呪われた路線
都心と多摩地区を結び、JRのドル箱といわれている中央線。
疾走してくる電車への飛び込み自殺の多発路線としても知られている。
例えば、1995年4月から11月までの8ヶ月間には、なんと26人もの人々が飛び込み自殺している。
10月12日には、午後6時頃に新宿駅ホームで下り電車に男性が、午後8時ごろには阿佐ヶ谷駅近くの中央線線路内で、上り特急列車に女性が飛び込み、続く午後10時には阿佐ヶ谷駅で、下り列車にこれまた女性がはねられ死亡している。
いずれも自殺と見られているが、わずか3時間半で3人の死亡事故というのは極めて異例の事態であり、「呪われた路線」中央線を象徴しているかのようである。
JRの他線と比較すると、1995年度当時の上半期(4月~9月)の統計では、山手線5件、京浜東北・根岸線4件、そして中央線は17件と突出しており、数が飛び込み自殺の発生率の高さを物語っている。
そしてまた、目撃者が報告する自殺の状況が何故かミステリーじみているのである。
ある目撃者によると、ホームに並んでいたら、近寄りがたい異様な雰囲気の若者がいたというのだ。
後ろ姿は老人に見え、まるで呪われたような姿、と思った瞬間、ふっと吸い込まれるようにホームから消えたという。
まるで、悪魔か何かが彼を引き寄せたように思ったと証言している。
一連の自殺者たちには、性別や年齢、職業にとくに偏りはない。そして、時間、場所、動機などの共通性はなく、関連性も見られない。
ただ、その多くがほかの地域からやってきて、ホームから線路へと身を投じるのだ。実際に、自殺の名所と化した踏切まで存在した。
少なくとも5人は亡くなっているという車の通れないような小さな踏切である。
その踏切の近くでは、人魂が出たとか、生首が落ちていたなど、あらぬ噂も飛び交う始末。
半年間で26件という飛び込み自殺が発生しているJR東日本立川地区では、原因を究明することもままならず、対策も打つことができなかったという。
それにしても、なぜこうも自殺が多発したのだろうか?
携帯電話の普及が著しかった当時、話題になっていた電磁波は、人体ばかりでなく、脳にもかなりの影響を与えることが判ってきた。
ご承知の通り、電車が線路上を疾走してくると、強い電磁波が発生する。特に事故や飛び込み自殺が多発する「魔の踏み切り」と呼ばれた地点では、実際に電磁波の異常が検知されたこともある。
不安定な電磁波が磁場の異常を起こし、注意力を散漫にするなど、精神状態にかなりの影響を及ぼすといわれている。
当然、駅のホームでも同様の現象が発生していると考えられる。電車がホームに走り込むことによって、ホームの一角に強い電磁波が発生するのだ。
それは、「死に往く」ことを決意した人たちに対して、一層「自殺」という行為を喚起させてしまう効果をもたらしているのかもしれない。
こうした飛び込み事件の多発により、いまや中央線は高架線へと変貌している。
しかしながら、いまなお飛び込む人は後を絶たず、中央線は今も変らず「呪われた路線」のままなのである。