電車の幽霊
埼玉の三郷に操車場跡という所があります。地図にも載っています。
心霊スポットとしては途中のお化けトンネル(化けトン)が有名ですが、体験したのはその近くの建物です。
操車場は上から見ると『芋』の形をしているのですが、その両脇を道路が走っています。
その東側(千葉側)の真ん中辺りの道路脇に敷地があり、奥まった所に真っ暗なビルが残っています。
敷地の入り口は柵がされており、建物は入り口を鉄板などで封鎖されています。
7、8階建てのビルなのですが、一番上の階辺りにぽつんと明かりが点いていて不思議でした。
そこは以前から窓から人が見ていたとか、写真を撮ったら窓から手が出ていたなどの噂を聞いていました。
自分達もそれを期待し、夜から見に行った訳です。
※
敷地に入ると色々な資材が置いてあり、プレハブもあったので、まだ何かに使っているようでした。
人が居た形跡があったため少し気が抜けたのですが、案の定、建物には入れません。
一緒に霊感のある奴も居たのですが、
「何も無いねぇ」
と言っていました。
※
建物の周りを一回りして車に戻ろうとした時、入り口の柵の脇に通路を見つけました。
そこは敷地の端っこから坂になっていて、ちょうど自分の真下のところからトンネルになっています。
坂の脇に回ったのですが、トンネルの奥は真っ暗で何も見えません。
何があるのだろうと思い覗き込んでいたら、ふと音が聞こえてきました。
「カタン…カタン…カタン…カタン…」
電車のレールの継ぎ目を車輪が超える瞬間の『あの』音です。
「ん? 何で音が? こんな所で?」
時間も時間だし、操車場は殆ど使われていません。
それに道向こうの操車場は高い壁で囲まれていて、電車の音など聞こえるはずがないのです。
それは一瞬の出来事です。深く考える間もなく横で叫び声がしました。
「キャー!」「うわー!」
「ん? どうした? 何でみんな逃げるの? え? 何か出たの?
え? え? 待って? 置いて行かないで~!」
自分も走り出しました。
霊感の無い自分は変なものを見た訳ではないし、怖い思いもありません。
でもみんな逃げるし、置いて行かれても困るんだけど…。
そう思いながらようやく車に辿り着き、発車させました。
※
「え? どうしたの? 何があったの?」
一緒に行った4人は黙っています。
「何だよぉ、教えてくれよぉ」
いつもの俺一人何も見れないパターンです。
「もういいよ!」
俺はふれくされて運転を続けていると、霊感のある女の子が話し出しました。
「電車が走って来た…」
「え? 電車? どこ? いつ?」
詳しく聞いてみると、自分が覗いていたのと反対側に資材が置いてあったようなのですが…。
その女の子が『あっ』と思った瞬間、自分の側に向かって電車が走って来るのが見えたそうです。
そうです。自分に聞こえた『あの』音は、電車の幽霊(と言うのも変ですが)の音だったようです。
その女の子も、幽霊はよく見るが電車のは初めて見たと言っていました。
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これが初めての霊体験です。
怖くはないのですが貴重な体験でした。