おどって

公開日: 怖い話

2010-08-17-18-59-28

一年くらい前に誰かがテレビで喋っていた話。

ある女の子が夢を見ていた。

夢の中で女の子は家の階段を登っている。

すると誰かに足を掴まれた。

振り向くと皺くちゃの顔した老人が物凄い形相で

「あああって!あああって!」

と、訳の分からない事を喚いている。

女の子はそこで目が覚めた。

気持ち悪い夢だなと思いながら台所に行くと、母親が喪服姿で慌ただしく朝食の準備をしている。

「ほら、あんたも早く準備しなさい!」

どうやら親戚の通夜に行くらしい。

軽く朝食をとって通夜に行くと、線香をあげるよう母に言われた。

座敷に行き、遺影を見た瞬間驚愕した。

なんと夢に出てきた老人だったのである。

そのことを親戚の人たちに話すと、

「○○ちゃんは覚えてないだろうけど、あのおじいちゃんにバレエシューズ買って貰ったり可愛がられてたのよ」

「ちょっと遊びに行ったのかもね」

という事を言われた。

そう言えばずっと前にバレエを少しやっていた記憶がある。

ひょっとしたら、

「おどって!おどって!」

と言っていたのかも。

その日の夜、また同じ様な夢を見た。

同じように足を掴まれ、

「あああって!あああって!」

と喚いている。

女の子は、

「ごめんねおじいちゃん…、私もうバレエやってないの。本当にごめんなさい…」

と言って、冥福を心から願った。

しかし、その老人はまったく聞く耳持たずに

「あああって!あああって!」

と喚き続けている。

女の子は困惑しながらも、老人の言葉を聞き取ろうと試みた。

「あああって!」

「ああわって!」

「かわって」

関連記事

お婆ちゃんの手(フリー写真)

連れて行かれる

私が小学生の頃の話です。 小さい頃にお世話になった近所のお婆ちゃんが倒れて、寝たきりになってしまいました。 一人暮らしで、親族も居なかったようです。 当時、よく古い遊…

部屋

歪む空間

はじめにお断りします。 この話には、「幽霊」やいわゆる「恐ろしい人間」は登場しません。 しかし、私自身、いまだにこの出来事が何だったのか理解できないのです。 もし、…

フィルムノイズ(フリー素材)

白い影の正体

私は親族に、主に妻の家族に隠し事をしている。 なぜ私だけが知り、なぜあの時、お義父さんが私だけに話したのか。 それは10年以上経過した現在でも判らない。 ※ 妻の母親、…

ロシアの軍艦(フリー素材)

ロシアの軍事教練所

バルチック爺さんが日露戦争中に見聞した話です。 彼はその後、関西の都市部で衛星看護兵の訓練に携わりました。 そこで知り合った医務教官から聞いた話だという事です。 その…

蛍(フリー写真)

赤ちゃんの声

何年前だったかは今はもう覚えていません。 でも当時は凄く暑くて、扇風機を点けっ放しで寝ていたので、夏であることは確かだったと思います。 熱帯夜というやつですね。暑いと本当に…

夢

記憶を追って来る女

語り部というのは得難い才能だと思う。彼らが話し始めると、それまで見てきた世界が別のものになる。 例えば、俺などが同じように話しても、語り部のように人々を怖がらせたり楽しませたりは…

遺言ビデオ

別れのメッセージ

会社の同僚であるKが亡くなった。 彼はフリークライミングを趣味とし、非常に熱心に取り組んでいた。休日があれば、どこかの山か崖へと向かう日々で、私とも親しい関係にあり、彼の家族と…

祖父の箱

旅先で聞いた話。 伐り倒した木を埋めておくと、稀に芯まで真っ黒になることがある。 そんな埋木を使って特殊な方法で箱を作ると、中に女子が育つそうだ。 ただし、箱を開ける…

竹藪(フリー写真)

佐々間のおばちゃん

子供の頃は両親が共働きだったので、うちには幼い俺の世話をする『佐々間のおばちゃん』という人が居た。 おばちゃんはちょっと頭が良くなかったせいか仕事は持たず、自分ちの畑とうちのお手…

倉庫(フリー背景素材)

曰く付きの絵画

一つ俺の体験談をば。 秋口の頃だったか、俺の勤めている会社の社長の菩提寺が建物の一部を修復するとかで、俺も含めて若い社員が5、6人と、監督役の係長が一人、荷物の運搬を手伝いに行か…