帰らない友人

トンネル

うちの近くに、背の高い草が茫々に生い茂った空き地がある。

陽の光が当たり難いだけでなく、元から妙に薄暗いため、非常に不気味な場所だ。

そんな場所は、やはり小中学生には格好の肝試しスポットになる。

これは俺がまだ小学生だった頃、その場所で実際に体験した出来事だ。

空き地には、重いが決して動かせない訳ではない石板が置いてある。

何人かの友人達と必死になってその石版をどかしてみた。

すると…、階段があった。地下へ続く、謎の階段…。うーん、ミステリー!

俺達はとんでもない大発見をしたと喜び勇み、階段を駆け降りた。

当然、中はとても暗かった。そこで、最も家が近かった者がライトを取りに戻った。

しばらくして、友人はライトを持って戻って来た。ライトを点けて、周りを見渡してみる。

訳の解らない文字が壁中に書いてあった。梵字というのだろうか、多分そのようなものだ。

当時の俺達からしてみれば、それは不気味なだけだった。

そんな謎の文字を目で追って行くと、一つの扉を見つけた。

凄く小さな扉で、例えるなら茶室の扉。

もうその時にはかなりびびっていたが、ここで逃げる訳にはいかない。

ライトを持った奴が一番最初に、そして最後に俺が扉をくぐって中に入った。

その時、

「ガタン!」

という音を立てて扉が急に閉まった。

パニックになった俺達は、どうにか扉を開けようとする。しかし、押しても引いてもびくともしない。

泣きそうな表情の俺達を尻目に、ライトを持った奴は何を思ったか先に進み出した。

仕方なく俺達後続の連中もライト持ちの後を追う。

風が吹き抜けて行く時のような音が聞こえる。

進んで行くにつれて、その音がどんどん大きくなって行くのが判った。

「ちょっと待て」と言って他の奴らを止めた。

しかしライト持ちの奴だけは止まらず、どんどん先へ先へと進んで行く。

ライト持ちにしがみついて止め、ライトを奪い、「なんで無視しやがる」とそいつの顔にライトを当てた。

すると、そいつはもうとうに失神していて意識がない。

意識がないのにずっと進んでいたのだろうか。

次の瞬間、俺達を振り切ってそいつはまた進み出した…。失神しているはずなのに。

風が吹き抜けて行くような、あの音がどんどん大きくなる。

怖くなった俺達は、もと来た道を急いで戻った。

扉はなぜか開いていて、俺達はすんなり外に出られたのだけど…。

その日のうちに、そいつの捜索が行われた。

もちろんその地下へ続く階段まで大人達を案内したのだが、そんな小さな扉は存在しなかったと言う。

あれから十数年が経つが、未だにあいつは帰って来ていない。

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