真っ白な蝶々

公開日: 心霊ちょっと良い話

白い蝶(フリー写真)

私の母が亡くなってから、色々な出来事がありました。

最初は、母の葬儀が終わって夕方家に戻った時のことです。

玄関の黒いドアの真ん中に、真っ白な蝶々がぴったり止まっていました。

直感的に『お母さん、戻って来たんだ』と思い、

「家に入りたい?」と聞いたら、

『いいよ』とを返事するように、玄関の灯りが一瞬、ふわっと明るくなりました。

蝶々の羽根の模様が、母の顔に掛けたハンカチの刺繍の柄にそっくりで、暫くその蝶々を眺めていました。

次の朝になってもその蝶々は同じ場所に居て、私の知り合いや友人たちも皆、

「お母さんだ」「○○さんに間違いないよ」

と蝶々を囲んで話していました。

それから初七日を迎える前の晩まで、蝶々は同じ場所にぴったり止まったままでした。

時折、私が出掛けようとすると、ふわふわと庭の仕切りまで見送ってくれて、帰るとまた元の場所に止まっているのです。

初七日の前の晩。

「明日の朝は初七日だから、もう行かなくちゃいけないんじゃない?」

と話をして、お水をお供えしました。

初七日の朝、ドアを開けてみると、蝶々は居ませんでした。

初七日を終える夜、私はそれまでの疲れや心労でどっと寝込み、40℃ 近い熱が出ました。

うんうんと唸りながら、夜中の2時を過ぎた時のことです。

右腕がすっと真っ直ぐひとりでに持ち上がり、手の平にじんわりと温かい感触が伝わりました。

母の手に握られている感触です。

ふっと気持ちが楽になって、それから暫く心地良くそのままの姿勢で居ました。

気が付くと朝の5時になっていました。

3時間も腕を上げっぱなしだったはずなのに、体がとても楽になっていて、熱もすっかり引いていました。

見ていてくれているんだな、護られているんだなと、温かい気持ちになりました。

それから2、3日が経った晩、また夜中に腕がすっと上がりました。

今度は指先で、ひらがなでメッセージを送ってくれました。

『かわいいかわいい○○、いつもそばにいるからね。

○○にはなにもしてあげられなくてごめんね。

でも、これからはいつもまもっているからね』

『それから、おねがいがあるの。

いちばんおくのおしいれのいしょうけーすのしたに、おかあさんのひみつのたからものがあるの。

それをみつけて、もやしてほしいの』

母に言われた通りに、押し入れの一番奥の衣装ケースの下敷きを捲ってみると、ありました。

母が若い頃、父からもらったラブレターでした。

母に言われた通り、次の日に庭で燃やしました。

きっと天国に届いていると思います。

関連記事

優しさを大切に

俺が小学校1年生ぐらいの時の話。 その頃、俺はおとなしくて気の弱い方で、遊ぶのも大体おとなしい気の合う子達とばっかり遊んでいた。 でも何がきっかけだか忘れたけど、ある時に番…

不思議なお姉さん

小学2年生のころの話。小さいときに母ちゃんが死んで、親父に育てられてた。 父子家庭が原因か内向的な性格で、小学校でもひどいいじめにあってた。 1年生のころからずっといじめ続…

地下鉄(フリー写真)

目に見えない存在の加護

その日はいつも通りに電車に乗って会社へ向かった。 そしていつものようにドアに寄り掛かりながら外の景色を眺めていた。 地下鉄に乗り換える駅(日比谷線の八丁堀駅)が近付いて来て…

赤ちゃん

甲高い声

我が家の仏壇には、他より一回り小さな位牌があった。 両親に聞いた話では、生まれる前に流産してしまった俺の兄のものだという。 両親はその子にAと名付け、事ある毎に 「…

縁側

猫が伝えようとした事

俺が人生で一度だけ体験した不思議な話です。 俺の住んでいる所は凄い田舎。数年前にローソンが出来たけど、周りは山に囲まれているし、季節になると山葡萄が採れ、秋には庭で柿が採れるよう…

夜の病院(フリー素材)

赤いパジャマの女の子

15年前に事故で左手首を手術。 夜中に麻酔が切れ、朦朧として唸っていると、傍らに赤いパジャマ姿の十歳くらいの女の子が立っていた。 『痛いの?』と頭の中で声がしたので「うん…

旅館(フリー素材)

お気遣い

私は趣味で写真を撮っています。 主に風景ばかりで、休みが取れた時は各地を回っているのですが、その時に宿泊した民宿での体験です。 ※ その日、九州の方に行っていたのですが、天候…

キャンプ場

少女のお礼

この話は僕がまだ中学生だった頃、友人の家に泊まりに行った時に聞いた話。 友人と僕が怪談をしていると、友人の親父さんが入って来て、 「お前たち幽霊の存在を信じてるのかい? 俺…

崖

岩壁に残る足跡

10年前の話ですが、私が深く尊敬している先輩の話をします。クライミングを始めたばかりの頃、先輩が私に教えてくれた最初の言葉は忘れられません。 「ペアで登頂中にひとりが転落してし…

彼岸花(フリー写真)

祖母の隠れ場所

自分が3歳の時に父方の祖母が亡くなった。 皆さんお察しの通り、人の死という現実の認識が出来ない子供の事です。 私はキャッキャッと親戚が居る中をふざけながら走り回り、それこそ…