異なる世界から

ブランコ

これは私が小学四年生の頃の話です。当時、私は地名が○○団地という、一戸建てが集まるような地域に住んでいました。その地域は既に高齢化が進んでおり、同級生はほとんどおらず、私は自然と兄とその友達と遊ぶことが多かったです。

兄の友達には田中と林という二人がおり、私たち四人でよく遊んでいました。そんなある春、慶太という同学年の転校生が来ました。慶太は最初こそ私たちを拒むような態度でしたが、時間が経つにつれて徐々に打ち解けていきました。

慶太が来てからの最初の夏、私たちは秘密基地を作ることにしました。それは単なる藪の中に空間を作り、段ボールを敷いた簡単なものでしたが、私たちにとっては特別な場所でした。完成した後、兄が「これは俺たちだけの秘密基地やから、絶対に誰にも言うてはいかん」と宣言しました。

その日、秘密を共有することで基地の存在を守る提案がなされ、慶太は私たちに衝撃的な秘密を明かしました。「俺は鏡の向こうから来たんや」と慶太は語り始めました。彼は春休みのある日、洗面所の鏡に息を吹きかけ「いきたい」と書いたところ、鏡の中の部屋が逆向きになっていることに気付いたと言います。部屋の間取りや家族の特徴までが鏡写しになっていることから、自分だけが異なる世界から来たと確信したそうです。

この話を聞いた私たちは驚愕し、慶太に多くの質問を投げかけましたが、彼はその世界に戻る方法が分からないと言いました。その話をした翌日、慶太一家が行方不明になりました。大人たちは夜逃げだと言っていましたが、私たちは「慶太は元の世界に帰れたのだ」と信じています。

数年後、兄と再会した時にこの話をしたのですが、兄は依然として慶太の話を信じていませんでした。しかし私は、慶太が本当に別の世界から来たのだと心から信じています。

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