閉ざされた一家

Art-Nano-Tech-Helix-Dna-The-Chain

警察には未公開な事件が多数あるらしいのですが、そのファイルの一つに、TSと銘打たれた事件がある。

事件はこうだ。今から7年前、千葉県内にて連続殺人事件が発生した。被害者は8名で、全て20歳前後の男性。

遺棄された死体は全裸にされ、男性器…キンタマが千枚通しで二つとも串刺しになっている姿で発見されたとのこと。

しかも、生きている間に貫かれている。これは、男性に深い怨みをもつ女性の犯行とみて捜査を続けたが、一向に犯人が上がってこない。

仕方がないので公開し、注意喚起と共に情報提供を求めようと考えた。

そんな中、現行犯のチャンスに警察は恵まれたが、取り逃がしてしまった。何故か? そこにいた全員が恐怖で動けなかったという。

犯人はプロファイルされた女ではなく…いや、人間ですらなかった。正確に言うなら…雌というべきか…。奇形のよたいだったという証言もある。

目の前で玉を串刺しにされ悶える男を見ながら、彼らは何もできなかった。

しかし、事が終わり、その化け物が去る時には正気に戻り、追跡を始めた。その化け物は、土地で有名な資産家の宅へ入っていった。

まさか…さらに犠牲者が? と思い突入したが、何もなかったかのように主がいるだけだった。

ことの次第を説明し、捜査への協力を求めたが、主は顔色を変え拒否した。

仕方なく署に戻り報告したが、あまりに不可解かつ、主が一連の事件に深く関わっていることは一目瞭然であるため、家付近をしばらく監視することに決定した。

1班は張り込みを、そして2班は身辺調査を…といった形で、2班に分けて捜査は続けられた。

張り込み組に関しては、1ヶ月以上なんの成果もなく時が過ぎたが、調査組に関しては、興味深い事実を発見することができた。

その事実とは…

・その資産家の苗字○○○○(漢字四文字)は、その土地でなくてもかなり珍しい名前

・何故かある代以下は養子で家を継がせており、実子が存在しない

・ある代以下は結婚もせずに、養子縁組だけで成り立っている

・養子にしている子供の素性が不明

等々。

さて、成果の上がらない監視組はと言うと…。

あまりの暇さに、その化け物が入っていったことも見間違いかもしれないと、半ば諦めていた。

そんな中、23時頃に家の中から悲鳴とも雄叫びともとれる音が闇夜に響く。捜査員は急いで自宅のインターホンを鳴らした。

しばらくして、主が戸を開けた。捜査員が先程の音の話しをすると、主は途端に青ざめた。

何かある…と捜査員は主の家へ踏み込む。リビングや寝室等には異常は見られない。やはり勘違いかと失望したが、二度目、やはり叫び声が家から聞こえた。

詳細に部屋内を調べると、家の大きさからすると明らかに大きすぎるデッドスペースがあるように思えた。

回りを捜索すると、予想通り入口を発見したのだった。中に入った捜査員は、中に漂う腐臭とその光景に硬直したらしい。

そこで見た光景は、報告書によると…

・追跡した犯人が寝ていた

・犯人と同じ様相の生き物が2体そこにいた

・すぐ側に大きな箱があり、無造作に赤子と思しき腐った遺体が入れられていた

とかく捜査員は無線で応援を呼び、主を確保。

そして、三体の化け物がいる部屋を閉ざし、応援を待った。

応援が到着後、主を連行し取り調べを行った。調書からのポイントは以下のようなものだった。

・あの三体は自分の家族であり、母親、姉、娘であること

・捨てられていた赤子も自分の子であること

・○○○○家では近親相姦を繰り返し、あのような化け物(奇形)が生まれてくることが多いこと

・先祖から家が集落に呪われており、集落の外に出ることも集落の外から嫁を迎えることもできなかったことが、近親相姦の始まりであったこと

・昔は奇形の赤子を埋めて棄てていたが、今では簡単に捨てられない為に、保管せざるを得なかったこと

・昔は勝手に自分の実子にしても疑われなかったが、今では制度が整いすぎて、養子として実子を育てるしかなかったこと

等々…信じられない話が調書にまとめられた。

さて、彼らはその後どうなったかと言えば…。

主は勾留中に自殺。他の三体の家族たちは秘密裏に処理されたという。

主とのやり取りの中、

「失礼ですが、あのようなモノと性交をもつことに、嫌悪感はないのですか?」

という警察官の問いに、

「ええ…家族ですから…」

と微笑む主の顔が印象的だったと、それを知る当事の警官は語ったという。

ちなみに、なぜにあの奇形が男性のキンタマを刺すのかということについては、判らずじまいだったそうです。

そして、千枚通しが8本もある家も変だし、とにかく奇妙な話でした。

尚、何故に彼らが外に出るかといえば、主が「夜くらいは外の空気を吸わせてあげたい」という気持ちだったとのことです。

関連記事

コッケさん

私の田舎ではコケシの事をコッケさんと言って、コケシという呼び方をすると大人に相当怒られました。 中学生に上がりたての頃、半端なエロ本知識で「電動こけし」という単語を知ったクラスの…

ここにいたあ

13日に田舎の墓参りに行ってきた。 毎年恒例で、俺は東京で一人暮らしして初めての里帰りだった寺には一族郎党が集まり、仲の良い従兄弟のDも来ていた。 お経も終わり墓参りも終わ…

サンドイッチ

高校生の頃、俺のクラスにいつも虐められているオタク風のデブ男がいた。実を言うと俺も虐めていた1人だった。 そんなある日の昼休み。俺はあるプリントを5時限までにやらなくてはならず、…

最後の疑問

最近友人は 2ヶ月間タイに行ってきた。 まあ、日本円で千円も出せば一泊できるような安宿に泊まったらしい。 どこの国でもそうなのかも知れないが、やはり日本人旅行者は狙われる。…

山道(フリー素材)

上位の存在

厳密に言うと、この話は俺が「洒落にならない程怖い」と思った体験ではない。 俺の嫁が「洒落にならない程怖い」と思ったであろう話である。 俺の嫁は俗に言う視える人で、俺は全くの…

三鷹事件

三鷹事件は、1949年(昭和24年)7月15日に日本・東京都北多摩郡三鷹町(現・三鷹市)と、武蔵野市にまたがる日本国有鉄道中央本線三鷹駅構内で起きた無人列車暴走事件。 同時期に起…

行方不明になった友達(長編)

これはまだ解決してないというか、現在進行形の事件です。 プロの探偵さんに元々依頼してた事件なんですが、警察沙汰に発展するかもしれないし、しないかもしれないし、今はなんとも言えませ…

古民家

不吉な予兆

熊本県に根を持つ我が母の実家について語ります。この家は、長年母の姉が住む家でしたが、彼女が先日訪れた際の出来事があります。 我々が家族で集まり、映画『ターミネーター2』の壮絶な…

田んぼ

蛇田

自分の住んでいる所は田舎の中核都市。 田んぼは無くなっていくけど家はあまり建たず、人口は増えも減りもせず、郊外に大型店は出来るものの駅前の小売店は軒並みシャッターを閉めているよう…

電話受信のバイト

数年前、まだ大学生の頃に電話受信のバイトをしていた。 クレームなども偶にあるけど、基本受信だから殆どは流れ作業ね。 通信教育の会社なので一番多いのは解約かな。あとは教材の発…