未来のコンビニ

コンビニ

俺が6歳の時の話だ。その頃の俺は悪戯が大好きで、しょっちゅう親に叱られていた。

いつものように「こんな家出てってやるー」と泣きながら言い放ち、家を飛び出す。でも、いつも夕飯時には戻っていた。

ある日、またひどく怒られて、「もう家になんか帰るもんか」と思い立ち、夜遅くまで色々な所をウロウロしていた。その夜の月は異常に大きく、真っ赤に輝いていた。

さすがに寂しさと空腹が募ってきたので、家に帰ることにした。帰り道、いつもは更地だった場所に見覚えのない店が現れていた。その店はレンガ造りで、中は明るく照らされており、赤と緑の看板が掲げられていたが、人の姿は見えなかった。

怖くなって家に急いで帰り、家族にその話をしたが、「何言ってるんだお前?」と信じてもらえなかった。翌日、その更地を確かめに行ってみたが、やはり何もなかった。

それから十数年が経ち、親父の転勤で別の土地に引っ越した。大人になった俺は、仕事で昔住んでいた場所の近くに行く機会があった。仕事を切り上げ、懐かしさに浸りながら歩いていたとき、ふと小腹が空いたので新しくできたセブンイレブンに寄った。

店内で肉まんを食べながら、昔はコンビニなどなかったと思い返していると、ふとあの夜のことを思い出した。このセブンイレブンが建っている場所、それはまさに俺が不思議な店を見たあの更地だった。

あの時見たのは、ひょっとして未来のこのセブンイレブンだったのだろうか?タイムスリップなんてあるはずがないと思いながらも、何か不思議な縁を感じずにはいられなかった。

関連記事

綺麗な少女

夏が近くなると思い出すことがある。 中学生の時、ある夏の日のことだ。俺は不思議な体験をした。 夏休みを迎えて、同世代の多くは友達と遊んだり宿題をやったりしていただろう。 …

キャンプ場(フリー素材)

黒い石

大学時代のサークル活動で不思議な体験をした。 主な登場人物は俺、友人A、先輩、留学生3人(韓国、中国、オーストラリア)、友人Aの友達のアメリカ人、他は日本人のサークルメンバー。 …

刀(フリー素材)

霊刀の妖精(宮大工15)

俺と沙織の結婚式の時。 早くに父を亡くした俺と母を助け、とても力になってくれた叔父貴と久し振りに会う事ができた。 叔父貴は既に八十を超える高齢だが、山仕事と拳法で鍛えている…

見覚えのある手

10年前の話だが、俺が尊敬している先輩の話をしようと思う。 当時、クライミングを始めて夢中になっていた俺に、先輩が最初に教えてくれた言葉だ。 「ペアで登頂中にひとりが転落し…

田舎の風景

白ん坊

このお話の舞台は詳しく言えないけれど、私の父の実家がある場所にまつわるお話。 父の実家はとにかくドが付く程の田舎。集落には両手で数えきれる程しか家がない。 山奥なので土地だ…

金色の金魚(フリー写真)

浮遊する金魚

小学2年生くらいまで、空中を漂う金色の金魚みたいなものが見えていた。 基本的には姉ちゃんの周りをふわふわしているのだけど、飼っていた犬の頭でくつろいだり、俺のお菓子を横取りしたり…

タヌキの神様

俺の姉貴は運が良い人間だ。 宝くじを買えば、ほぼ当たる。当たると言っても、3億円なんて夢のような当たり方ではないのが残念なところだ。 大抵 3,000円が当たる。何回当たっ…

何で戻ってくるんだ

3年程前の話。私は今でも、バイク好きで乗ってるんですけど、3年前は俗に言われる走り屋って奴だったんです。 その時行ってた峠の近くに湖があって、そこに大きな橋がかかってるんです。 …

彼の予見

昔付き合っていた彼氏の話。 当時高校生だった私は、思春期にありがちな『情緒不安定』で、夜中に一人で泣く事が多かった。 当時はまだ携帯なんて高嶺の花で、ポケベルしかなかったん…

天国(フリー画像)

人生のやり直し

俺は一度死んだことがある。 これだけだと訳が解らないと思うので詳細を説明する。 ※ 小一の頃、夏休みが終わり二学期が始まった。運動会や遠足もあったし、毎日普通に生活していた。…