隠された真実

公開日: 怖い話 | 洒落にならない怖い話

赤ちゃんの手

私の母方の祖母は若い頃、産婆として働いていました。彼女は常に「どんな子も小さい時は、まるで天使のようにかわいいもんだ」と言って、その職業の喜びを語ってくれました。祖母は、新生児の無邪気な美しさと、母親の喜びに満ちた表情を見ることが何よりの幸せだったと言っていました。

祖母は、生き生きとした話し方で、熱いお湯、清潔なシーツと毛布の重要性、そして出産の瞬間の感動を楽しげに語りました。これらの話は、幼い私にとってもとても魅力的でした。

しかし、祖母が亡くなってから一年半が経ち、その悲しみが薄れた頃、母から祖母の産婆としての経験について、今まで聞かされてこなかった暗い側面を聞くことになりました。

この話は、母が祖母から直接聞いたものです。時は遡り、10年前のある出産の夜のこと。祖母はある産婦の家で、朝から夜遅くまで出産の支援をしていました。産婦は風邪を引いており、状況は決して良くありませんでした。

その日は祖母と、35歳の産婆であるSさんが一緒に支援していました。夜は二人で交代しながら休む手はずでした。産婦の母親もそばにいましたが、疲れているとの理由で休ませることにしました。

しかし、祖母が交代で眠っている間に、産婦の陣痛が急に強くなりました。祖母が目を覚ますと、Sさんはすでに出産の手助けをしていましたが、祖母は何かがおかしいと直感しました。

産婦の母親が飛んで来て、孫が無事に生まれたことに安堵しました。しかし、Sさんが突然、「この子、目ん玉が無いわ」と発言しました。祖母は自分も赤ん坊の顔を見た際、目は閉じていたものの、眼球の存在を感じ取っていました。

この発言により、産婦の母親は取り乱し、その後うつ症状に陥りましたが、数年後にはその子を愛情深く育てているのを目撃しました。

祖母はこの出来事を心に留めており、なぜSさんが事前に「起きて」と呼びかけなかったのか疑問に思っていました。彼女は、Sさんが何か恨みを持っていたのではないかと考えていましたが、真相はついに明らかになりませんでした。

祖母の話は、美しい出産の瞬間だけでなく、その裏に隠された重い真実をも教えてくれました。

関連記事

夜の海(フリー写真)

海から聞こえる声

漁師をしていた爺さんから聞いた話。 爺さんが若い頃、夜遅く浜辺近くを歩いていると、海の方から何人かの子供の声が聞こえてきた。 『こんな夜遅くに、一体何だ?』と思い、声のす…

炎(フリー写真)

火葬

私の知人の実家では少し前まで、山頂の小さな野原で火葬を行っていた。 山奥の集落ゆえ、死人が出ると村内で埋葬するしかなかったのだ。 火葬をする夜は、村の家々は固く扉を閉め、…

ダイバー

私はある南の海で仲間たちとスキューバダイビングを楽しんでいました。空は晴れ渡り、海の状態は非常に安定していて絶好のダイビング日和でした。 私は仲間のダイバーと二人で、あるダイビン…

海(フリー素材)

アシュラさん

今年の3月の終わり頃だったかな。 俺はいつものように更新を楽しみにしている洒落怖まとめサイトを見ていた。 その時、オカルト好きな俺の叔父さんが家に遊びに来ていて、一緒になっ…

三つの墓標

俺の高3の時の生物の担当の話。 自分が実際に体験した訳じゃないけど、ある程度現場視点で話します。 先生は某国立大学の出で、その大学は山にあって、昔は基地として使われていたら…

蛍光灯チャチャチャ

ある日の夜、蛍光灯を点けたまま寝ようとしたんだ。 ただ、電気代を考えて片方だけ残してね。 そしたらさ、いつもの癖で全部消しちゃったんだよ。 チャ(蛍光灯Aオフ) チ…

橋の歩道

四ツ脚

高校生時代、陸上部で短距離走をやっていた俺は、夜学校が閉まってからも練習をする熱心なスポーツマンであった。 と言っても学校内に残って練習する訳ではなく、自宅周辺の道路を走るのであ…

母を名乗る女の人

小学校に上がる前の、夏の終わりの頃の話。 私は田舎にある母方の祖父母の家で昼寝をしていた。 喉が渇いて目が覚めると、違和感を覚えた。何回も遊びに来ている家だけど、何かが違う…

俺の曾爺ちゃんの話を書いてみようと思う。 と言っても、曾爺ちゃんは俺が物心付く前に死んでしまったので、爺ちゃんに聞いた話なのだけれど…。 更にそれを思い出しながら書くので、…

田所君

小学生のころ同級生だった田所君(仮名)の話。 田所君とは、小学5年から6年の夏休み明けまで同じクラスだった。田所君は、かなり勉強の出来るやつだった。 学校の図書館を「根城」…