なかったこと

公開日: 不思議な体験

馬のぬいぐるみ(フリー写真)

15年以上前のことになります。

当時は虐めに遭っており、ほぼクラス全員からサンドバッグ状態でした。

図工の時間に金槌で頭を殴られそうになったことや、家庭科の時間に針で目を潰されそうになったこともあります。

教師には言ったのですが「泣かないあんたが悪い」と一蹴されました。

そんな訳で、攻撃されたら相手を殺す気で反撃する、というのがデフォルトでした。

バスケの授業の時に、案の定ボール争奪戦に混ざって殴る蹴る……爪でリーダー格の女の子の右目を引っ掻きました。

やり所が悪かったらしく、その子は病院に行くことに。

親に話すように言われたのですが、経過がどうあれ怪我をさせたのが自分なので、怒られるのが恐くて親に言えません。

帰宅するなり、当時うちに来たばかりだった馬のぬいぐるみを抱いて学校であったことを話し、さんざん泣いて眠りました。

次の日、学校に行くと昨日のことが『なかったこと』になっていました。

怪我をした当の本人も何も言いませんし、教師も言ってきません。

ほっとして帰宅し、馬のぬいぐるみを抱いて報告しようとして気付きました。

右目がない。

何度も確認しても、目を留めていた糸の痕跡どころか、目があった痕跡すらないのです。

部屋中探しても目は見つかりません。

朝起きた時は、抱いて寝たはずなのにお尻を向けて頭の上の方に居たので、ぽんと背中を叩いて家を出ました。

『学校へ行っている間に何かあったのでは?』と思い親に確認しても「部屋には入ってない」と言います。

いつ目がなくなったのか判りません。

その後、同じサイズの目を買って来たので、つけてあげようとしたのですが…。

当の馬(?)が嫌がっているようなので隻眼のままです。

今だに部屋に居ますし、年甲斐もなく抱いて寝ています。

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