鳴り続ける公衆電話

公開日: ほんのり怖い話 | 不思議な体験

公衆電話(フリー写真)

小学生の時、先生が話してくれた不思議な体験。

先生は大学時代、陸上の長距離選手だった。

東北から上京し下宿生活を送っていたのだが、大学のグラウンドと下宿が離れていたため、町中で自分なりのトレーニングコースを決めて走っていたそうだ。

ある日、いつものコースを走っていると、通り掛かった公園の側の公衆電話が鳴っている。

(公衆電話にも電話番号はあるそうだが、番号は公表されていないし、田舎から出て来た先生は公衆電話が鳴っているのを見たのは初めてで、かなりぎょっとしたそうだ)

『この近くの人宛の連絡にでも使われてるのか?』と思い、足を止めて鳴っている電話を眺めていたが、誰かが近付いて来る様子も無い。

暫く鳴らして相手が出なければ切るのが普通だと思うが、誰も出ないのに電話は鳴り続けている。

先生は少し気味悪くなったと同時に、誰が掛けているのか、どうして公衆電話の番号を知っているのかを疑問に思えて来た。

そしてこんなに長く鳴らしっ放しにしているということは、何か大事な用件があって、そしてもしかしたら番号を間違ってしまって困っているのではないか……。

色々な好奇心が持ち上がって来た。

そして迷った末、好奇心に負け、取り敢えず受話器を取って

「もしもし?」

と言ってみた。

「はい。どちら様でしょうか?」

中年を少し越えたくらいの女性が不審そうな声で応えた。

『掛けて来ておいて、どちら様もないもんだ……』と思い、そちらこそ、どちらにお掛けですかと言い返そうとしたところで、

「あんた!T男なの?」

という女性のびっくりした声が聞こえた。

T男は先生の名前。驚いている電話の相手は、自分の母親だった。

先生はもう訳が解らず、しどろもどろ。

相手(先生のお母さん)は口早に、

「とにかくすぐ実家に戻って来なさい。ついさっき、お父さんが倒れた。

医者の話では命に別状は無いそうだけれど、あんたに会いたがっているから」

という内容のことをまくし立て、

「じゃ、すぐ来なさいよ!」

と念を押すと電話を切ってしまった。

先生は慌てて下宿に戻り、その日の内に急な里帰りをすることになった先生だが、やはりもやもやしていたので、お父さんのお見舞いの後でお母さんに聞いてみた。

「母さん、あの電話だけどさ……」

「ああ!びっくりしたわよ。お父さん倒れたのが急だったから、もうバタバタしちゃって。

連絡しようにもあんたのとこ電話ないしさ、どうしようかと思ってたの。

しかし、よくまあ凄いタイミングで掛けてきたものね~。

付き添いで病院に行って、帰って来たらちょうど鳴ってるじゃない。こういうのが虫の知らせって奴かしらね~」

しきりに感心して喋りまくるお母さんを前に、鳴り続けていた公衆電話に興味半分で出ただけ……とは言い出せなくなってしまった。

関連記事

担任が連れてきた女の子

小4の家庭訪問の時、担任が何故か同年代(クラスメイトではない)の女の子を連れてきた。 女の子は母親が居間の方で茶菓子を出して、終わるまで待たせたとは聞いてる。 俺と母親が「…

竹下通りの裏路地

今から5年前、当時付き合っていた彼女と竹下通りへ買い物に出掛けました。 祭日だったと記憶しています。どこを見ても若者だらけで、快晴の空の下、人混みを避けながら買い物を楽しんでいま…

車のテールランプ(フリー写真)

父親の謎の行動

俺と弟は心霊スポットが好きで、夜中に曰く付きの廃墟などに侵入していた悪ガキだった。 残念ながら二人とも霊感はないから、殆ど廃墟探険なのだけど、何もない田舎ではそれだけでも楽しかっ…

山では不思議なことが起きる

この話を聞いたのはもう30年も前の話。 私自身が体験した話ではなく、当時の私の友人から聞いた話。 その友人は基本リアリストの合理主義者で、普段はTVの心霊番組や心霊本などは…

玄関

マンデラ効果

これは私が中学生の頃、夏休みを目前に控えた、蒸し暑いある朝の出来事です。 朝食を終え、のんびりと準備を整えて玄関に向かいました。 スニーカーのつま先を土間にとんとんと叩き…

和室

死守り

俺のじじいは柔道五段、がっしりした体格で、土と汗の臭いのするでかい背中。日に焼けた顔。 俺がろくでもないことをする度にぶっ飛ばされた、荒れた手。 素直じゃなくて憎まれ口ばか…

次元の歪み

先に断っておきます。 この話には「幽霊」も出てこなければいわゆる「恐い人」も出てきません。 あの出来事が何だったのか、私には今も分かりません。 もし今から私が話す話を…

玄関

霊感チェック

霊感の有無を自覚していない人は意外に多いかもしれません。あなたも、もしかすると霊感があるのかもしれませんね。今回は、自分自身の霊感をチェックする簡単な方法を紹介します。 まず、…

団地

団地の謎のおばさん

母がまだ幼かった頃、一家で住んでいた団地での不可解な出来事です。 ある日、母と母の姉(私の伯母)が外で遊ぶために家の階段を降りていました。一階の団地の入口に、見知らぬおばさんが…

東京ビッグサイト

異次元のコスプレイベント

12月の中旬に、恐らく『時空のおっさん』に関連する体験をしました。これは創作ではなく、確かに体験した実話です。 私はコスプレイヤーで、その日は友達と4人で地元のコスプレイベント…