賽の河原

公開日: 心霊ちょっと良い話

賽の河原(フリー写真)

自分は子供の頃は凄く病弱で、しょっちゅう寝込んでいた。

幼稚園の頃に風邪を酷くこじらせた。

寝ている時に夢を見たのだけど、どこかの河原にぽつんと一人で立っている。

『何か暇だな、寒いな…』なんて思っていたら、どこからともなくガチャガチャ音が。

辺りを見回すと、甲冑を身に着けた人が三人、こちらに歩いて来ていた。

三人は自分の前にドカッとあぐらをかくと、

「○○(自分の事)、何をしておる?」

何と言っても幼稚園児の事、文脈が解らず『何をしている』→『最近は幼稚園で何をしている』と脳内変換。

その時、運動会で披露する予定だった踊りを披露した。元気いっぱい。

最初は露骨に戸惑った感じだった甲冑三人も、一曲踊り終わる頃には和んだらしく、

「他にも何か見せてもらえないか」

なんてリクエストをしてきた。

自分もテンションが高く、ありったけのレパートリーを踊った…。

夢の中だというのに妙にリアルで、石に足を取られて転んだりしつつ。

レパートリーが尽きかけた頃、それまでヤンヤヤンヤと手拍子していた三人がむっつりしていることに気付いた。

それに、三人で何事か話している。時々、気まずそうにこちらを見ながら。

『何となく妙な雰囲気だなあ…』と、踊りをやめてぼーっと三人を見ていると、どうやら話がまとまったらしく、

「○○、数は幾つまで数えられる?」

と聞いてきたので、元気いっぱい、

「ひゃく!!」

と答えておいた。

三人はうなずくと、

「では○○。またいずれ」

と順番に自分の頭を撫でて去って行った。

当時は『不思議な夢を見たなあ』くらいにしか思っていなかったけど、成長するにつれ何となく状況が理解できた気がする。

河原は賽の河原。

甲冑三人は恐らく御先祖(土着一族なので、戦に参加していた方もいる)。

不思議とはっきり覚えていた甲冑の家紋は、もう断絶した本家のものだったと大人になってから知った。

きっと、あの晩自分は死ぬ筈だった。

三人もそのつもりで迎えに来たけど、いたいけな園児のワンマンショーに、世代を超えた『祖父バカ』が発動…。

それで見逃してくれたのでは。

どんなに世代を超えていても、孫は可愛いものなんだな(笑)。


note 開設のお知らせ

いつも当ブログをご愛読いただき、誠にありがとうございます。
今後もこちらでの更新は続けてまいりますが、note では、より頻度高く記事を投稿しております。

同じテーマの別エピソードも掲載しておりますので、併せてご覧いただけますと幸いです。

怖い話・異世界に行った話・都市伝説まとめ - ミステリー | note

最新情報は ミステリー公式 X アカウント にて随時発信しております。ぜひフォローいただけますと幸いです。

関連記事

猫(フリー写真)

親猫の導き

アパートで一人暮らしを始めた頃、アパート周辺を猫の親子がうろついていた。親猫と仔猫四匹。 私はどういう訳か親子に懐かれた。 アパートでは飼えないので下手に餌をやるのは避け…

三宅太鼓(フリー写真)

三宅木遣り太鼓

八月初旬。 夜中に我が家の次男坊(15歳)がリビングでいきなり歌い出し、私も主人も長男(17歳)もびっくりして飛び起きました。 主人が「コラ!夜中だぞ!!」と言い、電気を点…

雨(フリー写真)

涙雨

親父の葬式の時の話。 告別式の最中、心の中で親父に語りかけていた。 『親父、まだ上には行ってないだろ。側に居るなら蝋燭を揺らしてみてくれ』 すると壇上の蝋燭が激しく…

吹雪(フリー写真)

大型トラックの男性

親父から聞いた話です。 昔、親父が雪深い山の現場でバイトしていた時の事。 妻子を置いて季節労働に来ている男性が居て、皆から頼られるリーダーとして現場を仕切っていました。 …

満タンのお菓子

私の家は親がギャンブル好きのため、根っからの貧乏でした。 学校の給食費なども毎回遅れてしまい、恥ずかしい思いをしていました。 そんな家庭だったので、親がギャンブルに打ち込ん…

見覚えのある手

10年前の話だが、俺が尊敬している先輩の話をしようと思う。 当時、クライミングを始めて夢中になっていた俺に、先輩が最初に教えてくれた言葉だ。 「ペアで登頂中にひとりが転落し…

猫の親子(フリー写真)

魔法の絆創膏

俺がまだ幼稚園生だった頃の話。 転んで引っ掻き傷を作って泣いていたら、同じクラスのミヤちゃんという女の子に絆創膏を貰ったんだ。 金属の箱に入ったもので、5枚くらいあった。 …

松葉杖

九十九神

皆さんは、九十九神というものをご存知でしょうか? 長い間使用されている物に宿るとされる妖怪のような存在です。 私は詳しいことは知りませんが、特注の松葉杖には、この九十九神…

田舎の夏

夏の約束

夏が近づくと、ふと思い出すことがある。 中学生だったある夏の日、私は不思議な体験をした。 当時、世間の同世代が夏休みを謳歌する中、私はサッカー部の一員として遠征続きの毎日…

天使のはしご(フリー写真)

成仏した女の子

私の母がまだ独身だった25年程前の話です。 交差点を渡ろうとした時、前に10歳くらいの女の子が歩いていて、その子が目の前で左折しようとしたトラックの後輪に巻き込まれてしまった。 …