友子が二人

il_fullxfull.446598138_1g35

一人で繁華街を歩いていると、ガラス張りのカフェ店内の窓際席に一人でいる友子を見つけた。

友子の携帯に電話して驚かせようとしたが、友子は電話に気付かない。

じっと座り、目を左右にキョロキョロと動かして人の流れを見ている。

窓をノックしようと電話をかけた状態でウィンドウに近付くと、友子が電話に出た。

「今○○にいる。友子を見かけたから電話した」と言うと、友子は「今家でテレビみてる」との事。

喫茶店の中にいる友子を見ると電話なんてしていない。

人違いかと思ったが、喫茶店の友子は私が誕生日にプレゼントしたカバンと手作りのストラップを持っている。服も友子がよく着ているもの。

電話でそれを告げると、『今からその服を着てカバンを持って行くから待ってて!』とはしゃいでいた。

段々と電話の方が身内のイタズラのような気がして、通話したまま喫茶店のウィンドウを軽くノックして手を振ってみた。

喫茶店の友子はにこっと顔をこちらへ向けてきた。やっぱり友子だった。

喫茶店の友子が本物で、電話の友子は偽物なんだと思った。

「イタズラやめて。誰よ?(笑)」

『え? 友子だよ!』

「もういいから(笑)」

『ほんとに家にいるの!!』

電話からの声は友子そのものだった。

混乱していたら喫茶店にいる友子が立ち上がり、こちらを指差し、急に顔を真っ赤にしてかなりの剣幕で怒りだした。

そしてカバンを掴み、出入口に向かってに全力で駆け出した。

その剣幕に私も思わず全速力で逃げた。

後ろから金切り声で、「○子ぉ!!うああ~!○子ぉ!」と聞こえたが、振り返れなかった。

ただの他人のそら似かもしれないけど、そしたら私の名前を知っている事とストラップを持っている事の説明がつかず、未だに謎。

あの勢いのまま半泣きで友子の家まで行くと普通にいました。

偽友子と私はその後も何度か遭遇しています。

ちなみに電話を切らずに逃げたため、「○子ぉ!」という声は彼女に聞こえていました。

関連記事

集落

時代を超える舞

私が生まれる前の出来事です。直接の体験ではないため、一部私の想像が加わっています。地名や人名はすべて仮名です。 ※ 私の生まれた村は最近、他の町と合併し、名前が変わりまし…

旅館での一夜

甲府方面にある旅館に泊まった時の話。 俺と彼女が付き合い始めて1年ちょっと経った時に、記念にと思い電車で旅行をした時の事。 特に目的地も決めておらず、ぶらり旅気分で泊まる所…

ボール

失われた半年間の記憶

小学3年の冬から小学4年の5月までの間、私の記憶がまったくありません。記憶が途切れている期間は、校庭でサッカーをしていたシーンから、学校の廊下にある大きな鏡の前に立っているところまで…

日本人女性の目(フリー写真)

最後の一線

ある意味怖く、ある意味笑っちゃうような話なのだが…。 俺が高校一年生の時の話だ。 この頃はもう両親の関係は冷え切っていて、そろそろ離婚かな…という感じの時期だった。 …

抽象画(フリー素材)

夢が現実に

最近になって気付いた不思議な事。 俺は普段眠ってもあまり夢を見ない。というか実際は見ていても忘れているんだと思う。 でも、偶に夢を覚えていたりする。しかも覚えているやつに限…

古書店の本棚(フリー写真)

客寄せ仔猫

伯父の高校時代に、伯父が好きだった娘がいた。 高校卒業後は、偶に同窓会で顔を合わせる程度の付き合いだった。 しかし数年経って、その娘が親の勧める縁談を受けて結婚し、夫の仕…

校舎(フリー写真)

消えたヤンキー

現在就活中で、大阪と兵庫の辺りをうろうろしている。 昨日ホテルに帰る途中のタクシーの中で、一緒に居た友人が何故か怖い話を始めた。 その時に運転手さんから聞いた話。 …

養鶏場(フリー素材)

ヒギョウさま

今はもう廃業していますが、私の母方の実家は島根で養鶏場をしていました。 毎年夏休みになると、母親と姉、弟、私の4人で帰省していました。父は仕事が休めず、毎年家に残っていました。 …

田舎の風景

隠された風習

私の父方の親族が住む田舎には、1960年代初頭まで、他では聞かない特殊な風習が存在していました。 この風習は、一般的な生贄や飢饉によるものではなく、ある種の宗教的な儀式、供養の…

数字

余命推定システム

死ぬ程怖くはないけど、じんわりと背筋が固まるような話を。 ただ、俺はこの話を最恐に怖い話だと思っている。 さっきテレビで関係する話が出ていて思い出した。 ※ 数年前の事…