無限ループするトンネルと祭り

infinite_loop_wallpaper_by_j114411-d6aec0k

休日の夕方に友人連れ3人で、温泉宿に向かう山道を車で走っていた。

車の持主が運転、もう一人は後部座席、俺が地図を見ていた。

地図上では一本道で、トンネルを3つ通らないといけなくて、2つ目まで何の疑問もなく通り過ぎた。

そして「あとトンネル一つ」と俺が言ったら、トンネルの手前に集落が左手に見え、広場で祭が行われてるように見えた。

今思えば、窓も閉め切ってたのに太鼓や人の声が異様な程大きく聞こえた気がするが、温泉宿はもう近いしと思い、祭に寄ってみることにした。

集落に向かう道は細く、田んぼの中を通って、すぐさま祭が行われてた広場に着いた。

すると、さっきまで祭囃子が聞こえていたのに人っ子一人見当たらず、音もいつの間にか消えていた。

そして、まるで長い間放置されたかのような祭のセットだけが佇んでいた。

その時点でかなり寒気がして、足早に立ち去ることにした。

車の中では「あれなんだったんだろ、ちょっと怖いよな」って話をしながら車は本来のルートに戻り、『開○○トンネル』という3つ目のトンネルを通り抜けた。

この時の風景はセピア色で、今でも頭に焼き付いている。

運転手が酷く怯えた声で、「ここ、さっき通ったよな?」と言った。

俺にも後部座席の友達にも、確かに見覚えがあった。

それでも車を進めて行くと、さっき通った筈の集落の祭が見えてきた。祭囃子も聞こえてきた。

俺たちは口々に、「道を間違えたんだろう」とか「地図が間違ってる」とか言い合いになった。

だが結局、地図の通りだと大きい道は一本道だし、進むしかないから車を進めて行った。

再びトンネルを抜けたが、また同じ風景だった。

流石に尋常じゃないから、俺たちはほぼ無言になり、一旦車を停め外に出た。

そして、トンネルの反対側からトンネルの名前を確かめた。

『開○○トンネル』となっていた。

俺たちはどうすることもできないから、一旦戻ることに決めた。

トンネルを戻ると、何故か右側にある筈の集落が無く、祭も無かった。

そして正面からトンネルの名前を確かめると、『開○○トンネル』となっていた。

俺たちはやはり無言で再び車に乗り込み、そのトンネルを通った。

すると、さっきまでとは違う開けた風景が目の前に広がり、俺たちは安堵し温泉宿へ向かった。

その後、俺たちは不幸に見舞われたなどの出来事はないが、俺はそれ以降その2人とは疎遠になってしまった。

関連記事

妖狐哀歌(宮大工10)

オオカミ様が代わられてから数年が経った。 俺も仕事を覚え数多くの現場をこなし、自分でも辛うじて一人前の仲間入りを果たす事が出来たと実感するようになった。 また、兄弟子たちも…

金属加工業(フリー写真)

円錐状の光沢金属

私は金属加工業を営んでいるのですが、先日不可解な事がありました。 数ヶ月前より、左手薬指の指先を使って何かを掴むと『ズキン!』と痛みが走るようになっていました。 加工クズ…

消えた駅

消えた駅と、もうひとつの世界

よく「時空を超えた」とか、「少し違う世界を垣間見た」なんて体験談を目にしますが、実は私にも似たような経験があります。 というより、今なお、その“続き”の中にいるのかもしれません…

男の戦い(宮大工12)

十年程前、親方の親友でやはり宮大工の棟梁であるKさんが病気で倒れてしまった時の事。 親方とおかみさんは急遽お見舞いに行き、俺は親方の代理で現場を取り仕切った。 三日程して親…

占い師

昔、姉夫婦と私と彼氏の4人で食事した帰りに『この悪魔!!!』って女性の叫び声が聞こえた。 声のする方向を見ると、路上で占いしてる女性が私に向かって指を差して『悪魔!!悪魔ああああ…

キジムナー

あまり怖くないが不思議な話をひとつ。 30年くらい前、小学校に行くかいかないかの頃。 父の実家が鹿児島最南端の某島で、爺さんが死んだというので葬式に。 飛行機で沖縄経…

雪(フリー写真)

片道の足跡

北海道は札幌に有名な心霊スポットの滝がある。 夏場などは、夜中なのに必ずと言って良いほど駐車場に車が数台停めてあって、若い声がきゃーきゃー言っているような有名な場所。 ※ 当…

じいちゃん

黒い襖の奥 ― 家の天井裏にいた“それ”

蝉の声と、じいちゃんのまなざし これは、俺が十年以上も前に体験した実話だ。 当時、俺は田舎にある実家で暮らしていた。 実家は古い日本家屋で、周囲は田んぼに囲まれてい…

眼鏡

眼鏡の思い出

祖父が生前、私たち家族には常に厳しい人でありながら、時折見せる優しさとともに存在感を放っていました。 彼が亡くなった後、家族として彼を失った悲しみが心の隅に深く残っていました。…

髪寄りの法

祖父が子供の頃に体験した話。 祖父は子供の頃、T県の山深い村落で暮らしていた。村の住人の殆どが林業を営んでおり、山は彼らの親と同じであった。 そんな村にも地主が存在しており…