記憶にない女の子
このエピソードは、私の友人であるAさんが小学校6年生だった頃の出来事である。
※
ある休み時間、彼女は友人とトイレでおしゃべりをしていました。
すると、トイレの入り口が突然開かれ、一人の少女が入ってきました。
彼女たちはその少女を知っていました。
少女が追いかけられているのだと思い、彼女たちは掃除用具入れの扉を開け、
「早く、こっちへ」
と、少女を中に入れるよう促しました。
しかし追いかけている人物は現れず、少女が困っている状況に対処するため、彼女たちは少女をかくまうことに決めたのです。
すると、いたずら好きのAさんが少女が入っている用具入れの扉に足をかけ、少女が中から出られないようにしました。
用具入れの扉は、通路側に開けなければ開かないため、少女は内側から扉を開けることができませんでした。
彼女たちは少女のために平静を装い、扉を押さえることによって、彼女を守ろうとしました。
その後、少女が激しく扉を叩き始めました。
彼女たちは少女のために、さらに力を入れて扉を押さえ、彼女を守り続けました。
しかし、扉を叩く力は徐々に弱まり、ついには何の音もしなくなってしまいました。
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それ以降、少女は出てくることはありませんでした。
周りの女の子たちも不安になり、Aさんに扉を開けるように目配せをしました。
仕方がなくAさんは少女に声をかけながら、用具入れの扉を開けましたが、中には誰もいませんでした。
少女は消えたのです。
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この出来事は学校全体に広がり、同様の話も出回って、全校集会まで開催される事態に発展しました。
数十年経った今も、Aさんは
「確かに、あの子は知っている子だったけど、彼女の名前や学年、クラスがどうしても思い出せないの」
と言っています。