄関の方から外に出ちゃったんだよね。

それから何か全部微妙に違う。

友達に里中なんていなかったし、北海道なんて県なかったし、「む、あ、い」こんなひらがなは存在しなかった。信号は赤・白・紫だったし、中国・韓国・台湾・北朝鮮は1つの国だったし、ハワイは日本の領土だったし、なんか違うんだよ。

もう慣れちゃったけど。

関連記事

義理堅い稲荷様(宮大工9)

晩秋の頃。 山奥の村の畑の畦に建つ社の建替えを請け負った。 親方は他の大きな現場で忙しく、他の弟子も親方の手伝いで手が離せない。 結局、俺はその仕事を一人で行うように…

第二次世界大戦(フリー素材)

再生

祖父が戦争中に中国で経験した話。 日本の敗色が濃くなってきた頃、祖父の入っていた中隊は中国の山間の道を南下していた。 ある村で一泊する事になり、祖父達下士官は馬小屋で寝る事…

女性の肖像画

今朝、鏡を見ていたらふと思い出した事があったので、ここに書きます。 十年くらい前、母と当時中学生くらいだった私の二人でアルバムを見ていた事がありました。 暫くは私のアルバム…

女の誘い(宮大工8)

お伊勢参りの翌年、梅が開き始める頃。 山の奥にあるお稲荷様の神主さんから、お社の修繕依頼が入った。 そう、弟弟子の一人が憑かれたあのお稲荷様の社だ。 親方に呼ばれ、 …

ビル(フリー写真)

何も無い空間

俺が建設業の見習いをしていた2、3年前の体験です。 その年の夏は滅茶苦茶暑くて、その日は特に忙しかった。現場は既設ビル内。 何とか定時までに終わらせなければならず、上の人に…

教室(フリー写真)

記憶にない女の子

このエピソードは、私の友人であるAさんが小学校6年生だった頃の出来事である。 ※ ある休み時間、彼女は友人とトイレでおしゃべりをしていました。 すると、トイレの入り…

夜のコンビニ

暗闇の隙間

昨年の夏休みの夜のことでした。 深夜、ふと小腹が空いて、コンビニへと向かうため、いつもと変わらぬ道を歩いていました。 その途中、ふと、ビルとビルの間に幅およそ1メートルほ…

封じ(長編)

アパートに帰り着くと郵便受けに手紙が入っていた。色気のない茶封筒に墨字。間違いない泰俊(やすとし)からだ。 奴からの手紙もこれで30通になる。今回少し間が空いたので心配したが元気…

黒い物体

黒い物体

半年程前、海外旅行の帰りの飛行機で体験した話。 機内が消灯された後も、俺は時差があるので起きていようと思い、座席に備え付けのディスプレイで映画を観ていた。 ※ 3時間くらい経…

お屋敷(フリー写真)

お屋敷の物品回収

古い物を家主の居なくなった家から回収し、業者に売りに出す仕事をしています。 一般の人から依頼があって回収する事もあるし、解体業者からお呼びが掛かって現場へ出向く事もあります。 …