茶室のような小さな扉

草むら

うちの近くに、高い草が生い茂る空き地がある。日が差し込みにくく、常に薄暗いその場所は、不気味な雰囲気を漂わせている。

そんな空き地は、小中学生にとっては絶好の肝試しスポットとなっていた。これは、私が小学生の頃に実際に体験した出来事である。

空き地には、動かすことができない重い石板があった。ある日、友人たちと力を合わせて石板を動かしてみると、地下へと続く階段が現れた。私たちは大発見をしたと興奮し、一目散に階段を駆け下りた。もちろん、中は真っ暗で、近くに住む友人が家からライトを取りに戻った。

しばらくして、その友人がライトを持って戻ってきた。ライトを点けて周囲を見渡すと、壁には解読不能の文字が刻まれていた。不気味な梵字のようなものだった。文字を追っていくと、茶室のような小さな扉があった。

勇気を出して、ライトを持った友人が最初に、そして私が最後に扉をくぐった。その瞬間、「ガタン!」と大きな音と共に扉が閉まった。私たちはパニックに陥り、扉を開けようと試みたが、どうしても動かなかった。

泣きそうになりながら、ライトを持った友人が先を進む。仕方なく私たちも後を追った。進むにつれ、風が吹き抜けるような音が聞こえ、だんだんと大きくなっていった。「ちょっと待て」と言い、他の友人たちを止めたが、ライトを持った友人は止まらずに進んでいった。

ライトを奪い、その友人の顔に向けたとき、彼は既に意識を失っていた。それでもなぜか前に進み続けていた。怖くなった私たちは、元来た道を戻り始めた。不思議なことに、扉は開いており、私たちは無事に外に出られた。

その日の内に行われた友人の捜索では、私たちが案内した地下に続く階段は見つかったものの、小さな扉はどこにも存在しなかった。それから十数年が経つが、その友人は未だに戻っていない。

関連記事

満月

ファンの悲哀

昔、私はある役者の熱狂的なファンでした。彼が出演するすべての作品を見るのはもちろん、関連する雑誌も買い集めていました。しかし、彼はある日、病気のために休養を余儀なくされ、そのまま亡く…

消えた駅

消えた駅と、もうひとつの世界

よく「時空を超えた」とか、「少し違う世界を垣間見た」なんて体験談を目にしますが、実は私にも似たような経験があります。 というより、今なお、その“続き”の中にいるのかもしれません…

雪に覆われた山(フリー写真)

雪を踏む足音

初雪の山は登ってはいけない。 そういう話を仲間内でよく聞いていたが、単に滑りやすくなるからだろうと軽く捉えていた知り合いは、命の危険に晒された。 彼は登山歴3年くらいの経験…

廃墟

廃屋の歯の謎

高校生の頃の話です。実家で犬を飼っていました。弟が拾ってきた雑種犬です。 その犬を2年ほど飼っていると、家族の一員のように感じるようになり、私も時々散歩に連れていました。 …

女性のシルエット(フリー素材)

この女になろうと思った

友達が経験した話です。 高校の卒業式に、友人Aは同級生で親友だった男Bに告白された(Aも男)。 Aはショックで混乱しつつも、Bを傷付けないよう丁寧にお断りしたそうだが、Bか…

逆光を浴びた女性(フリー素材)

真っ白な女性

幼稚園ぐらいの頃、両親が出掛けて家に一人になった日があった。 昼寝をしていた俺は親が出掛けていたのを知らず、起きた時に誰も居ないものだから、怖くて泣きながら母を呼んでいた。 …

人形(フリー写真)

アンティークドールの夢

中学校に入学した時、入学祝いで祖母からアンティークドールを貰った。 古いドールだったけど、しっかり手入れされていて、汚いという印象は受けなかった。 それどころか、銀色の髪…

顔半分の笑顔

僕がまだ子供だったとき、ある晩早くに眠りに就いたことがあった。 リビングルームにいる家族の声を聞きながら、僕はベッドの中から廊下の灯りをボンヤリ見つめていたんだ。 すると突…

夜の駅

静寂の駅にて

昔、北陸のとある地域に出張で訪れたときのことです。私はあらかじめビジネスホテルを予約しておき、そのホテルを拠点にお得意様を順に訪問して回る計画を立てていました。 その日の最後の…

タクシー(フリー写真)

契約書の拇印

俺の親父の話を書きます。 親父はタクシーの運転手をしています。 夜中2時を過ぎた頃だったそうです。40代くらいの一人の男性が病院から乗って来ました。 行き先は違う近…