この女になろうと思った

公開日: ほんのり怖い話 | 不思議な体験

女性のシルエット(フリー素材)

友達が経験した話です。

高校の卒業式に、友人Aは同級生で親友だった男Bに告白された(Aも男)。

Aはショックで混乱しつつも、Bを傷付けないよう丁寧にお断りしたそうだが、Bから「一度だけデートして欲しい」と懇願され、情もあって承諾したらしい。

それで実際デート(二人きりで映画を見て食事をしただけ)をしたのだが、別れ際に「俺が女だったら、Aは俺と付き合ってくれたか?」と聞かれたそうな。

Bは県外に進学する予定だったし、恐らくもう一生会わないだろうという思いと、二人で楽しく過ごした学校生活を思い出したこともあって急に寂しくなり、

「お前が女だったら、付き合うどころか結婚してたかも」

と答えたらしい。

Bはそれを聞いて泣きながら「ありがとう、ごめんな、さようなら」と言って去り、Aも涙が止まらず、泣きながらBの背中が小さくなって消えるまで見送ったそうな。

それから数年後、Aはバイト先で知り合ったCという女の子に告白されて付き合った。

Cは事ある毎に「ああ、女に生まれて良かった」と言う癖がある子だった。

ある日、Cがやたら上記の台詞を繰り返すので、いつもは聞き流すAも「何で?」と聞いた。

するとCは「だって私が男だったら、Aは私と付き合わなかったでしょ」と答えた。

その時、Aの頭に浮かんだのがBの顔。

それまでは滅多に思い出すこともなかったのに、Cのこの言葉が、Bが別れ際に言った言葉と全く同じ話し方だったらしい。

しかもこの会話があった場所は、Bと別れた場所と同じ(地元の駅前)だった。

その時は『偶然だなあ』と思っただけらしいが、それからCの行動を注意して見ると、驚くほどBとそっくりなことに気付いた。

笑い方や食事の仕方、本の読み方などの仕草や好きな食べ物、好きな音楽や映画などの嗜好物も全く一緒だったらしい。

Aは『Bは性転換と整形をしてCになり、俺に近付いたのか?』という風にも思ったが、Cの親(当然Bの親とは別人)にも会っていたし、Cの女子高時代の友人にも会っていた。

それに第一身長が全然違う(Bは170cm超、Cは150cmちょっととかなり小柄)ので、『ただの偶然だ。似てると思うからそう見えるだけだ』と自分に言い聞かせたらしい。

しかしある日、C宅でAとCが二人でテレビのロードショーを視ていた時…。

Cが「これ懐かしいね。最初のデートで観たよね」と言ってきた。Aはぎょっとした。

その映画はBとのデートで観たもので、Cとは観に行っていないからだ。

「この映画やったのって俺らが知り合う前だよ。前彼と勘違いしてない?」と言うと、「嘘、一緒に見たよ」と言って聞かない。

それどころかその日のAの行動を細かく話す(ホットドックのケチャップを零したこととか、釣り銭を間違えられて得したこととか)。

しかもそれは全て事実。さすがに怖くなって、Aは適当な理由を付けて帰宅した。

それからAはCのことが怖くなり、好意も無くなってしまったので別れを告げた。

別れ話は修羅場で、Cは泣くわ暴れるわ死のうとするわ、手が付けられなかったらしい。

結局Aはバイトを辞めて、一時は家族や友人一同にも音信不通となって県外へ逃亡。

連絡が取れるようになってから事の顛末を聞き、「男らしくないなあ」と私が言うと、

「だって『結婚するって言ったじゃん!だからこの女になろうと思ったんじゃん!』ってCが言ったんだよ。手首切った後に。絶対やべぇって思うじゃん」

とAは答えた。

最初に話を聞いた時は、仕草や嗜好物の一致は偶然、映画云々の話はAとCの勘違い(Aは映画デートの一件をCに話していて、Cがそれを自分が経験したことだと勘違い)だと私は思っていた。

でも「この女になろうと思った」というCの言葉は怖いな…と思いました。

ちなみにAはBに告白されたことを、Cにもバイト仲間にも話していません。

関連記事

天井(フリー素材)

十時坊主

ある日、バイト先に群馬生まれの男が入って来た。 そこでの俺は勤務年数が長かったので、入って来るバイトに仕事の振り分けや作業指導などの仕切りをやっていた。 仕事を共にして行く…

お通夜の日

おじいちゃんのお通夜の日の話です 当時高2の俺は、別に手伝う事も無かったので、準備が終わるまで自分の部屋で音楽を聴きながらまったりとしてたんです。 それでちょっと眠くなって…

ビルの隙間

去年の夏休みの事。 夜中にコンビニへ行き、いつも通る道を歩いていると、ビルとビルの間に1メートルくらいの隙間があるのを発見した。 俺は『こんな所に隙間あったっけ?』と思った…

千羽鶴(フリー写真)

お見舞い

俺は中学と高校の時、寮に入っていた。その時の出来事。 その寮では夜に自習時間というのがあり、自習は自習棟という、宿泊棟とは別の建物で行われていた。 ある日、Tという後輩が自…

夕日(フリー写真)

ドウドウ

小学校低学年の頃、友人Kと何回か『ドウドウ』という遊びをした。 どのような遊びかと言うと、夕方17時~18時くらい、家に帰るくらいの時間になると、俺かKのどちらかが 「ドー…

瀬戸内海

送り船

二年前の夏休みの話。 友達の田舎が四国のど田舎なんだけど、部活のメンバー四人で旅行がてら泊めてもらうことになった。 瀬戸内海に面する岬の先端にある家で、当然家の真横はもう、…

夜のアパート(フリー素材)

古戦場の近くにある寮

今から八年前の五月に体験した話。 当時は大学の寮に住んでいたのだけど、その寮は凄かった。 古戦場の近くで、その霊を供養するお寺が近所にあり、更に寮の隣の竹林には首塚があっ…

猫の親子(フリー写真)

魔法の絆創膏

俺がまだ幼稚園生だった頃の話。 転んで引っ掻き傷を作って泣いていたら、同じクラスのミヤちゃんという女の子に絆創膏を貰ったんだ。 金属の箱に入ったもので、5枚くらいあった。 …

白猫(フリー写真)

先導する猫

小学生の頃、親戚の家に遊びに行ったら痩せてガリガリの子猫が庭にいた。 両親にせがんで家に連れて帰り、思い切り可愛がった。 猫は太って元気になり、小学生の私を途中まで迎えに来…

山(フリー写真)

山に棲む大伯父

もう100年は前の事。父方の祖母には2歳離れた兄(俺の大伯父)が居た。 その大伯父が山一つ越えた集落に居る親戚の家に、両親に頼まれ届け物をしに行った。 山一つと言っても、子…