遺伝した記憶

公開日: 不思議な体験

DNA(フリー画像)

数年前、実家で甥っ子や姪っ子たちとトトロを観ていた。

「そういや、うちも昔はこんなお風呂だったよねぇ」

と俺が言うと、何故か家族全員がきょとんとした顔をする。

「ほら、真ん丸い五右衛門風呂でさ。スノコみたいなのを踏んで入るの。覚えてない?」

「兄ちゃん、どこでそんなお風呂入ったの?」

と不思議そうな妹。両親も似たような表情で俺を眺めている。

「何を言ってるんだ、お前は?」

「いやいやいや!この家、昔はすげーボロ家だったじゃん」

じれったくなった俺は、その辺にあったチラシの裏に間取りをスラスラと描く。

「ここが凄く狭い廊下で、その先が土間になってて、土間のすぐ横が風呂場で…」

「ちょっと待て」

父親が描きかけの空白部分を指差して言った。

「ここには何があった?」

「えーと…井戸があって、ポンプが一日中ウンウン音を立てて動いてた」

俺は井戸の印に円を描き、そこからパイプを家の外に向かって伸ばした。

「確か近所に住んでた鯉飼ってる人の家に売ってたとか…。あれ?」

そこで奇妙な感覚に陥る。

スラスラ描けるほどはっきり覚えていた記憶が、描くそばからほろほろとあやふやになって行く。

「それ、誰に聞いた?」

「誰って、爺ちゃん…。あっ!」

祖父は自分が生まれる前に他界していた。

「確かに昔は五右衛門風呂だったし、井戸の水を近所に送ってた。だけど、お前が生まれた年に建て替えたんだぞ?」

「え? あれ?」

すっかり描き上がった古い平屋の見取り図は、もう記憶から消え知らない家になっていた。

女性のシルエット(フリー素材)

この女になろうと思った

友達が経験した話です。 高校の卒業式に、友人Aは同級生で親友だった男Bに告白された(Aも男)。 Aはショックで混乱しつつも、Bを傷付けないよう丁寧にお断りしたそうだが、Bか…

ちょっとだけ異空間に行った話

ドラッグか病気による幻覚扱いにされそうだけど、多分、ちょっとだけ異空間に行った話。 就活で疲れ果てて横浜地下鉄で眠り込んでしまった。 降りるのは仲町台。夕方だったのに、車掌…

居間のブラウン管テレビ(フリー写真)

神様の訪問

小さい時は親が共働きで、一人で留守番をする事がよくあった。 特に小学校の夏休みなど、日中は大体一人で家に居た。 小学4年生の夏休みの事だ。 トイレに行って居間へ戻った…

海(フリー写真)

海ボウズ

俺の爺ちゃんの話。 爺ちゃんは物心が付く頃には船に乗っていたという、生粋の漁師だった。 長年海で暮らしてきた爺ちゃんは、海の素晴らしさ、それと同じくらいの怖さを、よく寝物語…

さくら池

僕が小学校の頃の話。通学路から少し外れたところに、さくら池というかなり大きな農業用水池があった。 僕たちが住んでいた団地はさくら池の先にあったから、下校途中に通学路を迂回し、その…

エレベーター

ワープする部長

会社でのぬるい話をひとつ。 コンサル部の部長は時々ワープするらしい。 打ち合わせ中に他の場所で目撃されたり、出張中なのにかかってきた電話に出ていたりと、「瞬間移動できる」ま…

ねぇ、どこ?

ある夜、ふと気配を感じて目が覚めた。天井近くに、白くぼんやり光るものが浮かんでいた。目を凝らして見てみると、白い顔をした女の頭だけが浮いていた。 驚いて体を起こそうとするが動かな…

葛籠(つづら)

俺は幼稚園児だった頃、かなりボーッとした子供だったんで、母親は俺をアパートの留守番に置いて、買い物に行ったり小さな仕事を取りに行ったりと出かけていた。 ある日、いつものように一人…

運が良いね

今から話すお話は3年前、僕がまだ高校2年生だった時の話です。 その頃、僕はとあるコンビニでバイトをしていました。そのバイト先には同い年の女の子と、50過ぎくらいの店長、あと4人程…

未来の自分から

今から20年くらい前の出来事。 一人っ子だった俺は、幼稚園から帰ってくるとファミコンをするか家の目の前の公園で一人で遊ぶのが日課だった。 最初はどんな出会いだったかは憶えて…