黒く塗り潰された家

公開日: ほんのり怖い話 | 心霊体験

古い一軒家(フリー写真)

昔、今とは別の仕事をしていた時の事。

その日はいつも居る支店とは違う支店エリアでの営業で、渡された地図を片手に歩きながら、飛び込み営業の仕事だった。

目的のエリアに着いて『さて行くか』と歩き始めて暫くすると、地図では黒く塗り潰されていた一軒の近くで足が止まった。

「…あれ? 誰か居る…?」

そこは古びた一軒家で、カーテンで中は判らないはずなのに、何故か『居る』と確信。

「こんにちわー!」

玄関前で何回か呼んでみたが返事が無い。

出て来ないか…とちょっと引き返したその瞬間、

「何か御用ですか?」

と、その家の中から声がした。

家の中からお婆さんの声がしたので慌てて戻って話を始めたが、何故か玄関は開かないまま話は続く。

自分「玄関、開けてもらえませんか?」

婆「…私じゃ開けられないんです。力が弱いもので。

…ところであなた、私と話してて不思議に思わないんですか? 怖くないですか?」

自分「別に何も…?」

自分「お一人で住んでらっしゃるんですか?」

婆「いえ、住んでるって訳じゃないです」

自分「え? 通ってるとか…?」

婆「そうじゃなくて…。

前はお爺さんが一緒に居たんですけど、ずっと前に遠くに行ってしまって。

私もそこに行きたいんですけど、自分ではどうしようもなくて…」

自分「じゃあこれ外から…? その閉めた人に言って来ましょうか?」

婆「近くに居る○○さんなはずですけど…いいんですか?」

自分「だって行きたいんですよね?」

婆「…はい。一人はもう…。じゃあ、すみませんが…」

それで、その言われた家に行ったら、主人から話し出す前に開口一番言われた。

「今、あの家に行った? あそこには誰も居ないはずだが、誰か居たかい?」

それでさっきのお婆さんとの遣り取りを話した。

おじさんは緊張した面持ちで聞いていた。

そして、

「解った。後でちゃんと開けておくから。

ところであんた、幽霊とか見えるのかい?」

自分「いえ、全然。見たことないです(笑)」

おじさん「今まで一度も? ふーん…。変わった力だね」

取り敢えずお昼だったので、支店に帰ってからの報告でその話をしたら、

「ついにやっちまったか!」

とみんな大騒ぎ。

ちなみに自分がこのお婆さんが幽霊だったと知ったのは、10年近く経ってからの事だった…。

関連記事

スーパーマーケット(フリー写真)

台風の日の親子

以前スーパーで働いていた時の話。その日は台風が近付いていて、午前中は雨になる前に買い物をしておこうと客がいつもより多かった。夕方を過ぎて雨が本降りになると、客はほぼ来な…

エレベーター

ワープする部長

会社でのぬるい話をひとつ。コンサル部の部長は時々ワープするらしい。打ち合わせ中に他の場所で目撃されたり、出張中なのにかかってきた電話に出ていたりと、「瞬間移動できる」ま…

峠(フリー写真)

峠の廃村

俺はオフロードバイクでソロツーリングするのが趣味だ。連休にはよく一人で遠出する。今年のお盆休みに、九州の南端を目指して三泊四日の予定でツーリングに出発した。もちろん、…

トンネル(フリー写真)

車の手形

ある日、大学生のカップルが山へドライブに行きました。夕方になり、辺りが薄暗くなった頃に帰ろうとしたのですが、道を間違えたのか、行きでは通らなかった古びたトンネルに行き着いてしま…

柿の木(フリー写真)

拝み屋の不思議な子

うちの母方の家系はいわゆる拝み屋。元は神社だったのだけど、人に譲ってから拝み屋をやっていた。拝み屋と言っても儲からない。お金は取っちゃいけないから兼業拝み屋。でもひいじ…

夕日(フリー写真)

歳を取らない巫女様

昔住んでいた村に、十代の巫女さんが居た。若者の何人かはその人のお世話をしなければならず、俺もその一人だった。その巫女さんは死者の魂が見えたり、来世が見えたりするらしかっ…

トンネルの女の子

ちょっと書かせてもらう。怖かったんだ。ほんとに怖かったんだ。20数年生きてて心霊現象なんてついぞお目にかかったことがなくてさ。怖い話は好きだけど、そんなの実際にはありえ…

民家

さしあげますから

もう10年以上前の大学時代の事。当時、実家の近所にある小さな運送会社で、荷分けやトラック助手のバイトをしていた。現場を仕切っていたのは、社長の息子で2つ年上の若旦那。 …

かんかんだら(長編)

中学生の頃は田舎もんの世間知らずで、悪友の英二、瞬と三人で毎日バカやってた。まぁチンピラみたいなもん。俺と英二は両親にもまるっきり見放されてたんだが、瞬のお母さんだけは必ず瞬を…

感謝の言葉

数年前に、東京の某グランドホテルで客室係のバイトをした時の話です。ある日の早朝4時くらいに、姿見(全身を映す鏡)を持ってきてくださいとの電話が入りました。こんな時間にな…