路地裏の子供

公開日: 不思議な体験 | 怖い話

Three_Butterfly-Glue,_Chalk_by_Chip

僕は会社で経理を担当しています。この時期は一年のうちでも最も忙しい時期で、毎日終電になってしまいます。

最寄の駅は山手線の五反田なのですが、ここはみなさんご存知のこととは思いますが、飲み屋街や歓楽街もあり、深夜まで賑わっています。

終電で帰っても駅の周りは賑やかなのですが、一本道を脇にそれると以外に寂れたところもあります。

僕はいつも近道なので、裏通りのようなところを通って帰りますが、不景気のせいか潰れてしまった店も多く、本当に暗くてごみごみしています。

1週間程前、僕は携帯で電話をしながら歩いていたので、いつも通る道と少し違う道を通っていました。ふと見るとその裏路地で女の子が2人遊んでいます。

こんな時間に?(なにしろ終電で帰るような時間ですから)とも思ったのですが、大きな赤いちょうちんの前で遊んでいたので、きっとその家の子だと思います。

その通りはより一層寂れていて、もうその店しか開いていないので間違いないと思います。一人は白いタートルネックに赤のつりスカートを着て、縄跳びをしていました。

もう一人はしゃがみこんで道路に何かチョークのようなもので落書きしています。

寒い日だったので、子供は元気だなあぐらいに思って家路を急ぎました。次の日もやはり帰りが遅くなったのですが、その道は通りませんでした。

そしてその次の日、やはり終電で帰ったのですが、いつの間にかその通りを歩いていました。

見ると先日と同じ場所で、やはり女の子が2人遊んでいます。

なんだか可哀想に感じて、少し先に行くとコンビニとかもあるので何か暖かいものでも…と思ったのですが、怖がられるだろうし、僕も変な誤解を受けるのもいやなのでやはり家路を急ぐことにしました。

次の日、やはり終電で帰った僕は、今度は意識してその場所へ向かいました。どうせ通り道です。

やはり少女たちはいました。

今日は縄跳びではなく、ボールをついて遊んでいます。でもそのボールはドッジボールのようなものでなく、本当に毬のようなものをついているのです。

今どき珍しいなと思いました。色は白っぽいのですが、つくとゆっくり返ってくるのでドッジボールではないと思います。しかも少し小ぶりでした。

もう一人の子は相変わらず落書きをしています。二人が今日も元気に遊んでいたので、なんとなくほっとして僕は家に帰りました。

でもね、何か引っかかってたんです。妙な違和感というか。

家に帰って寝る直前に、ふと思ったのです。どうしてあの子達はいつも同じ服なのだろう。そして僕は何より、少女たちの顔も、声も知らないのです。

毬つきしていた子は向こうを向いていたし、もう一人は下を向いて、一心不乱に落書きしているからです。そして、この2人の間には会話がなかったからです。

年は判りませんが、あのくらいの子供なら、気が散ったり騒いだりしそうなものですが、いつ見ても黙々と自分のしていることに夢中になっているのです。

今の時代、縄跳びも毬つきも、そんなに楽しい遊びのように思えないのですが。そしてもうひとつ、あの赤提灯の店からは客の声なども聞こえず、本当にひっそりとしているのです。

僕はいきなり気味が悪くなりました。でも、あれは確かに幽霊ではなく人間です。

次の日の朝、僕はその道に言ってみました。

大きなちょうちんが見えてきました。近付いてみると、見事に古くなって字も読めないような代物で、中に電球のように光を灯すものは入っていませんでした。

というより吊るしているだけで、電気を通すコードもなく所々破けてすらいるのです。

ふと地面を見ました。落書きの痕跡は殆ど消えていました。そんな人も通る道でもないのに、そんなに簡単に消えるものなのでしょうか。

うっすら残っていた絵を見ました。ぐしゃぐしゃになっているのでなんだかよくわかりません。僕は角度を変えて、少女の方から見ました。

よく見るとそのぐしゃぐしゃの部分はどうやら髪のようで、よく見ると男の人のようでした。

幼稚園なんかで後ろに貼ってありますよね、お父さんの絵。あんな感じです。メガネのようなものもかけています。

でもそのお父さんの絵には、大きな牙のようなものが描かれていました。いえ、口の中に、ぎざぎざの歯が重なり合うように描かれているのです。ぞっとしました。

いきなりその日陰の裏路地にいること自体気味が悪くなった僕は、急いで会社に行きました。それからその道を通れないのです。

僕は怖くなってしまったのです。確かめるのが怖くてわざわざ遠回りをする程でした。

でもまた2、3日経って、何かの間違いかと思うようになりました。今日もきっと終電です。

書いているうちに落ち着いて冷静になるかと思ったら、余計に気味が悪くなってしまいました。

今日はもう一度行ってみようと思います。本当にあの店は営業しているのか。あんな提灯で営業できるはずないです。

店の中も暗く薄汚れていて、とても商売ができる状態には見えませんでした。

もし営業していたら入ってやろうかと思います(一人は怖いので、友人を連れて行こうかと思いますが、終電まで仕事する僕を待ってくれるかどうかが問題です)。

今日がだめでも2月に入ればずっと楽になるし、明後日には行ってこようと思います。

読みづらい上にあまり面白くなくてすみません。

それでは。

関連記事

呪われた路線

都心と多摩地区を結び、JRのドル箱といわれている中央線。 疾走してくる電車への飛び込み自殺の多発路線としても知られている。 例えば、1995年4月から11月までの8ヶ月間に…

旧家(フリー写真)

旧家の古井戸

俺が携わったのは、築100年以上で何世代にも渡って改修工事をして来た家の改築だった。 古く増改築を繰り返しているので、図面も残っていないし、形は不自然。 まずは図面を起こす…

プラットフォーム

プラットフォームの向こう

小学校低学年の時だから、かなり昔の事になります。 私はその日、母に手を引かれ、遠縁の親戚を訪ねるため駅に来ていました。 まだ見慣れない色とりどりの電車に、私は目を奪われてい…

和室

死守り

俺のじじいは柔道五段、がっしりした体格で、土と汗の臭いのするでかい背中。日に焼けた顔。 俺がろくでもないことをする度にぶっ飛ばされた、荒れた手。 素直じゃなくて憎まれ口ばか…

坂道

時間が止まる坂

この話は私が小学2年生の時のことです。 クラスで仲の良かった友人が、興奮気味に「すごい場所があるんだよ!今日行こうぜ!」と誘ってきた。 その友人は普段から「宇宙人を見た」…

狂った家族

今からお話しするのは自分の実体験で、何と言うか…まだ終わっていないというか…取り敢えずお話しします。 自分は23歳の男で、実家暮らしの介護士です。家族は父(52)、母(44)、弟…

目の前で交通事故を目撃した

某ファミレスの駐車場で、交通事故を目の前で目撃したある女性の話だ。 直線道路で対向車が急に反対車線に飛び出して来ての正面衝突事故だった。 飛び出した方は軽自動車で、相手はト…

マンション(フリー写真)

幸運の家

今から14年前に家を建て替えようという話になり、一時的に引っ越すことになりました。 その時に借りた家で体験したお話です。 場所は愛知県の岡崎市で、2年程前に近くを寄った時に…

不敬な釣り人の顛末(宮大工11)

とある休日、久しぶりにオオカミ様の社へと参りに出かけた。 途中、酒を買い求めて車を走らせる。 渓流釣りの解禁直後とあって、道には地元・県外ナンバーの四駆が沢山停まっている。…

公衆電話

禁忌の電話番号

皆さんは"かけてはいけない電話番号"というものをご存知でしょうか。この話では具体的な番号は掲載しませんが、興味がある方はインターネットで検索してみると良いでしょう。特に注目すべきは、…