霊感の強い弟の話
高校生の頃、霊感がピークだった弟の話。
弟には小さな頃から霊感の強い友達が居る(仮にAとする)。
その日、学校帰りに Aの家へ遊びに行く途中のこと。
何ぶん田舎なもので、近くにコンビニすらない。
しかし家には飲み物もないということで、自販機で買うことにした。
その場所は、Aの家まで100メートルもない一本道の途中である。
自販機の前でAが「何にする?」と聞いてきた。弟は「コーラ」と答える。
小銭をじゃらじゃら用意して、いざ買おうとするAの手が不意に止まった。
『ん?』と思って見ていると、Aがゆっくりと首を左手に回した。
一本道の周りは田舎らしく田んぼだらけだが、そこだけはちょっとした空き地になっている。
Aはその後、すぐに弟の方を向き直した。
その顔を見て直感した。見たな、と…。
ヤバイと感じたが、弟も左側に目を向けた。
女だ。真っ白な着物を着ているようだが、その姿は透けている。
女はそっぽを向いていた。弟は更に目を凝らす。
どうやら胸に何かを抱いているようだ。
何かに包まれている…? 赤ん坊か?
そう思った瞬間、女が腕に抱えていたそれは赤く染まった。
そして女は、少しずつこちらに首を向き始めた。
Aが急いで自転車に戻ったところで、二人はその場を一目散に逃げた。
※
家に無事、帰り着いたところでAが語る。
「恨みの念がいっぱい伝わって来たな…」
それは弟にも解った。
弟は焦った。あの道は一本道。帰るにはあそこを通る以外に道はない。
当然のようにその日は、お泊りになりました…。