手形
友達の先輩Aとその彼女B、それから先輩の友達Cとその彼女Dは、流れ星を見に行こうということで、とある山へ車を走らせていました。
山へ向こうの最後のガソリンスタンドで給油を済まし、いざ山へ向おうと出発しました。
ガソリンスタンドを出て程なく走ると、車の通りの少ない林道のようになり、もちろん街灯もないので周りは薄気味の悪い闇に包まれて行きました。
そんな中、それまで快調に走っていた車のスピードが遅くなってきて、ついには前に全然進まなくなりました。
エンジンはかかっています。でも、前に進まないのです。アクセルを踏み込むとエンジン音は大きく鳴り響きます。
Aは『なんで進まないんだ?』と不審に思い、とりあえずバックしてみました。すると、車はまるで何も異常がないようにバックします。
Aは不思議に思いながらももう一度前に進もうとしました。
しかし、やはり前に進まないのです。AとCは不思議に思って「故障でもしたのか?」と顔を見合わせました。
そこで2人は車を降り、様子を見る為に車の前に回り込みました。
そこで2人が見たものは…。
なんと、多数の手形でした。手形はヘッドライトに大人の大きさや子供の大きさまで多数ではっきりと張り付いていました。
それを見たAとCは、あまりの恐怖に慌てて車に飛び乗り、何が起きたのか訊くBとDには一切何も答えず、バックで今来た道を必死に戻りました。
しばらく走り、最後に給油したガソリンスタンドまで戻ってくると、そこで恐る恐る車を降りてヘッドライトを確認しました。
すると、さっきの手形は確かに見間違えではなくそこにびっしりと張り付いていました。
しかも、手形はヘッドライトにとどまらずボンネット全域に渡りびっしりと張り付いていました。
ガソリンスタンドの店員さんにそのことを話すと、店員さんもこの辺りではそんな幽霊話など聞いた事がないと言います。
とりあえず気味が悪いので、その日はおとなしく家に帰ったそうです。
そして次の日テレビでは日航機墜落のニュースが流れていました。
そうです、4人はまさに日航機の墜落現場に向っていたのです。
そしてあの手形は、きっと事故で亡くなられた方々が無残な姿を見られたく無くて車を押し止めたのです…。